ロシア中央銀行も対象に。日本の対ロシア制裁は何を止めているか
2022年3月1日、日本はプーチン大統領らとロシア連邦中央銀行を資産凍結等の対象にしました。外為法に基づく資産凍結、輸出禁止、輸入禁止に、原油の上限価格と関税の措置が加わり、2026年9月の時点で直近の追加は2025年9月12日です。何が止められているのかを、財務省と経済産業省の公表資料から見ます。
2022年3月1日、外務省・財務省・経済産業省は連名で、資産凍結等の措置の対象にロシアの6人と3つの銀行を加えると発表しました。6人は、プーチン大統領、ラヴロフ外務大臣、ショイグ国防大臣、ゲラシモフ参謀総長、パトルシェフ安全保障会議書記、メドヴェージェフ安全保障会議副議長。3つの銀行の一つは、ロシア連邦中央銀行でした。
ロシアによるウクライナへの全面侵攻から5日後のことです。日本の対ロシア制裁はその後も積み重ねられ、2026年9月の時点で続いています。何が止められているのかを、三省の発表と財務省・経済産業省の公表資料から整理します。
根拠は外為法と閣議了解
日本の制裁は、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいて行われています。2022年以降の三省の発表は、「ウクライナをめぐる現下の国際情勢に鑑み」、問題の解決を目指す「国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため」、主要国が講じる措置の内容を踏まえて、と前置きしています。まず閣議了解で方針を決め、外務省告示で対象者を指定し、財務省と経済産業省が外為法の手続きで実施する、という流れです。
「資産凍結」と呼ばれる措置の中身は、二つの許可制です。一つは支払規制で、指定された者への支払を許可制にします。もう一つは資本取引規制で、指定された者との預金契約、信託契約、金銭の貸付契約などを許可制にします。財務省によれば、支払規制の対象には暗号資産による支払も含まれ、許可を受けずに支払うと、3年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方の対象になります。
始まりは2014年のクリミア
日本がウクライナをめぐってロシア側に制裁を科したのは、2022年が最初ではありません。2014年8月5日、三省は、クリミア自治共和国とセヴァストポリ市(発表の表記では「セヴァストーポリ特別市」)のロシアへの「併合」、またはウクライナ東部の不安定化に直接関与していると判断される40個人と2団体を資産凍結等の対象にしました。同じ日から、クリミア自治共和国とセヴァストポリ市を原産地とするすべての貨物の輸入が承認制になっています。
財務省の一覧(2026年9月10日現在)では、この系統の対象者は「2022年以前」が81個人・団体、「2022年以降」が268個人・団体です。2022年以降の分には、ロシアによる「編入」と称する行為に直接関与していると判断された、ウクライナ東部・南部の関係者が含まれています。
2022年2月26日からの一連の措置
全面侵攻の2日後、2022年2月26日の閣議了解で、日本は次の措置をまとめて決めました。自称「ドネツク人民共和国」と「ルハンスク人民共和国」の関係者とロシアの特定銀行に対する資産凍結等、両「共和国」との輸出入の禁止、ロシアの政府機関などによる日本での新しい証券の発行・流通の禁止、国際輸出管理レジームの対象品目のロシア向け輸出の禁止などです。
3月1日には冒頭の6人と3行が加わりました。三省の発表によれば、3行のうちロシア連邦中央銀行を除く2行(プロムスヴャジバンクとVEB.RF)への資産凍結等は3月31日から実施するとされ、中央銀行はこの先送りの対象から外されていました。同じ日、ロシアの49団体を「特定団体」に指定して輸出を禁じる措置と、ロシアの軍事能力の強化に役立つと考えられる汎用品の輸出禁止も打ち出されました。3月3日にはベラルーシの関係者も対象に加わっています。
財務省によれば、2022年4月5日からは、ロシアに向けて銀行券や政府紙幣を持ち出すときにも、原則として財務大臣(税関長)の許可が必要になりました。ロシアに滞在する人が滞在に通常必要な支払に充てる分などは例外です。
三つの柱:資産凍結、輸出禁止、輸入禁止
経済産業省の資料は、ロシアとベラルーシなどに対する輸出入の禁止措置の全体像を次のように分けています(2023年12月と2025年9月の資料から、実施日は2023年12月の資料による)。
| 区分 | 主な対象 | 最初の実施 |
|---|---|---|
| 国際輸出管理レジームの対象品目 | 工作機械、炭素繊維、高性能の半導体など(ベラルーシ向けを含む) | 2022年3月18日 |
| 軍事能力の強化に資すると考えられる汎用品 | 半導体、コンピュータ、通信機器、ロボット、レーザー溶接機など | 2022年3月18日 |
| 化学・生物兵器関連 | 化学物質、化学・生物兵器の製造に使える装置 | 2022年10月7日 |
| 先端的な物品 | 量子コンピュータ、3Dプリンターなど | 2022年5月20日 |
| 産業基盤の強化に資する物品 | 貨物自動車、ブルドーザ、排気量1900ccを超える自動車、ハイブリッド車など | 2022年6月17日 |
| 石油精製用の装置など | — | 2022年3月18日 |
| 奢侈品(ぜいたく品) | 酒類、宝飾品など | 2022年4月5日 |
| 軍事関連団体向け | ロシアの国防省や航空機メーカーなど。指定された団体向けは全品目 | 2022年3月18日 |
| 一部物品の輸入 | アルコール飲料、木材、上限価格を超える原油・石油製品、非工業用ダイヤモンド | 2022年4月19日 |
| 自称「共和国」との輸出入 | 自称「ドネツク人民共和国」「ルハンスク人民共和国」 | 輸入は2022年2月26日、輸出は3月18日 |
輸出禁止には例外があります。経済産業省の資料によれば、対象の貨物をロシアなどに輸出する申請は原則として承認されませんが、食品・医薬品、人道支援の目的のもの、消費者向けの通信機器などは承認されることがあります。
原油の上限価格
ロシア産の原油と石油製品には、上限価格を超える価格で取引されるものの輸入と、関連する海上輸送などのサービスを禁じる措置があります(2022年12月5日の閣議了解に基づく)。三省の発表によれば、原油の上限価格は2025年9月12日から、1バレル60ドルから47.6ドルに引き下げられました。2025年10月17日までに日本で船卸しされる原油などには、引き下げ前の上限価格を適用する経過措置が設けられています。
関税の最恵国待遇の撤回
外為法とは別に、関税でも措置がとられています。財務省によれば、2022年3月11日のG7首脳声明を踏まえ、同年4月21日から、ロシアを原産地とする物品にWTO協定税率を適用せず、基本税率(暫定税率があるときは暫定税率)を課しています。この措置は期限つきで延長が重ねられ、2026年3月27日の閣議決定で、2027年3月31日まで延長されました。
いまの対象の規模
直近の追加は、2025年9月12日です。三省の発表によれば、このときロシアの47団体・9個人、ウクライナの占領地域などに関わる5個人・1団体、ロシアとベラルーシ以外の国・地域の3団体が資産凍結等の対象に加わりました。経済産業省の資料は、この時点の対象を次のようにまとめています。
| 措置 | 対象(2025年9月12日時点) |
|---|---|
| ロシアの関係者などへの資産凍結等 | 計1,017個人・370団体、銀行17行 |
| ロシア・ベラルーシ以外の国の関係者への資産凍結等 | 計1個人・7団体、銀行1行 |
| ロシアの軍事関連団体などへの輸出禁止 | 561団体 |
| ベラルーシの特定団体への輸出禁止 | 27団体 |
| ロシア・ベラルーシ以外の国の特定団体への輸出禁止 | 56団体(中国31、トルコ10、アラブ首長国連邦4、ウズベキスタン3、カザフスタン2、キルギス2、アルメニア1、インド1、シリア1、タイ1) |
財務省の「経済制裁措置及び対象者リスト」は2026年9月10日現在で、ロシア関連の各一覧の最新版を2025年9月12日付としています。2026年に入ってからの追加は、この一覧では確認できません。
ロシアの外にいる企業へ
ロシアとベラルーシ以外の国の企業を対象にする措置は、2023年12月に始まりました。経済産業省の資料によれば、このときの対象はアラブ首長国連邦2団体、アルメニア1団体、シリア1団体、ウズベキスタン2団体の計6団体でした。2025年9月の追加は、「制裁迂回に関与した疑いのある」中国(香港を含む)6団体、トルコ2団体、アラブ首長国連邦1団体の9団体です。
経済産業省は、日本を含む主要国が協力して、ウクライナで見つかったロシア軍の兵器に使われていた部品などを調べ、品目リストにまとめたと説明しています。輸出者には、ロシア向けに禁じられた品目をロシア以外の国・地域に輸出する場合にも、このリストやG7の産業界向けガイダンスを確認するよう求めています。
日本で暮らす人や企業にとって
制裁の対象者への支払は許可制なので、銀行は送金のときに受取人や目的を確かめることがあります。ウクライナへの送金で銀行に何を聞かれうるかは、ウクライナ宛ての手紙・荷物・送金の条件の記事で、原産地による輸入の扱いはウクライナの食品を日本に輸入する手続きの記事で扱っています。
ある取引が許可を要するかどうかは、品目、相手先、支払の経路によって変わります。具体的な取引については、経済産業省の貿易管理課や財務省の外国為替室など、各措置の問い合わせ先に確認してください。
出典・参考資料
- ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について(令和4年3月1日。対象の6個人・3銀行、中央銀行以外は3月31日から、49団体への輸出禁止)
発行:外務省・財務省・経済産業省(経済産業省掲載) 確認日:2026-09-24 - ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について(令和4年2月26日。閣議了解の題名)
発行:財務省 確認日:2026-09-24 - ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について(令和4年3月3日。閣議了解の題名)
発行:財務省 確認日:2026-09-24 - クリミア自治共和国及びセヴァストーポリ特別市のロシア連邦への「併合」又はウクライナ東部の不安定化に直接関与していると判断される者に対する資産凍結等の措置について(平成26年8月5日)
発行:外務省・財務省・経済産業省(経済産業省掲載) 確認日:2026-09-24 - ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について(令和7年9月12日。追加の対象・上限価格の引下げ)
発行:外務省・財務省・経済産業省(経済産業省掲載) 確認日:2026-09-24 - ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について(ロシア等の特定団体への輸出等禁止措置)(2025年9月12日。全体像・対象の累計)
発行:経済産業省 確認日:2026-09-24 - 外国為替及び外国貿易法に基づく輸出貿易管理令等の改正について(令和5年12月15日。全体像と各措置の実施日・第三国団体・輸出承認の例外)
発行:経済産業省 確認日:2026-09-24 - 対ロシア等制裁関連(措置の一覧・制裁迂回対策)
発行:経済産業省 確認日:2026-09-24 - 経済制裁措置及び対象者リスト(令和8年9月10日現在)
発行:財務省 確認日:2026-09-24 - ウクライナ関連情報(支払規制・罰則・ロシア向け支払手段の輸出)
発行:財務省 確認日:2026-09-24 - ロシアに対する関税における最恵国待遇の撤回措置(令和8年3月31日)
発行:財務省 確認日:2026-09-24
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