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人と暮らし/実用ガイド

日本の学校に入る前に、家族がまとめておける学習歴と書類

外国籍の子どもに就学義務はありませんが、日本の公立小中学校には入れます。相談先は市区町村の教育委員会。学年は年齢で決まるのが基本で、日本語の力などに応じて下の学年に入る例外もあります。学習歴、言語、健康や気持ちの面で伝えたいことは、家族が前もって書き出しておけます(2026年9月23日時点の文部科学省資料による)。

日本の公立の小学校・中学校には、外国籍の子どもも入ることができます。手続きの入口は、住んでいる市区町村の教育委員会です。そこで最初に聞かれるのは、子どもがこれまでどこで、何を、どの言葉で学んできたか。家族が前もってまとめておけることは多くあります。

国の考え方は、文部科学省の就学ガイドブック、通知、指針と、学校教育法施行規則に書かれています(いずれも2026年9月23日時点で文部科学省とe-Govに掲載されているもの)。ただしお子さんが何年生に入るか、どの支援を受けられるかは、住んでいる自治体と学校が決めます。国の資料は一般的な流れを示すもので、個別の答えは教育委員会でしか得られません。

就学の義務はないが、入学はできる

文部科学省の「外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針」(2020年7月1日)は、外国人の子どもの保護者には学校教育法第16条などによる就学義務は課されていない、と書いています。そのうえで、市町村の教育委員会に対し、外国人の子どもにも公立の義務教育諸学校への入学が可能であることを案内するよう求めています。

ウクライナから来た子どもについては、文部科学事務次官が2022年4月18日に「ウクライナからの避難民の児童生徒等の教育機会の確保について」という通知を出しています。通知は、就学を希望する場合は各学校で「積極的な受け入れ」をするよう求め、高校などへの編入についても「可能な限り弾力的に取扱い、速やかに受け入れていただく」よう求めています。

相談先は、学校の種類で違う

文部科学省の就学ガイドブックによれば、就学の相談窓口は、小学校・中学校なら市区町村の教育委員会、公立の高校や特別支援学校なら都道府県の教育委員会です。役所に外国人向けの相談窓口を置いている自治体もあります。

小学校・中学校に入るまでの流れは、同じガイドブックで次のように説明されています。

  • 市区町村の住民登録の窓口で、転入の届け出をする
  • 市区町村の教育委員会で、子どもを日本の学校に入れたいと伝え、「外国人児童生徒入学申請書」を出す
  • 教育委員会から「外国人児童生徒入学許可書」を受け取り、指定された学校の名前と場所を確かめる
  • 指定された学校へ行き、これからの学校生活について話し合う。このとき、入学許可書と母国の学校関係の書類(在籍証明書や成績証明書など)を持っていく

書類の名前や順番は自治体によって違うことがあります。例えば横浜市の場合、市立小学校への入学手続きで在留カードや特別永住者証明書など本人確認ができる書類の提示を求めています。大阪市の場合は、対象となる家庭に区役所から送られる「入学のご案内」に添付された「入学申請書」を、期限までに区役所の窓口へ提出する形です(いずれも2026年9月時点の各市ウェブサイトによる。手続きの名称や窓口は自治体で異なるため、この2市の例がそのまま当てはまるとは限りません)。2022年の通知は、手続きのときに在留カードなどを示せない場合の居住地の確認についても「柔軟な対応」を求めています。書類がそろっていなくても、まず教育委員会に相談してください。

学校で聞かれること

就学ガイドブックは、入学のときに学校が保護者と話し合う項目として、次のものを挙げています。

  • 子どもの名前と呼び方、性別、生年月日、来日した日、国籍、住所、滞在期間と滞在の予定、生育歴
  • 母国での学習歴、母国での学年(就学年数)、日本語の学習歴
  • 病歴やアレルギーなど、好きな教科、得意なこと、趣味、将来(進路)の希望
  • 家族の構成、連絡先と連絡方法(緊急時・勤務先・通訳など)、登下校の方法、家族の日本語学習歴、通訳が必要か

これが、家族が準備できることの目安になります。以下、特に聞かれやすい三つを分けて書きます。

1. 学習歴:何年生まで、どこで学んだか

ウクライナの学校は、4年の初等教育、5年の基礎中等教育、3年のプロフィール中等教育に分かれています(教育法第12条)。入学は原則6歳、学年は平時の規定で9月1日に始まります。日本とは入学の時期も区切り方も違うので、「ウクライナで何年生だったか」を、次のような形で書き出しておくと伝わりやすくなります。

  • 通っていた学校の名前と所在地、在籍していた期間(何年何月から何年何月まで)
  • 最後に在籍していた学年と、その学年を終えたかどうか
  • 全面侵攻の後に、遠隔授業やオンラインで学んだ期間があれば、その期間と形
  • ウクライナの学校の課程を、日本に来てからも遠隔などで続けているかどうか、続けたいかどうか

ウクライナの法律では、生徒が次の学年に進むたびに、年間の成績を記した「達成の証書(свідоцтво досягнень)」が毎年交付されます(完全普通中等教育法第17条第4項)。各段階を終えたときの修了証は、国の統一電子データベースに登録番号つきで記録されます(同法第18条第4項)。国外への転出などで学校を離れる場合は、成績評価を前倒しで行うことができる、とも定められています(同法第17条第6項)。手元にこうした書類があれば、持っていきましょう。

ウクライナの制度そのものは、ウクライナの12年制の学校、最後の3年間は2027年に始まるで詳しく扱っています。

2. 言語:何語で学び、何語なら話せるか

日本の授業は通常日本語で行われる、と就学ガイドブックは書いています。学校が知りたいのは、子どもの言語の状況です。

  • 家庭で話す言語、学校で学んできた言語(ウクライナの学校の教育言語は、原則として国家語のウクライナ語です)
  • ほかに話せる・読める言語(英語など)と、その程度
  • 日本語をどのくらい学んだか。ひらがな・カタカナが読めるか
  • 保護者が学校と話すときに、通訳が必要か。必要なら、誰が手伝えるか

日本語が十分でない子どもには、学校で「日本語指導」が行われることがあります。学校教育法施行規則第56条の2は、日本語に通じない児童について、日本語の能力に応じた特別の指導を行う必要がある場合に「特別の教育課程」によることができる、と定めています(中学校には第79条で準用)。2022年の通知も、ウクライナから来た子どもに日本語指導をはじめとする適切な指導と支援を行うよう学校に求めています。ただし、どの学校でどの程度の日本語指導があるかは、学校と自治体によって違います。日本語指導が十分に受けられる学校に変えられる場合がある、とガイドブックは書いていますが、これも市区町村ごとの判断です。

3. 配慮事項:健康、食事、気持ち

  • 病歴、アレルギー、服薬、見え方や聞こえ方など、学校で気をつけてほしいこと
  • 宗教や健康の理由で食べられない食材。就学ガイドブックは、給食で食べられない食材がある場合は学級担任に相談するよう書いています
  • 障害や発達に関わる支援が必要な場合は、その状況。特別支援学校や特別支援学級に入れる場合もある、とガイドブックは書いています
  • 環境の変化や、戦争による体験で気がかりなこと。書ける範囲で構いません

2022年の通知は、ウクライナから来た子どもが困難な状況に直面していることをふまえ、学校生活や給食の時間などさまざまな場面で、健康や心情、生活の実態に配慮した指導と支援を検討するよう学校に求めています。伝えたくないことを、無理に伝える必要はありません。伝えておきたいことを、先に整理しておくためのリストです。

何年生に入るか:年齢で決まるのが基本

日本の学校では、学年は年齢で決まります。就学ガイドブックは「4月2日から翌年の4月1日までに生まれた子供は同じ学年になります」と書き、そのため編入した学年が母国の学年と一致しない場合がある、としています。

年齢どおりの学年に入るのが基本ですが、例外もあります。2020年の指針は、日本語でのコミュニケーションの力が足りない、日本と外国で学習の内容や順序が違う、などの理由で、ただちに年齢相当の学年の教育を受けることが適切でないと認められる場合、学校は「一時的又は正式に」下の学年への入学を認めることができる、としています。その際は本人と保護者に丁寧に説明し、十分な理解を得ることが必要だ、とも書いています。

日本の小学校・中学校・高校には飛び級の制度がなく、入った学年から順に進む、とガイドブックは説明しています。下の学年に入ると、その後の進学の時期も変わります。学年を決める前に、理由と見通しを教育委員会や学校に聞いておくとよいでしょう。

また指針によれば、義務教育を終えないまま学齢(6〜15歳)を過ぎた人も、市町村教育委員会の判断で公立中学校に受け入れられる場合があり、夜間中学がある自治体では夜間中学への入学が可能であることを案内するよう求めています。

高校に入る・編入する場合

高校は義務教育ではなく、進学するときは通常、入学者選抜の試験を受けます(就学ガイドブック)。2020年の指針は、公立高校の入学者選抜で、外国人生徒を対象とした特別定員枠の設定や、試験教科の軽減、問題文の漢字へのルビ振りなどの配慮を進めるよう教育委員会に求めています。こうした枠や配慮があるかどうか、条件は何かは、都道府県ごとに違います。2022年の通知は、ウクライナから来た子どもの高校への編入について、編入学試験の実施にあたっても「適切かつ柔軟な対応」を求めています。

お金のこと

  • 公立の小学校・中学校の授業料は無償で、教科書も国から無償で配られます(就学ガイドブック)。2022年の通知は、編入した場合も教科書は無償で給与されると書いています
  • 給食費は保護者の負担です。経済的な理由で就学が難しいと市区町村教育委員会が認めた場合は、学用品や給食費などの「就学援助」を受けられます
  • 高校では、国公私立を問わず、授業料にあてる「高等学校等就学支援金」を受けられます(受給要件あり)

2022年の通知は、就学援助や高校の修学支援について、通常の手続きが難しい場合でも申請期間の延長を含めて弾力的に対応するよう求めています。自分の家庭が対象になるかは、市区町村の教育委員会(高校は都道府県)で確かめてください。

書類の言葉と、翻訳のこと

就学ガイドブックは、学校へ行くときに「母国の学校関係の書類(在籍証明書や成績証明書など)」を持っていくよう書いています。その書類に日本語訳が必要かどうか、誰の翻訳でよいかは、国の資料には書かれていません。翻訳を用意する前に、教育委員会に聞いてください。書類が手元にない場合も、そのことを含めて相談してください。

文部科学省は、就学ガイドブックの日本語・ウクライナ語対訳版を公開しています。ウクライナ語の欄に、学校で聞かれる項目が並んでいます。家族で書き込みながら準備するのに使えます。ただしこのガイドブックは2015年4月に作られたもので、祝日の一覧など一部の記載は現在の日本の制度と合っていません。

教育委員会に聞くときのチェックリスト

  • 子どもは何年生に入ることになりそうか。その理由は何か。下の学年に入る場合、あとで変えられるか
  • どの学校に通うことになるか。日本語指導のある学校に変えられるか
  • 日本語指導は、誰が、週にどのくらい行うか
  • 持っていく書類は何か。ウクライナ語の書類に翻訳は必要か
  • 学校と話すときに、通訳を頼めるか
  • 給食、学用品、就学援助について、どこで申請するか
  • 高校の場合:外国人生徒の特別枠や受検上の配慮があるか。編入学の試験はどうなるか

文部科学省には、ウクライナから来た人向けの就学と日本語教育のヘルプデスクがあり、メールでの問い合わせを勧めています。連絡先と対応言語は、日本で暮らし始めたときの相談窓口にまとめています。

国の資料と法令は2026年9月23日時点のものです。手続きの細部は自治体ごとに違い、変わることもあります。実際の手続きは、住んでいる自治体の教育委員会の案内に従ってください。

出典・参考資料

  1. 外国人児童生徒のための就学ガイドブック(日本語・ウクライナ語版、2015年4月作成。義務教育の年数、学年は4月2日〜翌4月1日生まれで決まること、下の学年への一時的な編入、入学手続きの流れ、持参する書類、学校が保護者と話し合う項目、飛び級がないこと、授業料・教科書・給食費・就学援助・高等学校等就学支援金、相談窓口)
    発行:文部科学省 確認日:2026-09-23
  2. 外国人児童生徒のための就学ガイドブック(言語別一覧。ウクライナ語版の掲載を確認)
    発行:文部科学省 確認日:2026-09-23
  3. ウクライナからの避難民の児童生徒等の教育機会の確保について(通知)(令和4年4月18日、4文科際第18号。積極的な受入れ、在留カード等がない場合の柔軟な対応、高校等への弾力的な編入、授業料・就学援助の弾力的対応、日本語指導、教科書の無償給与、健康や心情への配慮)
    発行:文部科学省 確認日:2026-09-23
  4. 外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針(令和2年7月1日。就学義務が課されていないこと、入学が可能であることの案内、下学年への入学、学齢を経過した人の中学校受入れと夜間中学、高校入学者選抜の特別定員枠と受検上の配慮)
    発行:文部科学省 確認日:2026-09-23
  5. ウクライナから避難されている方々への支援(ヘルプデスクの案内、就学・日本語教育に関する資料一覧)
    発行:文部科学省 確認日:2026-09-23
  6. 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第56条の2、第56条の3、第79条(日本語に通じない児童生徒に対する特別の教育課程と中学校への準用)
    発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-23
  7. Закон України «Про повну загальну середню освіту» від 16.01.2020 № 463-IX(第17条第4項の毎年の「達成の証書」、第17条第6項の転出時の前倒し評価、第18条の修了証と統一電子データベース)
    発行:Верховна Рада України(ウクライナ最高会議)法令データベース 確認日:2026-09-23
  8. Закон України «Про освіту» від 05.09.2017 № 2145-VIII(第12条の三段階と入学年齢)
    発行:Верховна Рада України(ウクライナ最高会議)法令データベース 確認日:2026-09-23
  9. 小・中学校の入学手続き案内(外国籍の子どもの入学案内、在留カード・特別永住者証明書等の提示、転入学時の在学証明書・教科書給与証明書について確認)
    発行:横浜市教育委員会事務局学校教育企画部学校支援・地域連携課 確認日:2026-09-23
  10. 外国籍のお子さんの入学手続き(対象年齢、入学のご案内と入学申請書の提出、申請期限について確認)
    発行:大阪市城東区役所窓口サービス課 確認日:2026-09-23

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