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文化・歴史/解説

国の映画アーカイブ、ドヴジェンコ・センターの30年

キーウのドヴジェンコ・センターは、1994年の大統領令で生まれたウクライナ最大の映画アーカイブで、2025年1月時点で6万2千点あまりのフィルムを預かっています。何を保管し、何を取り戻してきたか、2022年の「再編」命令と裁判がどう終わったか、2025年に国立の地位が与えられるまでをまとめます。

画像:Ukrainavi

オリュカのひとこと

センターが預かるいちばん古いフィルムは、いつのものなのでしょう。保管している素材を「何を保管しているか」の表で確かめられます。

ウクライナで作られた映画のフィルムの多くは、キーウの「国立オレクサンドル・ドヴジェンコ・センター」(Національний центр Олександра Довженка、通称ドヴジェンコ・センター)に保管されています。センターは自らを「ウクライナ最大の映画アーカイブ」と紹介し、国際フィルム・アーカイブ連盟(FIAF)に加盟するウクライナで唯一の機関だとしています。監督オレクサンドル・ドヴジェンコの名を冠していますが、ドヴジェンコの作品だけの施設ではありません。映画『大地』については別の記事で取り上げています。

1994年、生誕100年の大統領令で

センターをつくったのは、1994年9月10日の大統領令第511/94号「オレクサンドル・ドヴジェンコ生誕100年の記念の措置について」です。大統領令は、ドヴジェンコ記念国家賞を設けるとともに、「キーウ市に、ウクライナ文化省の系統の下に国立オレクサンドル・ドヴジェンコ・センターを創設する」と定めました。同じ大統領令は、国の予算で作られたウクライナの撮影所の映画とフィルムの素材は国の財産であり、国民の文化遺産だとも定めています。

センターの説明によれば、センターはソ連の時代にウクライナで最大だったキーウのフィルム複製工場(1938年創設)を土台にしています。フィルムの保管部門(フィルモフォンド)は、1996年にキーウのヴァシルキウシカ通りにある工場の敷地で保管庫を使えるようになってから仕事を始めました。

何を保管しているか

センターの公表によれば、2025年1月1日時点で、フィルムの素材は約6万2,400の保存単位、作品の数では7,000を超えます。劇映画・アニメーション・記録映画・科学映画で、多くはウクライナで作られたものです。

項目センターの説明
フィルムの素材約6万2,400保存単位(2025年1月1日時点)、作品数は7,000超
最も古いフィルム1909年の硝酸セルロースのフィルム(作品名の分からない外国映画の断片)
最も古いソ連ウクライナの劇映画1922年の作品
独立後の作品1992年以降に作られたウクライナ映画のすべての原版を保管
紙の資料(キノアルヒーフ)7,000点を超える資料と、4,000冊を超える蔵書
出典:ドヴジェンコ・センター「私たちについて」「フィルモフォンド」(2026年9月24日に閲覧)。作品数は、同じセンターの英語版のページや過去の声明では別の数字が使われている。

保管庫は、原版(画と音のネガ)、上映用のプリント、磁気テープの音、かびに冒されたフィルムの消毒済みの保管、デジタル媒体などに分けられ、温度と湿度が管理されています。フィルムの状態は、1本ずつ3〜5年ごとに点検し直すとしています。センターには、ウクライナで唯一のフィルム現像・複製の研究室もあります。

2019年9月12日には、センターの中に映画博物館が開きました。最初の展示は、1920年代のウクライナの映画機関「全ウクライナ写真映画局(ВУФКУ、ヴフク)」を扱った「ВУФКУ. Lost & Found」でした。

外国の保管庫から取り戻した映画

センターは、国外のアーカイブに残っていたウクライナの無声映画を探し、取り戻してきました。2021年3月の発表によれば、ヴフクが1927年に作った『キラ・キラリナ』の上映用プリントが、ドイツ連邦公文書館とルーマニアの国立フィルム・アーカイブで見つかり、ドイツからは長さ1,538メートルのフィルムがスキャンのためにウクライナへ送られました。センターはこの作品を、西ヨーロッパの国々に売られた13本のヴフク作品の一つで、そのおかげで残ったとみられるとしています。それより前には、『タラス・トリャスィロ』(1926年)と『人と猿』(1928年)も取り戻しています。

修復した作品の例として、ドヴジェンコの『大地』は2012年にセンターが修復し、新しい音楽をつけて公開しました(『大地』の記事)。

資金の不足と、2022年の「再編」命令

センターは国営企業で、国の補助金と、建物の賃貸などの収入で運営されています。2020年5月28日、センターは「支払い不能の状態に陥った」とする声明を出しました。声明によれば、2020年の初めから予定された国の資金が届かず、1月と2月の給与が払えていないこと、収入の7割を占める賃貸と催しの収入が新型コロナウイルスの隔離措置で失われたことが理由でした。

2022年1月26日、内閣は命令第91-р号で、センターの管理を文化情報政策省から国家映画庁(Держкіно)に移し、映画庁に3か月以内にセンターの戦略計画を作るよう求めました。

その映画庁は2022年8月5日、命令第100号でセンターの「再編」を決めます。映画庁の2022年8月17日の声明によれば、中身は次の二つでした。

  • 2019年にセンターに統合された国営のアニメーション撮影所の財産を切り離し、新しい国営企業「ウクライナ・アニメーション・スタジオ」をつくる
  • 国の予算で作られた映画の原版などを保管する権限を、2011年に設けられた国の機関「ウクライナ映画学術センター」に移す

映画庁は、センターは法律上の「アーカイブ機関」ではなく、フィルムを預かっているだけだ、センターは国の補助金(2021年と2022年は各年760万6千フリヴニャ)と賃貸の収入に頼っている、などを理由に挙げ、「清算ではなく再編だ」と説明しました。これに対してセンターは、命令は事実上の清算で、フィルムのコレクションを実際には活動していない機関に渡すものだと反論しました。

オリュカのひとこと

「再編」の命令は、裁判で取り消されたのでしょうか。命令が効力を失った日と判決の日付をこの節で見比べましょう。

命令の取り消しと裁判の結末

映画庁は2022年11月15日、コレクションの専門家による評価、センターの監査、新しい長の選考が終わるまで命令を止めると発表しました。同じ発表で、センターに名前だけでなく実質的な「国立」の地位を与える手続きを始める考えも示しています。命令は2022年12月12日の命令第170号で止められ、2023年6月28日の命令第82号で、第100号と第170号はともに効力を失いました。映画庁は理由として、命令に定めた期限が過ぎたことと、政府の2023年の優先行動計画に「国家フィルム基金」の設立が入ったことを挙げています。

センターは命令の取り消しを求めて裁判を起こしていました。映画庁の発表によれば、キーウ市経済裁判所は2023年7月11日に命令を違法とする判決を出しましたが、北部控訴経済裁判所は2024年7月2日にこの判決を取り消し、最高裁判所の破毀経済裁判所は2024年11月19日にセンター側の上告を退けました。第一審の判決の時点で、命令はすでに効力を失っていました。

センターは2023年10月31日、内閣に出された「2027年までの映画発展戦略」の案に、「最適化」の名で再編の内容がふたたび入っているとして、案の取り下げを求めました。

2025年に「国立」の地位

2025年9月12日、大統領令第677/2025号が、国営企業「国立オレクサンドル・ドヴジェンコ・センター」に国立(національний)の地位を与えました。名前にはもともと「国立」が入っていましたが、法的な地位としてはこのときに与えられたことになります。

2025年12月22日には、映画庁が、2025年に生じたセンターの資金の問題について、予算の中から250万フリヴニャを振り替え、給与と公共料金の支払いに充てると発表しました。文化省によれば、2026年3月にイーホル・フラドゥン氏がセンターの総裁に任命されました。フラドゥン氏は2022年8月からセンターの執行役員を務め、2024年12月13日から総裁の職務を代行していた人物です。文化相のテチャナ・ベレジュナ氏は、この任命は一時的なもので、公開の選考で新しい長を選ぶと説明しています。

2026年6月15日のロシアによる攻撃では、キーウの国立ドヴジェンコ映画撮影所(センターとは別の機関)が被害を受け、10万点を超える衣装のコレクションが失われました。FIAFは、センターの建物は被害を受けなかったとしています。

出典と記事の記録出典 17件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. 大統領令「Про заходи щодо відзначення 100-річчя від дня народження Олександра Довженка」1994年9月10日 第511/94号。第1〜4項
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  2. 内閣命令 第91-р号2022年1月26日。管理の移管と戦略計画
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  3. 大統領令 第677/2025号2025年9月12日。国立の地位
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  4. Про нас設立、フィルム複製工場、1996年、2025年1月1日時点の保存単位、映画博物館2019年9月12日、キノアルヒーフ
    発行:ドヴジェンコ・センター 確認日:2026-09-24
  5. Фільмофонд保管庫の区分、点検の周期、1992年以降の原版、最古のフィルム
    発行:ドヴジェンコ・センター 確認日:2026-09-24
  6. Довженко-Центр повернув в Україну німий фільм 1920-х2021年3月22日。『キラ・キラリナ』
    発行:ドヴジェンコ・センター 確認日:2026-09-24
  7. ЗАЯВА ДОВЖЕНКО-ЦЕНТРУ2020年5月28日。支払い不能
    発行:ドヴジェンコ・センター 確認日:2026-09-24
  8. ДЕРЖКІНО ЛІКВІДОВУЄ ДОВЖЕНКО-ЦЕНТР2022年の命令へのセンターの反論
    発行:ドヴジェンコ・センター 確認日:2026-09-24
  9. Держкіно знову намагається протягнути «реорганізацію» Довженко-Центру2023年10月31日
    発行:ドヴジェンコ・センター 確認日:2026-09-24
  10. Заява … стосовно реорганізації ДП «Національний центр Олександра Довженка»2022年8月17日。再編の中身と理由、補助金額
    発行:ウクライナ国家映画庁 確認日:2026-09-24
  11. Держкіно призупиняє дію наказу від 05.08.2022 №1002022年11月15日
    発行:ウクライナ国家映画庁 確認日:2026-09-24
  12. Заява щодо чинності наказів Держкіно2023年6月29日。命令第82号・第170号
    発行:ウクライナ国家映画庁 確認日:2026-09-24
  13. Наказ Держкіно «Про реорганізацію…»: остаточне рішення суду2024年11月19日。裁判の経過
    発行:ウクライナ国家映画庁 確認日:2026-09-24
  14. Довженко-Центр отримає додаткове фінансування у 2025 році2025年12月22日
    発行:ウクライナ国家映画庁 確認日:2026-09-24
  15. Ігор Гладун очолив ДП «Національний центр Олександра Довженка»
    発行:ウクライナ文化省 確認日:2026-09-24
  16. Бережна: призначення Ігоря Гладуна керівником Довженко-Центру є тимчасовим2026年3月5日
    発行:Суспільне(ウクライナ公共放送) 確認日:2026-09-24
  17. Statement on the targeted strikes which destroyed the costume collection of the Oleksandr Dovzhenko National Film Studio
    発行:International Federation of Film Archives(FIAF) 確認日:2026-09-24

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