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писати と написати。ウクライナ語の動詞の完了体と不完了体

ウクライナ語の動詞は、ほとんどが完了体と不完了体の組で現れます。接頭辞・接尾辞・別の語根による組の作り方、完了体に現在形がないこと、未来を表す三つの形、命令形の例、日本語の「〜した」と一対一にならない理由を、アカデミーの百科事典・正書法・辞書の記述でまとめました。

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オリュカのひとこと

ウクライナ語の動詞には、二つの「体」があるそうです。何が違うのか、最初の見出しで確かめられます。

ウクライナ語で「書く」は писати です。ところが「手紙を書き上げた」と言いたいときには、написати という別の動詞が出てきます。辞書を引くと、писати には недок.、написати には док. という略号が付いています。この二つの略号が示しているのが、動詞の「体」(вид)です。

以下、体とは何か、完了体と不完了体の組の作り方、時制や命令形との関係を、ウクライナ国立科学アカデミーの言語学研究所とウクライナ語研究所が編んだ『Українська мова. Енциклопедія』(ウクライナ語百科事典、第2版2004年。以下、百科事典)、2019年版の正書法(правопис)、アカデミーの『Словник української мови』(ウクライナ語辞典。20巻本のオンライン版と11巻本)の記述にもとづいてまとめます。確認は2026年9月時点です。

体とは何か

百科事典の「вид」(体)の項は、体を「ウクライナ語とほかのスラヴ語に特有の、動詞の文法カテゴリー」と定義しています。意味のうえでは、動作が続くことに限りがあるか(доконаний вид、完了体)、限りがないか(недоконаний вид、不完了体)で、二つの形が向かい合っている、という説明です。

完了体の項は、完了体が表すのは「内側から区切られた動作」だとし、その区切りの現れ方として、動作の始まり(заговорити=話し始める)、終わり(прийти=着く)、一回きりの、しばしば急な動作(стукнути=こつんと叩く)、動作の結果などを挙げています。

カナダ・アルバータ大学ウクライナ研究所の『Internet Encyclopedia of Ukraine』(IEU)の「Ukrainian language」の項も、動詞のあらゆる形を貫く本当に生産的なカテゴリーは完了体と不完了体の体だけだとし、原則としてどの動詞もこの二つの体のどちらかで現れる、と書いています。

完了体と不完了体の組は、どう作られるか

百科事典によれば、20世紀には、体は意味が同じか非常に近い二つの動詞の組(видова пара)として理解されるようになりました。組になる二つは、同じ格の名詞を同じ前置詞で取るなど、文の中でのふるまいも同じです(читати що, про що — прочитати що, про що)。組の作り方は、主に次の三つです。

作り方例(不完了体 — 完了体)百科事典の項目
接頭辞を付けるписати — написати(書く)、робити — зробити(する・作る)、бити — побити(打つ)「вид」
接尾辞を替えるкупувати — купити(買う)、пускати — пустити(放す)、стрибати — стрибнути(跳ぶ)「доконаний вид」
接頭辞の付いた完了体から、接尾辞で不完了体を作るрозбити → розбивати(割る)、продати → продавати(売る)「вид」「доконаний вид」
別の語根を使うбрати — взяти(取る)、ловити — піймати(捕まえる)、бити — ударити(打つ)「суплетивізм」
一つの形で両方を表すабсорбувати(吸収する)、авансувати(前払いする)、женити(結婚させる)、веліти(命じる)、мовити(言う)「вид」「доконаний вид」
『Українська мова. Енциклопедія』(2004年)の各項目による。日本語訳は編集部による。二つの体を一つの形で表す動詞(двовидові дієслова)は、百科事典によれば多くが借用語。
  1. オリュカ

    接頭辞をつけると、いつも体だけが変わるのでしょうか。

  2. スウネ

    場所や結果の意味まで変わる例もあると、この見出しの下にあるよ。

  3. タブリ

    体だけが変わる例と、意味も変わる例が、この見出しの下で並べて書かれているよ。

接頭辞は、意味を足すこともある

接頭辞がいつも体だけを変えるわけではありません。百科事典は、бігти — добігти(走る — 走り着く)では場所の意味と体の両方が、бити — добити(打つ — とどめを刺す)では結果の意味と体の両方が変わるのに対し、писати — написати では体だけが変わる、と対比しています。заболіти(痛み始める)、переболіти(病気をやり過ごす)のように、始まりや終わりを表す接頭辞を付けた完了体からは、組になる不完了体が作られない場合もある、とも書いています。

つまり、接頭辞の付いた動詞を見ても、それが単に体の組なのか、意味の違う別の動詞なのかは、形だけでは決まりません。

прочитати の組の相手は читати か、прочитувати か

どの二つを組と見るかは、資料によって示し方が違うことがあります。百科事典は читати — прочитати を組の例に挙げ、「未来」の項でも прочитаю(読むだろう)と читаю(読んでいる)を対にしています。一方、20巻本の辞書のオンライン版は、прочитати を ПРОЧИ́ТУВАТИ(不完了体)と一つの項目にまとめ、「ПРОЧИ́ТУВАТИ, ую, уєш, недок., ПРОЧИТА́ТИ, а́ю, а́єш, док.」と見出しを立てています。11巻本の ЧИТАТИ の項は、недок. とだけ示しています。

辞書を引くときは、見出しの横の недок./док. の略号と、「Док. до писа́ти」(писати の完了体)のような語釈の書き方で、その辞書がどの語を組と見ているかを確かめられます。20巻本は НАПИСА́ТИ を「Док. до писа́ти 1–3, 5」と説明しており、писати の意味のうち一部についての完了体だと分かります。辞書の見出しと略号の読み方は、лютого と打つと「ルター派」が出る。ウクライナ語の辞書の引き方にまとめています。

時制と体:現在形は不完了体だけ

過去形は、どちらの体からも作られます(писав=書いていた・書いた、написав=書き上げた)。違いが出るのは現在と未来です。百科事典の完了体の項は、完了体の動詞からは現在形が作られない、と書いています。完了体の動詞に現在形と同じ語尾を付けた形(напишу)は、未来を表します。

未来を表す三つの形

百科事典の「майбутній час」(未来)の項は、未来の形を三つ挙げています。2019年版の正書法も、§115 の8で同じ区別を示しています。

形例作れる体作り方
складена(合成の形)буду писати(書くだろう)不完了体だけбути の未来形(буду, будеш…)+不定形
складна(融合した形)писатиму、ходитиму、пектиму不完了体だけ不定形+-му, -меш, -ме…(昔の動詞 яти の人称形が語尾になったもの)
проста(単純な形)напишу、зроблю完了体だけ完了体の動詞に現在形の語尾を付ける
『Українська мова. Енциклопедія』(2004年)「майбутній час」、『Український правопис』2019年版 §115 の8による。例の日本語訳は編集部による。

百科事典は、不定形に語尾が融合した形(писатиму)を、ウクライナ語の文法の特徴的な現象の一つとしています。南西部の方言では、му писати、меш читати のように語尾にあたる部分が前に置かれることもある、とも書いています。正書法は、接頭辞のない完了体の動詞でも、грімну(とどろかせる)、ляжу(横になる)、пущу(放す)、стукну(叩く)のように、現在形の語尾で未来を表すものがあると付け加えています。

百科事典によれば、完了体の未来の形は、話し手が話している時点より後の動作を表し、不完了体の現在形は、話している時点と重なる動作を表します。ただし完了体の未来の形は、過去に繰り返されたことを表す比喩的な使い方もある、と同じ項は注意しています。

命令形の例

命令形も、どちらの体からも作られます。正書法の §116 は、писати から пиши、пишімо、пишіть、брати から бери、берімо、беріть を例に挙げています。百科事典の「спосіб」(法)の項は、完了体の зробити から зроби、зробімо、зробіть の形を示しています。

辞書の用例には、二つの体の命令形がどちらも出てきます。

  • 完了体:«Напишіть про себе, що поробляєте, чим заняті»(ご自分のことを、何をしているか、何に忙しいか書いてください。コツュビンシキー)。20巻本の НАПИСА́ТИ の用例
  • 不完了体:«не можна просьбою – бери силою!»(頼んでだめなら、力で取れ。パナス・ムィルヌィ)。20巻本の БРА́ТИ の用例
  • 完了体:«ні, ти зроби його з води!»(いや、それを水から作ってみろ。レーシャ・ウクラインカ)。20巻本の ЗРОБИ́ТИ の用例
  • 不完了体:«а робіть те, що самі знаєте»(自分で分かっていることをしなさい。ドヴジェンコ)。20巻本の РОБИ́ТИ の用例

正書法は、完了体の доповісти(報告する)、розповісти(語る)については、命令形はふつう不完了体の доповідати、розповідати から作った доповідай、розповідай が使われる、と注記しています。ただ、どんな場面でどちらの体の命令形を選ぶかの一般的な決まりは、この記事で使った資料には書かれていません。

オリュカのひとこと

日本語の言い方とは、そのまま重ならないようです。どこが違うのか、この見出しで確かめられます。

日本語の「〜している」「〜した」とは一対一にならない

体を日本語の「〜している」(続いている)と「〜した」(終わった)に置き換えたくなりますが、そうはいきません。20巻本の писати の用例 «А писав [Йосип] – куди краще від самого дяка»(ヨシプは、教会の読経役〔дяк〕その人よりずっと上手に字を書いた)では、不完了体の過去形 писав が、書き上げた一回の行為ではなく、書く腕前を表しています。日本語では「書いた」とも「書いていた」とも訳せます。

一方、«Юрко вистругав маленьку дощечку, написав кілька слів»(ユルコは小さな板を削り、いくつかの言葉を書いた。ネチュイ=レヴィツキー)の написав は、書き終えた一回の行為です。日本語ではどちらも「書いた」になりえます。反対に、不完了体の現在形 пише は「書いている」とも「書く」(習慣として)とも訳せ、完了体の напишу は「書く(これから書き上げる)」と訳すことが多くなります。

日本語の「た」は時を、ウクライナ語の体は動作に区切りがあるかどうかを表す、と分けて考えると、取り違えが少なくなります。この段落の対応づけは、理解のための目安として編集部が示したもので、文法書の記述ではありません。

  1. オリュカ

    いまの呼び方は、昔から変わらず使われてきたのでしょうか。

  2. タブリ

    呼び名が変わってきた道筋が、この見出しの下の表に並んでいるよ。

  3. スウネ

    いまより前は、この見出しの下の表で、意味が今と違う使い方があったようだよ。

「体」という呼び名の移り変わり

百科事典の「вид」と「доконаний вид」の項によると、いまの呼び名に落ち着くまでには、次のような経緯がありました。

年出来事典拠
1619年メレティー・スモトリツキーが教会スラヴ語の文法書で「вид」という用語を初めて使う。ただし意味はいまと違った百科事典「вид」
1755年ロモノーソフの文法書は、体を独立した文法カテゴリーとしては立てず、時制と結びついた形として扱う同上
19世紀前半コピタル、ヴォストコフ、ヤキウ・ホロヴァツキーらが、体を動詞の独立したカテゴリーとして扱う同上
1907年エウヘン・ティムチェンコが『Українська граматика』で、いまの意味の「доконаний вид」「недоконаний вид」という用語を使う百科事典「доконаний вид」
20世紀体を、意味が同じか非常に近い二つの動詞の組として理解するようになる百科事典「вид」
『Українська мова. Енциклопедія』(2004年)による。人名のカナは編集部による。

昔の呼び名と、いまの呼び名

スモトリツキーは体を二つに分け、「первообразный」または「совершенный」と呼ぶものと、「производный」と呼ぶもの(さらに「начинательный」「учащательный」に分かれる)を立てました。いまの完了体の呼び名に近い「совершенный」(完成した)という語がすでに使われていますが、百科事典によれば、彼がその例に挙げた чту、стою などの動詞は、実際にはどれも不完了体です。同じ項は、彼の区分はむしろ「派生していない動詞」「派生した動詞」「繰り返しの動作」と呼ぶべきものだった、と書いています。いま使われている доконаний/недоконаний の組は、1907年のティムチェンコの文法書にさかのぼります。

語をつくる仕組みか、文法か

体をどこに位置づけるかは、学者の間で見方が分かれてきました。百科事典によれば、19世紀前半に体を独立したカテゴリーとして扱った研究者の多くは、体を語をつくる仕組み(словотвір)の問題とし、ヴォストコフらは形の変化(морфологія)の問題としました。百科事典自身は、体の組には語形成と形の変化が絡み合っており、それは体が文法のカテゴリーになりきる過程がまだ終わっていないことを示している、という立場で書いています。

出典と記事の記録出典 6件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Українська мова. Енциклопедія, 2-ге вид.2004。「Вид」〔В. М. Русанівський。定義、1619年のスモトリツキー、1755年のロモノーソフ、19世紀前半の研究者、20世紀の組としての理解、читати — прочитати、бігти — добігти/бити — добити/писати — написати、бити > розбити > розбивати、робити — зробити、заболіти ほか、двовидові дієслова〕、「Доконаний вид」〔区切りの現れ方、1907年のティムチェンコ、купити — купувати ほか、женити の例、完了体から現在形・合成と融合の未来形が作られないこと〕、「Майбутній час」〔三つの形、ходитиму、яти、南西部方言の му писати、прочитаю — читаю、比喩的な用法〕、「Суплетивізм」〔О. О. Тараненко。брати — взяти、ловити — піймати、бити — ударити〕、「Спосіб」〔зроби — зробімо — зробіть〕
    発行:НАН України, Інститут мовознавства ім. О. О. Потебні, Інститут української мови(Вид-во «Українська енциклопедія» ім. М. П. Бажана) 確認日:2026-09-26
  2. 『Український правопис』2019年版§115 の8 未来の形〔бу́ду писа́ти、пекти́му、зроблю́、напишу́、гри́мну、ля́жу、пущу́、сту́кну〕、§116 命令形〔бери́、пиши́、注1 доповіда́й・розповіда́й〕
    発行:Українська національна комісія з питань правопису(Український центр оцінювання якості освіти のサイトに掲載された版) 確認日:2026-09-26
  3. Ukrainian language体が唯一の生産的なカテゴリーであること、不完了体の未来形 budu braty/bratymu、完了体の未来と命令形が現在語幹から作られること。1993年の紙の事典が初出、G. Y. Shevelov
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(Canadian Institute of Ukrainian Studies) 確認日:2026-09-26
  4. Словник української мови у 20 томах, onlineПИСА́ТИ、НАПИСА́ТИ、БРА́ТИ、РОБИ́ТИ、ЗРОБИ́ТИ、ПРОЧИ́ТУВАТИ/ПРОЧИТА́ТИ、КУПУВА́ТИ/КУПИ́ТИ の見出しと用例
    発行:Український мовно-інформаційний фонд НАН України 確認日:2026-09-26
  5. Словник української мови в 11 томах, т. 101979。УЗЯТИ〔ВЗЯТИ〕、док.、наказ. сп. візьми
    発行:АН УРСР, Інститут мовознавства ім. О. О. Потебні(Наукова думка) 確認日:2026-09-26
  6. Словник української мови в 11 томах, т. 111980。ЧИТАТИ, недок.
    発行:АН УРСР, Інститут мовознавства ім. О. О. Потебні(Наукова думка) 確認日:2026-09-26

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