ウクライナの暖房はいつ始まる?「8度・3日」のルールを知る
ウクライナの都市では、熱をつくる施設から温水を建物へ送る集中暖房が広く使われています。暖房の期間は自治体が決め、「3日間、1日の平均気温が8度以下」は遅くともそこまでに始める期限です。料金は規制委員会と自治体が決め、戒厳令のもとでは家庭向けの値上げが止められています。2026年9月時点の決まりを法令でたどります。
オリュカのひとこと
暖房が入る時期は、どうやって決まるのでしょう。最初の見出しで確かめられます。
ウクライナの多くの都市では、ボイラーの施設や熱電併給所でつくった熱を温水にして、管で集合住宅まで送り、暖房と給湯に使っています。法令ではこの仕組みを「集中熱供給」(централізоване теплопостачання)と呼びます。ここでは集中暖房と書きます。
集中暖房につながる家では、暖房のための熱が届くのは「暖房期間」のあいだです。毎年秋になると、暖房はいつ入るのかが話題になります。期間の始まりと終わりを決めるのは国ではなく地方自治体の機関で、「3日間、1日の平均気温が8度以下になったとき」が、遅くともそこまでに始める期限です。その決まりは、2019年8月21日の内閣決定第830号が定めた「熱エネルギーの供給のサービスの規則」にあります。
暖房の期間の決まりに続いて、家庭向けの料金が戦争のもとでどう扱われているか、料金を誰が決めるのかを、2026年9月時点の法令で見ていきます。
「8度以下が3日」は、遅くともの期限
規則の第8項は、暖房のための熱は「暖房期間」に供給すると定めています。期間の始まりと終わりを決めるのは地方自治体の機関で、気候の条件を踏まえ、建築の規範、熱設備の技術的な運用の規則、衛生の規範に従って決めます。
そのうえで第8項は、暖房期間は「3日間、1日の平均気温が8度以下になったとき、遅くともその時点で」始まり、「3日間、1日の平均気温が8度を超えたとき、早くともその時点で」終わると書いています。8度は暖房を始める合図というより、それまでに始めなければならない期限です。自治体は、それより早く始めることもできます。
政府の担当の省(当時の共同体・領土発展省)は2025年10月13日、政府が暖房期間を11月1日から3月31日までと決めたという情報は事実ではない、と発表しました。同省によれば、2025年10月8日の内閣決定第1267号が11月1日〜3月31日と定めたのは、熱をつくる事業者に決まった価格でガスを供給する期間で、暖房期間そのものではありません。この発表の時点で、15の州とキーウ市では、自治体の判断で幼稚園・学校・病院などの暖房がすでに始まっていました。
戒厳令のもとの値上げの禁止
2022年7月29日の法律第2479-IX号(戒厳令のもとでの天然ガス市場と熱供給の規制の特例について)の第1条は、戒厳令のあいだと、戒厳令が終わった月から6か月のあいだ、家庭向けの熱エネルギー(生産・輸送・供給)、熱の供給のサービス、給湯の料金を上げることを禁じています。家庭向けのガスの配送料金も上げられず、家庭のガスの価格は2022年2月24日の時点の価格を超えてはならないとも定めています。据え置きで生じる料金の差額の扱いも、同じ法律の第2条・第3条が定めています。
最高会議の法令データベースでは、この法律は2026年9月時点で「効力あり」と表示されています(最新の版は2025年8月28日)。戒厳令は、2026年7月13日の大統領令第596/2026号で、8月2日5時30分から90日間延長され、7月14日の法律第4928-IX号で承認されました。条文のとおりなら、2026年9月時点で家庭向けの熱の料金の据え置きは続いています。
料金は誰が決めるのか
熱供給法(2005年、第2633-IV号)の第20条は、熱の料金は生産・輸送・供給にかかる、経済的に根拠のある費用をすべてまかなうものでなければならないと定め、市場で独占的な地位にある事業者の料金は規制される料金だとしています。料金は、国家エネルギー・公益事業規制委員会(НКРЕКП)と地方自治体の機関が、法律が決めたそれぞれの権限の範囲で決めます。
同じ法律の第13条は、地方自治体の機関がすべての利用者向けの熱の料金を決めると定めつつ、熱電併給所・火力発電所・原子力発電所・コージェネレーション設備でつくる熱の料金を、その対象から外しています。
熱の多くはガスでつくられます。IEAの2024年の報告によれば、熱の生産のおよそ70%はガスを燃料とし、熱の約3分の1は熱電併給所でつくられています。政府は熱をつくる事業者に決まった価格でガスを供給させていて、担当の省によれば、2025年11月〜2026年3月の家庭向けの熱をつくる分は、1,000立方メートルあたり7,420フリヴニャ(付加価値税込み)でした。家庭のガスはガスの記事、電気で暖房する家の冬の料金は家庭の電気料金の記事にあります。
オリュカ
暖房の期間や料金は、それぞれ誰が決めるのかな。
タブリ
決まりごとの根拠と決める主体が、この見出しの下の表に並んでいるよ。
スウネ
この冬の暖房の開始日を扱っていないことは、記事の終わりの「この記事で確認できていないこと」にあるよ。
決まりと、決める主体
| 決まり | 根拠 | 決める主体 |
|---|---|---|
| 暖房期間の始まりと終わり | 内閣決定第830号の規則第8項 | 地方自治体の機関 |
| 熱の料金(熱電併給所・発電所・コージェネレーション設備の熱を除く) | 熱供給法第13条 | 地方自治体の機関 |
| 熱の生産・輸送・供給の料金全般 | 熱供給法第20条 | 国家エネルギー・公益事業規制委員会と地方自治体の機関(それぞれの権限の範囲) |
| 家庭向けの料金の値上げの禁止 | 2022年の法律第2479-IX号第1条 | 法律で一律に定める |
2026年7月の法改正と、この冬の準備
2026年7月15日の法律第4937-IX号は、熱供給法などを改めました。最高会議の発表によれば、集中暖房を国の利益にかかわる分野として支えること、集中暖房につながる建物に、建物ごとの熱交換の設備(個別熱供給点)を置くことを義務づける仕組み、料金の決め方の見直しなどが柱です。改正後の熱供給法第13条は、個別熱供給点を置く地域の計画を承認することを、地方自治体の機関の役割に加えています。
復興・インフラ・運輸省は2026年9月7日、2026/27年の暖房の季節に向けて、計画した約14万4千棟の住宅のうち79.2%にあたる11万4千棟あまりと、ボイラーの施設1万4,194か所(計画の約83%)の準備が済んだと発表しました。
熱電併給所への攻撃
ロシアは全面侵攻のあと、熱電併給所やボイラーの施設を繰り返し攻撃しています。IEAの2024年の報告はキーウ経済大学の集計として、2022年2月から2024年5月までに大規模な熱電併給所18か所が損傷・破壊されたと書き、2025〜26年の冬の攻撃と止まった暖房の規模は電力網への攻撃の記事にあります。
オリュカのひとこと
集中暖房を使う家は、どれくらいあるのでしょう。この見出しで確かめられます。
どれだけの家が集中暖房を使っているか
「3分の1」と「6割」は、何を数えているか
集中暖房を使う家の割合は、資料によって違います。
- 国際エネルギー機関(IEA)の2024年9月の報告は、国家統計局の数字として、2022年に集中暖房の網につながっていた世帯はウクライナの世帯の3分の1あまりだったと書いています。
- ドイツ国際協力公社(GIZ)の資料は、2021年に約250の事業者が約2,600万人、人口の約6割に熱を送っていたとしています。
- ウクライナの研究プロジェクト「グリーンディール・ウクライナ」は、欧州委員会の数字として、2021年に集中暖房のある世帯は3割を超え、EUの平均は12%だとしています。
世帯を数えるか、人を数えるかで数字は変わります。集中暖房は大きな都市に多く、地域の差も大きい仕組みです。グリーンディール・ウクライナの図は、ザカルパッチャ州を0%、イヴァーノ=フランキーウシク州を10%としています。キーウの割合は電力網への攻撃の記事にあります。
出典と記事の記録
出典・参考資料
- Постанова КМУ № 830「Про затвердження Правил надання послуги з постачання теплової енергії…」2019年8月21日。規則第8項の暖房期間
発行:Кабінет Міністрів України 確認日:2026-09-27 - Початок та закінчення опалювального періоду規則第8項の引用
発行:Урядовий контактний центр 確認日:2026-09-27 - Закон України «Про теплопостачання» № 2633-IV第13条・第20条、改正履歴
発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-27 - Закон України № 2479-IX «Про особливості регулювання відносин на ринку природного газу та у сфері теплопостачання під час дії воєнного стану…»2022年7月29日。第1条、状態と版
発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-27 - Указ Президента України № 596/2026「Про продовження строку дії воєнного стану в Україні」2026年7月13日。8月2日5時30分から90日
発行:Президент України(最高会議の法令データベース) 確認日:2026-09-27 - Закон України № 4928-IX2026年7月14日。大統領令第596/2026号の承認
発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-27 - Закон України № 4937-IX «Про внесення змін до деяких законів України щодо підтримки розвитку ефективного та сталого централізованого теплопостачання»2026年7月15日
発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-27 - Підтримка розвитку ефективного та сталого централізованого теплопостачання: Верховна Рада України ухвалила Закон2026年7月15日。改正の柱
発行:Апарат Верховної Ради України 確認日:2026-09-27 - Опалювальний сезон в Україні розпочнеться у плановому режимі2025年10月13日。暖房期間の日付の否定、内閣決定第1267号、ガスの価格7,420フリヴニャ、15州とキーウ市
発行:Міністерство розвитку громад та територій України(現在は復興・インフラ・運輸省のサイトに掲載) 確認日:2026-09-27 - Майже 80% житлових будинків готові до опалювального сезону 2026/272026年9月7日
発行:Міністерство з відновлення, інфраструктури та транспорту України 確認日:2026-09-27 - Ukraine's Energy Security and the Coming Winter2024年9月。集中暖房の世帯の割合、ガスと熱電併給所の割合、熱電併給所の被害
発行:International Energy Agency 確認日:2026-09-27 - Майбутнє міських систем теплопостачанняReWarm のファクトシート。2021年の約250の事業者と約2,600万人
発行:Deutsche Gesellschaft für Internationale Zusammenarbeit (GIZ) 確認日:2026-09-27 - Household with District Heating as a Share of Total Households (%) - 2021欧州委員会の数字の引用、州別の値
発行:Green Deal Ukraïna 確認日:2026-09-27
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