ウクライナの12年制の学校、最後の3年間は2027年に始まる
ウクライナの学校は、初等4年・基礎中等5年・プロフィール中等3年の12年制で、12年間すべてが義務教育です。入学は原則6歳、遅くとも7歳。ただし最後の3年制は2027年9月に始まる予定で、いま卒業する学年は11年で学校を終えます。大学入試も、法律上のZNOにかわって2022年からNMTが続いています。
ウクライナの子どもは、何歳で学校に入り、何年通い、どんな試験を受けて大学へ進むのか。答えは法律にはっきり書かれています。ただしその法律は、いま移行の途中にあります。2017年の教育法が定めた「12年制」は、最後の段階がまだ始まっていません。
学校制度の骨格を決めているのは二つの法律です。教育法(2017年9月5日、第2145-VIII号)と、「完全普通中等教育法」(2020年1月16日、第463-IX号)。大学入試は、ウクライナ教育質評価センター(УЦОЯО)が実施しています。以下の条文はウクライナ最高会議の法令データベース(zakon.rada.gov.ua)で2026年9月23日に閲覧した現行テキストによるもので、教育法の最終改正は2025年12月18日の法律第4742-IX号です。
4年、5年、3年の三段階
教育法は、日本の小中高にあたる学校教育をまとめて「完全普通中等教育(повна загальна середня освіта)」と呼び、第12条で三つの段階に分けています。
| 段階(ウクライナ語) | 年数 | 学年 | 終えたときの証書 |
|---|---|---|---|
| 初等教育(початкова освіта) | 4年 | 1〜4年 | 初等教育修了証 |
| 基礎中等教育(базова середня освіта) | 5年 | 5〜9年 | 基礎中等教育修了証 |
| プロフィール中等教育(профільна середня освіта) | 3年 | 10〜12年 | 完全普通中等教育修了証 |
三つの段階は、別々の学校に置くことも、一つの学校にまとめることもできます(同条第3項)。完全普通中等教育法は、さらに各段階を「サイクル」に分けています。1〜2年は「適応・遊び」、3〜4年は「基本」、5〜6年は「適応」、7〜9年は「教科の基本学習」、10年は「プロフィール適応」、11〜12年は「プロフィール」です(第10条第2項)。
最後の3年間は、進む方向を選ぶ段階です。教育法第12条第7項は、大学などへの進学を前提に特定の科目を深く学ぶ「アカデミック」と、労働市場に向けた「職業」の二つの方向を定めています。どちらを選んでも、ほかの教育段階に進む権利は制限されない、とも書かれています。
何歳で入学するか
入学年齢は、教育法第12条第4項がこう定めています。「初等教育は、原則として6歳から受ける。学年の始まりまでに7歳になっている子どもは、その学年から初等教育を始めなければならない」。
つまり、6歳で入るのが原則で、遅くとも7歳で入ります。学年の始まりは、平時の規定では9月1日の「知識の日」です(完全普通中等教育法第10条第3項)。日本のように4月2日から翌年4月1日生まれで学年を区切る仕組みとは、基準日も考え方も違います。特別な教育的ニーズのある子どもは、別の年齢から始めたり、期間を延ばしたりできます(教育法第12条第5項)。
授業1コマの長さにも上限があり、1年生は35分、2〜4年生は40分、5〜12年生は45分を超えない、とされています(完全普通中等教育法第10条第4項)。
義務教育は「9年」ではない
日本の義務教育は小学校と中学校の9年間です。ウクライナは違います。教育法第12条第2項は「完全普通中等教育はウクライナにおいて義務である」と書いています。義務の範囲は、初等・基礎・プロフィールの三段階すべてです。
そのうえで、公立(国立・自治体立)の学校では、各段階の教育を国と地方の予算で、生涯に一度、無償で受けられることが保障されています。対象はウクライナ国民、ウクライナに合法的に滞在する人、そして滞在の根拠にかかわらずすべての子どもです(完全普通中等教育法第6条第3項)。
学ぶ形も一つではありません。同法第4条第3項は、通学(昼間)のほか、遠隔、ネットワーク、エクスターン、家庭(ホームスクール)、教育的パトロナージュ、夜間、通信の各形態を挙げています。教育の言語は国家語であるウクライナ語で、先住民族・少数民族の言語での教育については別に規定があります(同法第5条)。
12年制への移行は、まだ終わっていない
12年制はいつから始まったのか。教育法の経過規定(第XII章第3項)は、12年制の課程による学習の開始日を段階ごとに定めています。
- 初等教育 2018年9月1日から
- 基礎中等教育 2022年9月1日から
- プロフィール中等教育 2027年9月1日から
2018年9月に1年生になった子どもたちが、最初の12年制の学年です。この学年は2022年9月に5年生になり、2026/27学年に9年生にいます。3年制のプロフィール中等教育は、彼らが10年生になる2027年9月1日から始まる、という順番です。完全普通中等教育法の経過規定も、プロフィール段階の新しい規定を1年目は2027年9月1日、2年目は2028年9月1日、3年目は2029年9月1日から適用するとしています。
それまでの間、プロフィール段階に関する規定は「2年制の上級学校」に適用されます(教育法第XII章第3項5)。2018年より前に入学した生徒は、9年生までの基礎段階のあと、10年生と11年生の2年間で学校を終えます。「ウクライナの学校は12年制」という説明は法律上は正しいのですが、2026年時点で学校を卒業していく学年は、まだ12年制の課程に入っていません。
なお教育法は、条件(対応する教育スタンダードと標準教育プログラムがあること)を満たせば、内閣の決定で2027年より前にプロフィール段階を導入できる、とも定めています(第XII章第3項4)。
12年制という考え方自体は新しいものではありません。カナダ・アルバータ大学のウクライナ研究所(CIUS)が編む『Internet Encyclopedia of Ukraine』の「Education」の項(1984年刊行の事典からの再録)によれば、1917年末、ウクライナ人民共和国の教育省の特別委員会が「12学年制の統一労働学校」のカリキュラム作りに着手しています。ソ連期には、1959年の改革で8年制(義務)と11年制の学校が置かれた、と同じ項目は書いています。
試験と進学:法律上のZNO、実際のNMT
法律上、各段階の終わりには「国家最終評価(ДПА)」があります。国家語と数学は全段階で、基礎段階とプロフィール段階の後には、さらにウクライナ史と外国語も受けることになっています(完全普通中等教育法第17条第5項)。基礎段階とプロフィール段階の国家最終評価は、原則として「外部独立評価(ЗНО、ZNO)」の形で行う、と同法第47条は定めています。ZNOは、学校の外にある国の機関(ウクライナ教育質評価センター)が実施する統一試験です。
同センターの説明では、ZNOの結果は大学入学の選抜点に使われ、学校の国家最終評価の成績にもなります。点数は、合格ラインを超えた受験者に100〜200点の尺度で示され、学校の最終評価として受ける場合は1〜12点の尺度にも換算されます。
しかし2022年以降、実際に行われているのはZNOではありません。同センターは2026年の案内で、ロシアによる全面侵攻のため「5年連続で」、従来のZNOにかえて「国家マルチ科目テスト(НМТ、NMT)」を実施すると説明しています。NMTは戒厳令などのもとで高等教育への平等なアクセスを保障するための入学試験で、コンピューターで受けます。
| 項目 | 2026年のNMT(ウクライナ教育質評価センターの案内) |
|---|---|
| 必須科目 | ウクライナ語、数学、ウクライナ史 |
| 選択科目(1つ) | ウクライナ文学、外国語(英語・ドイツ語・フランス語・スペイン語)、生物、化学、物理、地理 |
| 実施方法 | 4科目を1日で。120分×2回(1回目:ウクライナ語と数学、2回目:ウクライナ史と選択科目) |
| 点数 | 各科目を100〜200点の尺度に換算。記述式の設問はなく、終了直後に点数がわかる |
| 日程 | 本試験2026年5月20日〜6月25日、追加試験7月17〜24日 |
国家最終評価そのものも、2022年以降は免除が続いています。完全普通中等教育法の経過規定は、2021/22、2022/23、2023/24、2024/25、2025/26の各学年に各段階を終えた生徒を、国家最終評価から免除しています(第X章第3項14)。2026年9月23日に閲覧した条文では、2026/27学年はこの列挙に含まれていません。
全面侵攻のもとで止まっている規定
法律の原則と運用の違いは、ほかにもあります。完全普通中等教育法の経過規定(第X章第2-1項)は、2022年2月24日の大統領令で導入された戒厳令のあいだ、学年の日程に関する規定の効力を止めています。平時の規定は、学年は9月1日に始まり、175日以上の授業日を持ち、翌年7月1日までに終わる、というものです(第10条第3項)。戒厳令のあいだは、学年の長さと開始・終了日を内閣が決めます。
国外で暮らす受験生のために、同センターは2026年、国外の32か国54都市にNMTの臨時試験会場を置くと案内しています。本試験を行う国として挙げられた一覧に、日本は含まれていません。また完全普通中等教育法は、ウクライナ国民が国外(侵略国・占領国とされた国を除く)で得た学習の成果を、内閣が定める手続きで認める、という規定を2025年に加えています(第6条第6項)。
日本から見るときの注意
ウクライナの学年は9月に始まり、入学年齢は「原則6歳、遅くとも7歳」です。日本の学年は4月に始まり、誕生日で機械的に決まります。同じ年齢の子どもでも、ウクライナで何年生だったかと、日本で何年生に入るかは一致しないことがあります。日本の学校に編入するときの考え方は、日本の学校に入る前に、家族がまとめておける学習歴と書類で扱っています。
もう一つは、制度が動いている最中だということです。2027年9月にはプロフィール段階の3年制が始まる予定で、戒厳令下の特例は戒厳令が続くあいだの措置です。ここに書いた条文と試験の案内は、2026年9月23日時点のものです。
出典・参考資料
- Закон України «Про освіту» від 05.09.2017 № 2145-VIII(第10条の教育段階、第12条第2〜7項の義務・三段階の年数・入学年齢・二つの方向、第XII章第3項3〜5の12年制の開始日と2027年までの経過措置。最終改正2025年12月18日第4742-IX号の現行テキスト)
発行:Верховна Рада України(ウクライナ最高会議)法令データベース 確認日:2026-09-23 - Закон України «Про повну загальну середню освіту» від 16.01.2020 № 463-IX(第4条の年数と学習形態、第5条の教育言語、第6条第3項・第6項、第10条第2〜4項のサイクル・学年日程・授業時間、第17条の国家最終評価、第18条の証書、第47条の外部独立評価、第X章第1項・第2-1項・第3項14の経過規定と戒厳令下の停止・免除)
発行:Верховна Рада України(ウクライナ最高会議)法令データベース 確認日:2026-09-23 - Основне про НМТ(2026年のNMT:全面侵攻のため5年連続でZNOにかえて実施、必須3科目と選択1科目、120分×2回、100〜200点換算、本試験5月20日〜6月25日・追加7月17〜24日)
発行:Український центр оцінювання якості освіти(ウクライナ教育質評価センター) 確認日:2026-09-23 - Складники НМТ(2026年のNMTの科目構成、記述式の設問がないこと、100〜200点への換算)
発行:Український центр оцінювання якості освіти(ウクライナ教育質評価センター) 確認日:2026-09-23 - НМТ за кордоном(2026年の国外会場:32か国54都市、本試験の実施国一覧)
発行:Український центр оцінювання якості освіти(ウクライナ教育質評価センター) 確認日:2026-09-23 - ЗНО/ДПА: Загальна інформація(ZNOの結果の使い道、100〜200点と1〜12点の尺度)
発行:Український центр оцінювання якості освіти(ウクライナ教育質評価センター) 確認日:2026-09-23 - Education(1917年末の12学年制統一労働学校の計画、1959年改革の8年制・11年制。1984年刊行の Encyclopedia of Ukraine 第1巻からの再録。執筆 Ivan Bakalo ほか)
発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(Canadian Institute of Ukrainian Studies, University of Alberta) 確認日:2026-09-23
記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。
