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ビジネス・復興/解説

使用済み核燃料をロシアへ送らなくなった、立入禁止区域の貯蔵施設

ウクライナの三つの原発の使用済み燃料は、2021年までロシアへ運ばれていました。いまはチョルノービリの立入禁止区域にある集中貯蔵施設が受け入れ、2026年5月に運転の許可が出ました。2012年の法律、占拠をはさんだ建設の経過、米ホルテック社の容器、チョルノービリ原発のISF-2との違いを整理します。

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オリュカのひとこと

使用済みの燃料を運ぶ先が変わったようです。理由を最初の見出しから確かめられます。

2026年5月28日、チョルノービリ原発のまわりの立入禁止区域にある貯蔵施設で、ウクライナの原子力の規制当局が、国営の原子力発電会社エネルゴアトムに「運転」の許可を手渡しました。施設の名前は「使用済み核燃料の集中貯蔵施設」(Централізоване сховище відпрацьованого ядерного палива、略称ЦСВЯП)。原発で使い終わった燃料を、国内で長く保管するための施設です。

エネルゴアトムはこの日の発表で、施設の働きによって、以前は燃料を国外へ運び出すために使っていた年に約2億ドルを節約できていると述べました。国家原子力規制検査局(ДІЯРУ)の長は、報道によれば、この施設を「この分野でのロシアとの協力をやめたあとの、実際的な解決」と呼んでいます。

使用済み燃料をロシアへ送っていたころ

インターファクス・ウクライナ通信(2023年12月15日)によれば、南ウクライナ、フメリニツキー、リウネの三つの原子力発電所の使用済み燃料は、2021年までロシアへ運ばれて保管・再処理され、その費用はウクライナにとって毎年約2億ドルでした。2021〜22年にはロシアへは運ばれていません。年に約2億ドルという額は、エネルゴアトムと、貯蔵の設備を納める米ホルテック社がくり返し挙げている数字です。

残るもう一つの発電所、ザポリッジャ原発は、敷地の中に自前の乾式の貯蔵施設を持っています。国際原子力機関(IAEA)の2022年9月の報告も、ザポリッジャの「乾式貯蔵施設」を査察の対象として挙げています。集中貯蔵施設が受け入れるのは三つの発電所の燃料で、IAEAの同じ報告もそう書いています。ザポリッジャ原発は2022年3月からロシア軍の管理下にあります(ウクライナの原子炉の記事)。

2012年の法律が決めたこと

施設の場所と大きさは、2012年2月9日の法律第4384-VI号(ВВЕР型原子炉の使用済み核燃料の集中貯蔵施設の立地・設計・建設について)が決めています。最高会議のデータベースによれば、この法律は2012年3月7日に効力を持ち、2026年9月時点で改正されていません。

  • 場所:キーウ州の、チョルノービリの事故で汚染された立入禁止区域の中。四つの村(Стара Красниця、Буряківка、Чистогалівка、Стечанка)のあいだの敷地(第1条)
  • 受け入れる燃料:国内の原発のВВЕР-440型とВВЕР-1000型の原子炉の使用済み燃料(第1条)
  • 容量:使用済み燃料集合体16,529体(第1条)
  • 保管の方法:地上での「乾式」の保管。容器型の設備で二重の障壁をつくって閉じ込める(第2条)
  • 保管の期間:設計で根拠を示す施設の運転期間のあいだ(第2条)
  • 地元への還元:建設の見積もりの10%を、スラヴティチ市と周辺の地区の公共施設に使う(第3条)

ВВЕР(ラテン文字ではVVER)は、ソ連で設計された原子炉の型の名前です。運転中の三つの発電所の原子炉は、すべてこの型です(ウクライナの原子炉の記事)。

契約から運転の許可まで

時期できごと主体
2005年ホルテック社と建設の契約World Nuclear News(2023年12月20日)
2012年2月9日法律第4384-VI号最高会議
2017年建設が始まるエネルゴアトム(報道による)
2020年最初の区画の建設を終えるエネルゴアトム(報道による)
2021年施設と鉄道網を結ぶヴィリチャ〜ヤニウ間の線路が完成エネルゴアトム(報道による)
2022年2月24日〜3月31日ロシア軍が立入禁止区域と施設のある土地を一時的に支配エネルゴアトムの2022年1〜9月の財務報告
2022年4月25日規制当局が、運転を始めるための個別の許可を出すエネルゴアトム(報道による)
2023年試験的な運転。三つの発電所から容器13基を搬入規制当局の長(インターファクス)、エネルギー省
2026年5月28日「運転」段階の許可エネルゴアトム
2026年8月26日ホルテック社と、保管・輸送の設備41基の追加の契約ホルテック社(2026年9月8日の発表)
「報道による」は、エネルゴアトムの説明として報じられたもの(open4business、2026年5月)。

施設のある立入禁止区域は、ロシアによる全面侵攻の最初の日から約1か月、ロシア軍の支配下にありました。エネルゴアトムの2022年1〜9月の財務報告は、2月24日から3月31日まで施設のある土地がロシア軍の支配下にあり、4月初めに管理を取り戻したあと、工事と運転の開始に向けた計画を立て直したと書いています。区域の占拠の経過はチョルノービリの保護区の記事にあります。

インターファクスによれば、規制当局の長は2023年12月、施設の試験的な運転は2023年に始まり、三つの発電所から容器13基が運び込まれたと説明しました。試験的な運転の許可は最初の燃料を入れたときから3年間有効で、その間に正式な運転へ移る申請をする仕組みだった、とも述べています。2026年5月の許可が、その正式な運転の段階にあたります。

ホルテック社の容器

ホルテック社の2026年9月8日の発表によれば、燃料は各発電所で二重壁の多目的キャニスター(筒形の密封容器)に入れて乾燥させ、溶接で封をします。これを輸送用の容器HI-STAR 190に入れて貯蔵施設へ運び、縦置きで空気の流れで冷やす貯蔵用の容器HI-STORM 190に収めます。施設の設計上の寿命は100年で、同社は、設備そのものは100年を超えて使えるように設計していると書いています。

エネルギー省の2024年1月の発表によれば、容器は当時米国で製造されており、エネルゴアトムとホルテック社は、容器の工場をウクライナにつくる計画で合意していました。同じ発表は、2023年に13基の容器を置いたことで、使用済み燃料の輸送と保管にかかる費用を1億5千万ドル以上節約し、1年の運転で建設費をすべてまかなえた、というエネルゴアトム側の説明を載せています。

  1. オリュカ

    似た名前のもう一つの施設もあるようです。何が違うのかな。

  2. スウネ

    保管する燃料の種類は、この見出しの下の表で施設によって違うようだよ。

  3. タブリ

    運転の許可が出た時期も、この見出しの下の表で見比べられるよ。

チョルノービリ原発のISF-2とは別の施設

立入禁止区域には、似た名前のもう一つの乾式の貯蔵施設があります。チョルノービリ原発の敷地にある「使用済み核燃料の中間貯蔵施設(乾式)」、英語の略称でISF-2です。チョルノービリ原発によれば、こちらはこの発電所に溜まっていた使用済み燃料を受け入れ、保管するための施設です。

集中貯蔵施設(ЦСВЯП)チョルノービリ原発のISF-2(СВЯП-2)
運転する組織エネルゴアトム国営企業「チョルノービリ原発」
保管する燃料運転中の3発電所のВВЕР型原子炉の燃料チョルノービリ原発に溜まっていた、РБМК型原子炉の燃料(湿式の貯蔵施設ISF-1から移す)
規模燃料集合体16,529体(法律)約2万1千体。1年に2,500体以上を処理できる設計
保管の形縦置きの換気式の容器(HI-STORM 190)1本に93体を入れる二重壁の容器を、横置きのコンクリートのモジュールに収める
つくった経緯2005年にホルテック社と契約、2017年に着工2001年に着工。欧州復興開発銀行(EBRD)の原子力安全口座の資金。ホルテック社が建設を請け負った
運転の許可運転開始の許可2022年4月、運転の許可2026年5月運転の許可2021年4月26日
ЦСВЯПは法律第4384-VI号・エネルゴアトム・ホルテック社、ISF-2はチョルノービリ原発の公式サイトの説明(ISF-2のページ、2020年1月14日のお知らせ)による。

チョルノービリ原発によれば、ISF-2は2020年12月14日に「実際に燃料を使った試験」の主な段階を終え、そのときまでに186体を移しました。2022年1月までに1,698体が長期の保管に回されています。

オリュカのひとこと

「安全」や「節約」という評価は、誰の言葉なのでしょう。この見出しで話し手を確かめられます。

「安全」「節約」は誰の言葉か

施設の評価として公に出ているのは、主に運転する側と規制する側、設備を納める側の言葉です。

  • 規制当局の長:運転の許可は、施設の技術、設備、安全の仕組み、職員が、原子力と放射線の安全の要求と、IAEAの基準に合っていることを確かめたもの(エネルゴアトムの2026年5月28日の発表)
  • エネルゴアトム:年に約2億ドルの節約。施設は今後100年、原子力発電の安定を支える(同)
  • エネルゴアトム・エネルギー省:2023年の1年で1億5千万ドル以上を節約し、建設費をまかなえた(エネルギー省、2024年1月)
  • ホルテック社:輸送と保管の設備は100年を超える使用に耐えるよう設計している(2026年9月8日)

これらは当事者の説明です。施設の安全性を第三者が評価した公開の報告は、2026年9月時点でこの記事では扱っていません。IAEAは2022年9月の報告で、施設が運転を始めれば三つの発電所の燃料を受け入れる予定だ、と書くにとどめています。

出典と記事の記録出典 12件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Закон України № 4384-VI «Про поводження з відпрацьованим ядерним паливом щодо розміщення, проектування та будівництва централізованого сховища відпрацьованого ядерного палива реакторів типу ВВЕР вітчизняних атомних електростанцій»2012年2月9日。第1〜3条、効力の発生2012年3月7日、2026年9月時点の状態
    発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-24
  2. Енергоатом отримав ліцензію на експлуатацію ядерної установки ЦСВЯП2026年5月28日。運転の許可、規制当局の長の説明、年約2億ドル、100年、それまでの運転開始の許可
    発行:НАЕК «Енергоатом» 確認日:2026-09-24
  3. "Енергоатом" отримав ліцензію на експлуатацію Централізованого сховища відпрацьованого ядерного палива2026年5月28日。規制当局の長の「ロシアとの協力をやめたあとの実際的な解決」
    発行:Інтерфакс-Україна 確認日:2026-09-24
  4. ЦСВЯП отримало постійну ліцензію на експлуатацію2026年5月。エネルゴアトムの説明として、2017年の着工、2020年の最初の区画、2021年の鉄道、2022年4月25日の許可、ホルテック社の技術
    発行:open4business 確認日:2026-09-24
  5. На ЦСВЯП уже зберігаються 13 контейнерів із паливом із трьох АЕС – голова ДІЯРУ2023年12月15日。試験的な運転、13基、3年間の許可、2021年までのロシアへの搬出と年約2億ドル、2021〜22年の扱い
    発行:Інтерфакс-Україна 確認日:2026-09-24
  6. Україна ввела в експлуатацію Централізоване сховище відпрацьованого ядерного палива попри загрози воєнного часу2024年1月18日。2023年の13基、1億5千万ドル、米国での製造と工場の計画
    発行:Міністерство енергетики України 確認日:2026-09-24
  7. Фінансова звітність за період 9 місяців 2022 року2022年2月24日〜3月31日の支配、4月初めの管理の回復
    発行:НАЕК «Енергоатом» 確認日:2026-09-24
  8. Ukraine's centralised fuel storage facility fully operational2023年12月20日。2005年の契約、2017年の着工、容量の内訳、年約2億ドル
    発行:World Nuclear News 確認日:2026-09-24
  9. Holtec Nuclear Corporation Awarded Contract to Continue Supply of Additional Spent Fuel Storage Systems for Ukraine VVER Reactors2026年9月8日。41基、2026年8月26日の署名、HI-STAR 190・HI-STORM 190・二重壁キャニスター、100年
    発行:Holtec Nuclear Corporation(GlobeNewswire) 確認日:2026-09-24
  10. Nuclear Safety, Security and Safeguards in Ukraine, GOV/2022/522022年9月9日。第23〜24段落のISF-1・ISF-2と集中貯蔵施設、第45段落のザポリッジャの乾式貯蔵施設
    発行:International Atomic Energy Agency 確認日:2026-09-24
  11. Проміжне сховище відпрацьованого ядерного палива «сухого» типу (СВЯП-2)目的、2001年の着工とEBRDの資金、約2万1千体・年2,500体、93体の容器、2020年12月14日と186体、2021年4月26日の許可、2022年1月の1,698体
    発行:ДСП «Чорнобильська АЕС» 確認日:2026-09-24
  12. СВЯП-2 передано Чорнобильській АЕС2020年1月14日。請負のホルテック社から引き渡し
    発行:ДСП «Чорнобильська АЕС» 確認日:2026-09-24

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