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社会を知る/解説

道路のがれきは自治体、敷地のがれきは持ち主が片づける。ウクライナの手順

ロシアの攻撃で壊れた建物のがれきを誰が片づけ、どこに置き、何に使い直すのか。ウクライナでは2022年9月の内閣決定第1073号が手順を定めています。持ち主が分からないときの扱い、仮置き場の条件、量の見積もりが資料ごとに違う理由を、2026年9月時点の条文と報告で見ます。

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オリュカのひとこと

壊れた建物のがれきの扱いは、何で決められているのでしょう。最初の見出しで確かめられます。

ロシアの攻撃で壊れた集合住宅の前には、コンクリートやれんがの塊、割れたガラス、家具や家電が積み重なります。これを誰が片づけ、どこへ運び、何に使い直すのか。ウクライナでは、2022年9月27日の内閣決定第1073号が、その手順を定めています。

法令は、こうしたがれきを「破壊による廃棄物」(відходи від руйнувань)と呼びます。以下、2026年9月時点の条文をもとに、片づける主体、持ち主が分からないときの扱い、仮置き場と再利用の決まり、がれきの量の見積もりが資料ごとに違う理由を順に見ていきます。

2022年9月の内閣決定第1073号

内閣決定第1073号の正式な題名は「戦闘行為、テロ行為、破壊工作またはその結果を取り除く作業によって建物・構造物が損傷(破壊)したことで生じた廃棄物の管理の手順の承認と、内閣の一部の決定の改正について」です。2023年から2026年までに6回改正され、2024年8月23日の内閣決定第964号で、題名と本文の「廃棄物の取り扱い」(поводження з відходами)が「廃棄物の管理」(управління відходами)に改められました。

手順の第3項は、破壊による廃棄物を、損傷・破壊された建物の部分(破片)と、壊れたときや解体のときに建物の中や近くにあった物のうち、もとの用途に使えなくなり、その場で使い続けられないもの、と定義しています。第11項はこれを二つに分けます。建物の構造の破片、ドアや窓、配管、衛生設備などの「主な成分」と、設備、個人の持ち物、家具、家電、有機物などの「付随する成分」です。

手順が使われるのは、戒厳令のあいだと、戒厳令が終わってから90暦日の「復旧の期間」です(第1項)。放射性廃棄物、防衛・特別の用途の施設、原子力や文化遺産の法律が及ぶ施設、事業者の活動から出た廃棄物には適用されません(第2項)。2025年12月の改正で加わった第1-1項によれば、戦闘が行われうる地域・戦闘が続いている地域として共同体・領土発展省(Мінрозвитку)が承認した一覧に載り、戦闘の終わりの日が決まっていない地域では、市町村の執行機関(または軍政)が決めた場合に限って適用されます。占領の終わりの日が決まっていない占領地域は、適用の範囲に入っていません。

誰が片づけるのか

手順が「権限のある機関」と呼ぶのは、村・町・市の議会の執行機関です。軍政が置かれている場所では、その地域の軍政がこの役を担います。第5項は、がれきの管理を誰が受け持つかを、がれきのある場所で分けています。

  1. オリュカ

    がれきを片づけるのは、どこにあるかで変わるのかな。

  2. タブリ

    場所ごとに受け持つ主体が、この見出しの下の表に並んでいるよ。

  3. スウネ

    持ち主が自分の敷地を片づけ始められる時期は、表の後の段落にあるね。

場所ごとの受け持ち

場面受け持つ主体根拠
建物の敷地や、持ち主のいる土地にあるがれき壊れた建物の持ち主・管理者、または土地の持ち主・使用者手順第5項
通り・道路、公園、広場、河岸、集合住宅の敷地まわり、浜、墓地など、みんなが使う場所のがれき(爆風で飛ばされてきたものを含む)権限のある機関(市町村の執行機関、軍政)手順第5項
持ち主が技術的・経済的な理由で自分では片づけられないがれき持ち主の申し出を受けて、権限のある機関が作業を手配する手順第9項
建物の解体解体を決めるのは村・町・市の議会の執行委員会(または地方の国の行政機関・軍政)。建物の調査の報告書にもとづく内閣決定第474号の手順第4項
がれきの把握と記録権限のある機関。毎月5日までに州の行政機関へ、州とキーウ市は10日までに所管の省へ報告する手順第6・7項
内閣決定第1073号と第474号(2022年4月19日)の手順の本文(最高会議の法令データベース、2026年9月閲覧)による。

権限のある機関が真っ先に片づけるのは、通りと道路、学校・病院・社会福祉施設や行政サービスの建物、消防・救助の拠点のまわり、そして集合住宅や寮の敷地まわりです(第21項)。持ち主が自分の敷地を片づけたいときは、救助や安全確認などの緊急の作業(2022年4月19日の内閣決定第473号の手順による)が終わったという知らせを権限のある機関から受けてから始めます(第22項)。

作業の途中で爆発物のような危険な物を見つけたとき、ガスのにおいがしたとき、電気が漏れていたときなどは、すぐに作業を止めて国家非常事態庁の地方の機関と法執行機関(警察など)に知らせることになっています(第19項)。

持ち主が分からないとき

持ち主が分からないがれきについては、権限のある機関が、廃棄物管理法にもとづいて内閣が定めた「持ち主が分からない廃棄物の把握と記録の手順」に従って持ち主を探します。それでも持ち主が見つからなければ、権限のある機関ががれきの管理を手配します(手順第6項)。

廃棄物管理法の第12条は、持ち主が分からない廃棄物を処理業者に引き渡す費用と、廃棄物による悪い影響を取り除く費用は、国か地方の予算でまかなうと定めています。あとで持ち主が分かった場合、その人は探す費用と、収集・運搬・処理の費用を払わなければなりません(同条第3項)。

持ち主が分かっていても片づけていない場合について、手順第8項は、戒厳令が終わってから90暦日のうちに持ち主が必要な作業をしなければ、権限のある機関が、民法典などを踏まえてそのがれきの扱いを決める、としています。

オリュカのひとこと

片づけたがれきは、そのあとどうなるのでしょう。この見出しで確かめられます。

仮置き場と、砕いて使い直す決まり

がれきの量が、その地域の処理施設で扱える量を超えるとき、または処理施設がないときは、州の軍政(キーウ市はキーウ市の軍政)が仮置き場を設けることを決めます(第25項)。仮置き場にがれきを置けるのは、戒厳令のあいだと、戒厳令が終わってから1年のあいだです(第3項)。

仮置き場は、住宅・公共の建物・社会施設から0.5キロメートル、農地・公道・鉄道から0.2キロメートル、森林から0.05キロメートル離さなければなりません。水域の土地と水源を守る区域には設けられません(第26項)。仮置き場で行える処理は、危険な物を含まない「主な成分」を分け、砕き、粒の大きさでふるい分けることに限られます(第28項)。

手順の付録1は、成分ごとに使い直しの道を挙げています。たとえばコンクリートは、強度の等級C20/25までのコンクリートの骨材、道路の路盤に使う砕石と砂の混合物、道路の盛り土、採掘跡の埋め戻しなどに使えるとされています。れんがは、湿地での排水層や、未舗装の道・林道の補強などです。付録は、アスベストを含む断熱材や、アスベストを含む建材も成分として挙げています。

第31項は、権限のある機関に対し、自らが建設の注文主になる事業で、処理した主な成分を使い直す手だてをとるよう義務づけ、ほかの注文主が使うことも後押しするよう求めています。一方、戒厳令のもとでのがれきの管理には、廃棄物の処理の許可が要らず(第4項)、環境影響評価の対象にもならない(第14項)と定められています。

アスベストなどの危険な廃棄物

壊れた建物や解体の作業で危険な廃棄物が見つかった場合は、廃棄物管理法の第IV章(危険な廃棄物)に従って扱います(手順第12項)。解体の前には、建物やその構造の一部が崩れ落ちるおそれがなければ、アスベストを含むものなど危険な廃棄物を含みうる部分を先に取り除き、作業中はアスベストの粉じんが出ないよう手だてをとることが、解体の請負業者に求められています(第24項)。

がれきを家庭ごみの容器や分別収集の容器に入れることは禁じられています(第20項)。仮置き場で、ほかの種類の廃棄物を一緒に置くこともできません(第29項)。

廃棄物管理法と、建設・解体の廃棄物

土台になる法律は、2022年6月20日の廃棄物管理法(第2320-IX号)です。2022年7月9日に公布され、公布から12か月後の2023年7月9日に施行されました。これにより1998年の「廃棄物について」の法律は効力を失いました。

この法律は「建設・解体の廃棄物」を、建物・構造物の大規模な修繕、建設、取り壊しから出る廃棄物と定義しています(第1条)。第13条第7項は、建設や取り壊しをする事業者に、この廃棄物を分けて集め、記録し、処理業者に渡すことを義務づけ、危険でないものは再使用の準備、リサイクル、埋め戻しなどに回すとしています。同条第9項は、戦争を含む非常事態で生じた廃棄物の管理は内閣の定める手順に従うとしており、破壊による廃棄物ではそれが内閣決定第1073号にあたります。

がれきはどれだけあるのか

「600万トン」と「1,720万トン」は、何を数えているか

がれきの量は、発表する主体によって大きく違います。数えている範囲と時点が違うためです。

発表時点数字数えた範囲
環境保護・天然資源省(当時)の大臣の発言2025年6月4日の発表600万トンを超える国内の破壊による廃棄物(範囲の説明はない)
国連開発計画(UNDP)の調査報告(UNDPとウクライナの共同体・領土発展省の依頼、日本政府の資金。同省は2026年7月に復興・インフラ・運輸省に改称)2025年9月時点の推計(報告は2026年6月)約1,720万トン政府が管理する地域の、損傷・破壊された住宅から出たがれき。占領地域や住宅以外の施設は十分に含まない
同じ報告同上約1,170万トン上のうち、まだ処理されていない量。残りの約550万トンについて、報告は本文(第I節)で「自治体の報告によれば、すでに処分・再利用・リサイクルされた」とし、冒頭の要約では「すでに撤去され、埋立地に処分された」としている
同じ報告同上約820万トン処理されていない量のうち、汚染や分別の状態しだいで使い直せる量(最大7割)
環境保護・天然資源省の発表(2025年6月4日)と、UNDP「ウクライナにおけるがれきのリサイクル・再利用の仕組みの導入」要約報告(2026年6月)による。

UNDPの報告は、この推計を国の統一した算定方法がないなかで、公開の情報と統計から出した「目安」だとしています。住宅の種類と損傷の程度を仮定し、床面積から重さに換算する方法で、州別ではドネツィク州(約570万トン)、ハルキウ州(約340万トン)、キーウ州(約190万トン)、ヘルソン州(約110万トン)が多いとしています。がれきの中身は、れんがが約5割、コンクリートが約45%、そのほかが約5%という見積もりです。

片づけた量の数字もあります。UNDPは、全面侵攻のあと8つの州で100万トンを超えるがれきの撤去と分別を支援したと発表しています。2025年6月の環境保護・天然資源省の発表は、ブチャでは8万トンを超えるがれきの30%を道路の補修に使ったと紹介しています。

復興費用の見積もりである第5次迅速被害・ニーズ評価(RDNA5)は、がれきを重さではなく費用で数えています。住宅の分野の損失額250億ドルのうち、60億ドルががれきの撤去によるものとしています。RDNAの数字の読み方は復興費用の見積もりの記事にあります。

補償や支援の制度とのつながり

がれきの片づけは、壊れた家の補償とは別の制度です。住宅の持ち主への補償はєВідновлення の記事で扱っています。日本の国際協力機構(JICA)が供与したがれき処理の機材と、仮置き場の運営やアスベスト対策の技術の移転はJICAがウクライナに送ったものの記事にあります。

出典と記事の記録出典 8件 · 訂正・更新 1件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Постанова КМУ № 1073 «Про затвердження Порядку управління відходами, що утворились у зв’язку з пошкодженням (руйнуванням) будівель та споруд внаслідок бойових дій, терористичних актів, диверсій або проведенням робіт з ліквідації їх наслідків…»2022年9月27日。手順第1〜31項、付録1、改正の一覧
    発行:Кабінет Міністрів України(最高会議の法令データベース) 確認日:2026-09-27
  2. Постанова КМУ № 474 «Про затвердження Порядку виконання робіт з демонтажу об’єктів, пошкоджених або зруйнованих внаслідок надзвичайних ситуацій, воєнних дій або терористичних актів»2022年4月19日。手順第4・6項
    発行:Кабінет Міністрів України(最高会議の法令データベース) 確認日:2026-09-27
  3. Закон України «Про управління відходами» № 2320-IX2022年6月20日。第1・12・13条、第XI章、施行日
    発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-27
  4. Постанова КМУ № 963 «Деякі питання оптимізації системи центральних органів виконавчої влади»2026年7月17日。省の改称
    発行:Кабінет Міністрів України(最高会議の法令データベース) 確認日:2026-09-27
  5. За межами поля бою: як Україна бореться з відходами руйнації2025年6月4日
    発行:Міністерство захисту довкілля та природних ресурсів України 確認日:2026-09-27
  6. Implementation of the Debris Recycling and Reuse System in Ukraine: Summary Report on the Findings and Recommendations of the Feasibility Study2026年6月。量の推計、方法と限界、州別の量、組成
    発行:United Nations Development Programme in Ukraine(ReliefWeb 掲載) 確認日:2026-09-27
  7. Ukraine could recover up to 8.2 million tonnes of secondary raw materials from war-generated debris, UNDP study reveals2026年6月9日。100万トン超の撤去支援
    発行:United Nations Development Programme in Ukraine 確認日:2026-09-28
  8. Ukraine Fifth Rapid Damage and Needs Assessment (RDNA5): February 2022 – December 2025住宅の損失額とがれきの撤去
    発行:World Bank Group, Government of Ukraine, European Commission, United Nations 確認日:2026-09-27

訂正・更新の記録

  • 内閣決定第1073号の条文に合わせ、危険な物などを見つけたときの通報先(第19項)を「国家非常事態庁と警察」から「国家非常事態庁の地方の機関と法執行機関(警察など)」に改め、解体前の条件(第24項)、適用地域の一覧を承認する機関(第1-1項)、期間の数え方(90暦日)を条文どおりに直し、UNDP報告の約550万トンについて報告の本文と要約で書き方が違うことを書き添えました。

記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。