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ぶどう畑の3分の2はオデーサ州に。ウクライナのワインの産地と地理的表示

ウクライナのぶどう畑は2024年に2万7千ヘクタールで、約3分の2がオデーサ州にあります。19世紀にスイスの人々が開いたシャボの入植地、2026年1月に施行された新しいワインの法律、2023年から登録が始まったワインの地理的表示6件を、統計と法令、知的財産庁の登録一覧で見ます。

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オリュカのひとこと

ぶどう畑は、どの州に集まっているのでしょう。広がりを最初の見出しの統計で見比べられます。

ウクライナのぶどう畑は、黒海に近い南部に集まっています。国家統計局の数字では、2024年にぶどうが植えられていた土地2万7千ヘクタールのうち、約3分の2がオデーサ州にありました。ここでは統計で見る産地の広がり、19世紀にスイスから来た人々が開いたシャボの入植地、そして2023年から登録が始まったワインの「地理的表示」を、2026年9月時点の公的な資料で見ていきます。

この記事は産地と制度の記事で、特定のワインや生産者を紹介するものではありません。

ぶどう畑の3分の2はオデーサ州

国家統計局が公開している作物の面積と収穫の統計(2026年2月更新)から、ぶどうの植え付け面積の多い州を並べると次のとおりです。

地域(千ヘクタール)2015年2021年2024年
オデーサ州27.622.917.8
ミコライウ州6.45.54.5
ザカルパッチャ州3.83.23.1
ヘルソン州5.52.90.1
ウクライナ全体45.436.627.0
出典:ウクライナ国家統計局「作物の面積・収穫量・単収(年次)」(政府オープンデータポータル data.gov.ua、2026年2月20日更新)の「ぶどう」の植え付け面積。すべての経営体、実を付ける前の若い木を含む面積。統計局の注記のとおり、ロシアが一時的に占領している地域と、戦闘が行われている(行われた)地域の一部を含まない。

2024年は、オデーサ州の1万7,800ヘクタールが全体の約66%、ミコライウ州とザカルパッチャ州を合わせると9割を超えます(表の数字から計算)。ほかの州は多くても数百ヘクタールです。全国の面積は2015年から2024年までに4割減り、2025年は2万4千ヘクタールでした。ぶどうの収穫量は、同じ統計で2021年に26万4千トン、2024年に21万4千トン、2025年に21万7千トンです。

ヘルソン州の数字がほとんど消えているのは、統計局が占領地域と戦闘地域の一部を数えていないためでもあります。ドニプロ川の左岸は、2026年9月時点でもロシアに占領されています。

統計に入っていないクリミア

アルバータ大学カナダ・ウクライナ研究所の『Internet Encyclopedia of Ukraine』(IEU)の「Crimea」の項目(2022年更新)は、クリミアを「ウクライナでぶどう栽培の中心の地域」と書き、実を付けるぶどう畑が1959年に9万250ヘクタールあったとしています。クリミアは2014年からロシアに占領されており、国家統計局の数字には入っていません。

オリュカのひとこと

遠い国から来た人々が、なぜこの土地でぶどうを育て始めたのでしょう。由来をこの節で確かめられます。

シャボの入植地

オデーサ州の産地の歴史でよく名前が挙がるのが、ドニステル川の河口の入り江(リマン)に面したシャボの村です。IEUの「Switzerland」の項目(1993年の紙版が初出)によれば、ロシア帝国の政府は1820年から1846年にかけて、スイスのヴォー州のフランス語を話す人々がベッサラビア南部へ移り住むのを後押ししました。ヴヴェイ出身のL.V.タルダン(ルイ=ヴァンサン・タルダン)が率いた人々は、アッケルマン(いまのビルホロド=ドニストロウシキー)の近くにシャボの入植地をつくり、ぶどうの栽培とワインづくり、果樹の栽培を広めました。

同じ項目によれば、1850年代のシャボには300人のスイス人が暮らし、1860〜70年代にはドイツ語圏の州からも人が来ました。入植者はカベルネ、ソーヴィニヨン、リースリング、マスカットの品種を持ち込んでいます。1930年のルーマニアの国勢調査では、ドイツ語系のスイス人300人とフランス語系のスイス人250人が記録されました。1940年にソ連がこの地域を占領すると、入植者の多くはスイスへ戻りました。

シャボの行政(シャボ村のフロマーダ)が公開している沿革も、1820年に植物学者で教育者のタルダンがアッケルマンに来て、ベッサラビアの統治者だったインゾフ将軍の支持を受けてぶどう栽培の入植地を構想した、と書いています。オデーサの町そのものの成り立ちはオデーサと自由港の記事にあります。

  1. オリュカ

    地理的表示のワインは、材料のぶどうを全部その土地で育てる決まりなのでしょうか。

  2. スウネ

    原産地名称と地理的表示とでは、割合の決まりがこの見出しの下で違うようだよ。

  3. タブリ

    猶予の期限は、この見出しの下にまとめてあるよ。

2024年の新しいワインの法律

ぶどうとワインの基本の法律は、2026年に入れ替わりました。2005年6月16日の法律第2662-IV号「ぶどうとぶどう酒について」は、2024年8月22日の法律第3928-IX号「ぶどう、ワインとぶどう栽培の産物について」によって、新しい法律の施行日の2026年1月1日に効力を失っています(一部の規定は公布の翌日から施行)。

新しい法律は、地理的表示のあるワインの原料の割合を決めています。「原産地名称」として登録された名前のワインは、定められた土地でとれたぶどうだけ(100%)で、「地理的表示」のワインは85%以上をその土地のぶどうで造ることになっています。生産者には、2028年1月1日までにこの法律に合わせる猶予があります。

経過規定には、EUとの関係も書かれています。ウクライナとEUの連合協定第208条が定める10年の移行期間が終わると、ウクライナ産の酒の名前に、EUで登録された地理的表示のChampagne(シャンパーニュ)、Madera、Porto、Jerez/Sherry、Marsala、Malaga、Tokajを使えなくなり、「シャンパン化」「トカイの」のような派生語も禁じられます。

ワインの地理的表示

ウクライナの知的財産庁(УКРНОІВІ)の地理的表示の登録一覧には、2023年12月から、ウクライナの産地の名前をもつワインが加わりました。

登録番号登録名読み(目安)登録日品目
3125Шабагシャバフ2023年12月20日ワイン(スティル)、スパークリング
3126Аша-Абагアシャ=アバフ2023年12月20日ワイン、スパークリング
3127Придунайська Бессарабіяドナウ沿いのベッサラビア2023年12月20日ワイン(スティル)、スパークリング
3128Ялпугヤルプフ2023年12月20日ワイン(スティル)
3129Закарпаття/Закарпатське виноザカルパッチャ/ザカルパッチャのワイン2024年5月29日ワイン(スティル)
3132Долина Фрумушикаフルムシカの谷2024年7月24日ワイン(スティル)
出典:УКРНОІВІ「地理的表示の登録一覧」(2026年9月24日確認)。品目は一覧の記載を訳したもの。

УКРНОІВІの2023年5月の記事は、シャボの場所に500年ほど前にできた集落が「アシャ=アバフ」、のちに「シャバフ」と呼ばれた、と名前の由来を説明し、タルダンが19世紀にスイスの生産者の共同体の移住を呼びかけたことにも触れています。ヤルプフは湖の名前です。「ザカルパッチャ/ザカルパッチャのワイン」について同庁は2024年5月、ザカルパッチャ州の南西部、ベレホヴェ・ウージュホロド・フースト・ムカチェヴェの各地区で造られる白・ロゼ・赤のワインが名乗れる、と説明しています。

同じ一覧には、2007年から2013年に以前の制度で登録された「原産地名称」のワインの名前(「Сонячна долина」「Золота балка」「Таврія」「Меганом」「Балаклава」「Магарач」など)も並んでいます。このうち「Магарач」と「Золота балка」は、IEUの「Crimea」の項目にクリミアのワインの研究所と会社の名前として出てきます。知的財産庁は2024年5月の時点で、ウクライナ産の地理的表示25件のうち12件がワインだと数えていました。

全面侵攻のあとの畑

УКРНОІВІが2023年4月に伝えた業界団体「ウクルヴィンプロム」の説明によれば、全面侵攻の直後から多くのぶどう畑や倉庫が占領され、畑は砲撃を受けたり地雷を埋められたりしました。ドニプロ・ブーフ河口の岸では、約585ヘクタールのぶどう畑がクラスター弾の被害を受け、再び栽培に使える見込みは小さいとされています。

食品をウクライナから日本へ輸入するときの手続きは食品の輸入の記事にあります。酒類の輸入については、この記事では扱っていません。

出典と記事の記録出典 11件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Площі, валові збори та урожайність сільськогосподарських культур (річна)SDMX形式の年次データ。指標 AREA_PERENNIAL_PLANTING と VOL_PERENNIAL_CROPS、品目 C_3770「Виноград」、地域別、2015〜2025年。2026年2月20日更新、占領地域等を含まない旨の注記
    発行:ウクライナ国家統計局(data.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  2. Codelist CL_AREA_HARVESTS_CROP_YIELD_BREAKDOWN 4.0.1 / CL_UNITS_OF_MEASUREC_3770=Виноград、1020=гектар、2400=центнер
    発行:ウクライナ国家統計局 SDMXレジストリ 確認日:2026-09-24
  3. Switzerland1993年の紙版第5巻が初出。執筆:Arkadii Zhukovsky。1820〜46年のヴォー州からの移住、タルダン、シャボ、1850年代300人、品種、1930年の国勢調査、1940年
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-24
  4. Crimea2022年更新。ぶどう栽培の中心、1959年の9万250ヘクタール、Maharach と Zolota Balka
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-24
  5. Історична довідка1820年のタルダンの到着とインゾフ将軍の支持
    発行:シャボ村フロマーダ(Шабівська сільська рада) 確認日:2026-09-24
  6. Закон України «Про виноград та виноградне вино»2005年6月16日 第2662-IV号。第3928-IX号により失効
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  7. Закон України «Про виноград, вино та продукти виноградарства»2024年8月22日 第3928-IX号。第12条第3・4項の原料の割合、施行日、経過規定第2・9・10項
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  8. Реєстр географічних зазначень3125〜3129、3132 と旧制度の登録
    発行:УКРНОІВІ(ウクライナ国家知的財産・イノベーション庁) 確認日:2026-09-24
  9. Які українські вина отримали статус географічних зазначень2023年5月25日。アシャ=アバフ/シャバフの名、タルダン、ヤルプフ湖
    発行:УКРНОІВІ 確認日:2026-09-24
  10. Закарпатське вино отримало географічне зазначення2024年5月30日。対象の地区、25件中12件がワイン
    発行:УКРНОІВІ 確認日:2026-09-24
  11. Українське виноробство та захист прав ІВ під час війни2023年4月13日。占領・砲撃・地雷、約585ヘクタール
    発行:УКРНОІВІ 確認日:2026-09-24

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