ウクライナでは、かかりつけの医師を住所に関係なく選んで「宣言」を出す
ウクライナでは2017年の法律で、救急やプライマリ・ケアなど8種類の医療を国が全額払う「医療保証プログラム」ができました。支払いを担うのは国民健康サービス(НСЗУ)で、患者はかかりつけの医師を住所に関係なく選び、「宣言」を出します。宣言が終わる14の理由を、法律と保健省の命令から紹介します。
オリュカのひとこと
かかりつけ医を選ぶ書類が、なぜ「宣言」と呼ばれるのでしょうか。法律の仕組みから読みましょう。
ウクライナでは、かかりつけの医師を自分で選び、その医師を選ぶ「宣言」(декларація)と呼ばれる書類を医療機関に出します。この宣言をもとに、国の機関が医療機関にお金を払う仕組みです。土台は2017年10月19日の法律第2168-VIII号「国民の医療サービスに対する国家の財政保証について」と、それを受けた保健省の命令です。この記事は、ウクライナ最高会議の法令データベースに載る本文(2026年9月23日時点の版)を2026年9月に読んだ内容です。
国が全額を払う「医療保証プログラム」
法律第4条は「医療保証プログラム」(програма медичних гарантій)を定めています。その範囲で国は、必要な医療サービスと医薬品の代金を国家予算から全額支払うことを保証します。条文が挙げるのは次の8つです。
- 救急医療
- プライマリ・ケア(最初に診る医療)
- 専門医療
- 緩和ケア
- 医療のリハビリテーション
- 16歳未満の子どもの医療
- 妊娠と出産にかかわる医療
- 日常の生活機能の評価(2024年12月19日の法律第4170-IX号で追加)
保証の対象として、条文は、ウクライナ国民、ウクライナの領域に常に住む外国人・無国籍の人、難民と補完的保護を受ける人を挙げています。第5条は原則の一つとして、年齢、性別、財産の状況、登録された住所などにかかわらず、国の保証を等しく与えることを掲げています。
お金を払うのは国民健康サービス(НСЗУ)
法律は、このプログラムを実施する「権限を持つ機関」を置いています。それにあたるのが国民健康サービス(Національна служба здоров’я України、НСЗУ)で、閣僚会議が2017年12月27日の決定第1101号で設けました。
法律によれば、この機関は医療サービスの「発注者」として、医療機関と契約を結びます(第7条・第8条)。契約の相手は、公立の病院に限りません。所有の形を問わない医療機関と、医療の免許を持つ個人事業者も含まれます。支払いの単価(料金表)は国内で統一されます(第10条)。
家庭医を選ぶ「宣言」
法律第9条によれば、患者は、プライマリ・ケアを行う医師を選ぶ宣言を医療機関に出すことで、医師を選ぶ権利を使います。医療機関は、慢性の病気がある、年齢、性別、社会的な地位、財産の状況、登録された住所などを理由に、宣言の受け取りを断ってはならない、とされています。専門医療、緩和ケア、リハビリテーションは、原則としてプライマリ・ケアの医師か担当医の紹介で受けます。
宣言の手続きは、2018年3月19日の保健省命令第503号「プライマリ・ケアを行う医師の選択の手続き」が定めています。主な点は次のとおりです。
- 医師は、患者の住んでいる場所・滞在している場所にかかわらず選べる
- その医師を選んだ患者の数が、別の命令で決められた「適正な診療規模」を超えている場合は、医療機関の同意が要る
- 別の医師に替えるときは、新しい宣言を出す
- 新しい医師を選ばずに宣言をやめることもでき、国民健康サービスに申し出るか、患者用の個人ページで手続きする
オリュカのひとこと
宣言が終わる理由は14あります。一覧で一つずつ確かめましょう。
宣言はどんなときに終わるか
同じ命令は、宣言が効力を失う理由を14項目に分けて挙げています。
| 区分 | 命令が挙げる主な理由 |
|---|---|
| 患者の側 | 別の医師を選ぶ宣言を出した/患者用の個人ページで終了を登録した/国民健康サービスに終了を申し出た/小児科医を選んでいた人が18歳になった/患者が亡くなった |
| 医師・医療機関の側 | 医療機関の廃業や免許の失効/医師の退職や死亡/患者が医師の指示を守らないなどの理由で、医師が診療を続けないと申し出た/医療機関が国との契約を続けないと通知した |
| 登録・監視 | 患者の登録簿の記録が無効にされた/規則に反して出された宣言だと、国民健康サービスが確認した |
この一覧には、患者が国外に出たこと・国外に住んでいることは含まれていません。ただし、国外にいる人の宣言や医療保証プログラムの扱いについて、国民健康サービス自身の説明は確認できていません。国外から手続きをするときは、国民健康サービスや医療機関に直接確かめる必要があります。
日本で医療機関にかかるときの準備は、日本の病院に行く前に、保険の証明と症状のメモを用意するで扱っています。ウクライナの行政アプリについては「Дія」の電子パスポート、国境では使えず国外での法的効力もないを参照してください。
出典・参考資料
- Закон України від 19.10.2017 № 2168-VIII「Про державні фінансові гарантії медичного обслуговування населення」(第4条の医療保証プログラムの8項目と対象者、第5条の原則、第7・8条の権限を持つ機関と契約、第9条の宣言と紹介、第10条の統一料金。2026年1月1日版)
発行:Верховна Рада України(ウクライナ最高会議)法令データベース 確認日:2026-09-24 - Наказ МОЗ від 19.03.2018 № 503「Про затвердження Порядку вибору лікаря, який надає первинну медичну допомогу」(住所に関係なく選べること、適正な診療規模、医師の変更と宣言の取りやめ、効力が終わる14の理由)
発行:Верховна Рада України 法令データベース 確認日:2026-09-24 - Постанова КМУ від 27.12.2017 № 1101「Про утворення Національної служби здоров’я України」(国民健康サービスの設置)
発行:Верховна Рада України 法令データベース 確認日:2026-09-24
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