本文へ移動

ウクライナの人・文化・社会・未来を、日本と世界につなぐ

Ukrainavi Ukrainavi

社会を知る/解説

10年の禁輸が切れても、丸太は国外に出ない。ウクライナの森林と木材

ウクライナは2015年、未加工の木材の輸出を10年間禁じました。松以外の期限が切れた2025年11月からは、輸出の許可制と「ゼロの枠」で同じ状態を続けています。国土の15.9%を占める森林、EUとの仲裁で「違反」とされた経緯、158の国営林業企業の統合までを、法令と公的機関の発表で見ます。

イメージ画像

オリュカのひとこと

丸太の輸出を止めた期限が切れても、木材は国外に出ないようです。理由を最初の見出しで確かめられます。

ウクライナは2015年から、皮をむいただけの丸太のような「未加工の木材」を国外へ売ることを法律で禁じてきました。この禁止は「10年間」と期限を切ったもので、松以外の木については2025年11月1日で期間が終わりました。そこで政府は、輸出の許可制と「ゼロの枠」という別の仕組みで、同じ状態を2026年末まで続けています。森林の広さ、2015年の法律の中身、欧州連合(EU)との仲裁、国の森林企業の統合まで、2026年9月時点の法令と公的機関の発表からたどります。

国土の森林帯・森林ステップ・ステップの分かれ方は川と気候と黒土の記事に、森に残された保護区は保護区の記事にまとめています。

国土の15.9%が森林

内閣が2021年12月29日の命令第1777-р号で承認した「2035年までの国家森林管理戦略」は、国家森林台帳の数字として、森林として登録された土地を1,040万ヘクタール、そのうち実際に木に覆われた土地を960万ヘクタールとしています。国土に占める森林の割合(森林率)は15.9%です。

同じ戦略によれば、森は国内で大きく偏っています。森林率が最も低いザポリッジャ州は3.7%、最も高いザカルパッチャ州は51.4%です。戦略は、ウクライナの森林の半分は人が植えた森だとも書いています。

森の持ち主は、森林法典(1994年制定、2006年に全面改正)第7条で、国・自治体・私人のいずれもありうるとされています。ただし同法典第8条は、自治体や私人のものと決まっている森以外の「すべての森」を国のものとしています。

  1. オリュカ

    松の木とほかの木で、禁止が始まった日は同じだったのでしょうか。

  2. タブリ

    この見出しの下の表に、木の種類ごとに禁止の始まりが並んでいるよ。

  3. スウネ

    松の禁止がいつまで続くかは、この表にはっきり書かれていないようだよ。

2015年の法律は、松以外を先に止めた

木材の輸出にはもともと、2005年9月8日の法律第2860-IV号「木材の販売と輸出に関わる事業の国による規制の特例について」がかかっていました。この法律の第2条は、アカシア、ナシ、クルミ、クリ、セイヨウイチイ、サクランボなど「価値が高く希少な」10種の木材と挽いた板の輸出を、期限を付けずに禁じています。

これに2015年4月9日の法律第325-VIII号が第2-1条を加え、関税分類4403(未加工の木材)の輸出を「一時的に、10年間」禁じました。始まりの日は木の種類で分かれています。

対象禁止の始まり法律上の10年の期間
松以外の木の未加工の木材2015年11月1日2025年11月1日に終了
松の未加工の木材2017年1月1日2026年末まで(計算)
出典:法律第2860-IV号第2-1条(2015年の法律第325-VIII号で追加。2026年9月時点の条文)。10年の期間の終わりは条文の開始日から計算したもの。

2018年9月6日の法律第2531-VIII号(2019年1月1日施行)は、この禁止を支える規定を加えました。一つは刑法の第201-1条で、輸出が禁じられた木材を税関の管理を逃れて国外へ運ぶことを、3年から5年の自由刑の対象にしました。もう一つは第2860-IV号の第4条で、国内で使う未加工の木材を年2,500万立方メートルまでに抑えると定めました。条文は根拠として、関税及び貿易に関する一般協定(GATT)第20条(g)を名指ししています。有限の天然資源を守るための措置であれば、国内の消費も同じように制限していることを条件に、輸出の制限が例外として認められうる、という規定です。

オリュカのひとこと

EUとの仲裁で、何が違反だと判断されたのでしょう。この見出しで確かめられます。

EUとの仲裁は「違反」と判断した

EUは、この禁止が2014年に署名されたウクライナとの連合協定に反するとして、2019年1月16日に協定に基づく協議を求めました。協議でまとまらず、仲裁パネルが2020年1月28日に設けられています。欧州委員会によれば、EUが二国間の貿易協定の仲裁の仕組みを使ったのはこれが初めてでした。

パネルは2020年12月11日に最終報告を出しました。欧州委員会の説明では、判断は次のとおりです。

  • 2015年に始まった、すべての未加工の木材の輸出禁止は、輸出の禁止を認めない連合協定第35条に反し、協定にもGATTにも正当化できる根拠が見つからない。
  • 2005年に始まった、10種に限った輸出禁止は、植物の生命や健康を守るための例外(協定第36条とGATT第20条(b))として一部は正当化できる。

欧州委員会は、ウクライナは2015年の禁止を速やかに取りやめなければならない、と発表しました。一方、ウクライナの法令データベースで第2860-IV号の改正の履歴を見ると、2020年12月の報告のあとに第2-1条の禁止を取り消したり縮めたりした改正はなく、条文はそのまま10年の期限まで残りました。

期限が切れたあとは「ゼロの枠」で

2025年11月1日に松以外の木の10年が終わるのを前に、内閣は2025年10月31日の決定第1399号で、その年の「輸出に許可が要る品目と数量枠」の一覧(2024年12月24日の決定第1481号)を改め、薪と、松以外の未加工の木材の輸出枠を0立方メートルにしました。許可を得なければ輸出できず、許可できる量がゼロなので、実際には輸出できない状態が続きます。

2026年分は、2025年12月31日の内閣決定第1795号が同じ形で定めています。

品目(関税分類)2026年の輸出枠
針葉樹の薪(4401 11 00 00)0立方メートル
未加工の木材、松を除く(4403)0立方メートル
出典:内閣決定第1795号(2025年12月31日)付属書1。2026年1月1日施行、2026年5月3日の版で確認。枠の品目からは松が除かれている(松は法律第2860-IV号第2-1条の禁止の期間が続いている)。

国家森林資源庁の東部地域の管理局は2026年1月の発表で、この決定の理由を三つ挙げています。戦闘と地雷のために実際に切り出せる木材が減ったこと、国内の木材加工の工場が丸太の不足で止まりがちなこと、村の多くでは冬の暖房に薪しかないことです。

法律そのものを延ばす案も議会に出ています。議員提出の法案第13223号(2025年4月29日登録)は、第2860-IV号の禁止の期間を延ばすものです。議会の欧州統合委員会は2025年7月の意見で、輸出の禁止は連合協定第35条に合わないとしつつ、戒厳令の間は安全保障上の例外(協定第143条・第472条、GATT第21条)として使える可能性があり、そのためにはEU側との協議と、戒厳令が終わったあとの期間についての説明が要る、と書いています。主管の経済発展委員会は2026年2月23日に第一読会での採択を勧めましたが、議会のデータベースでは2026年9月時点で「審議待ち」のままです。

国の森林企業を一つにまとめる

国有林の経営も、この間に形を変えました。内閣は2022年9月7日の決定第1003号で、国家森林資源庁が所管する各地の国営林業企業を、新しくつくる国営企業「ウクライナの森」(Ліси України)に統合することに同意しました。同庁は2022年10月26日の命令第804号でこの企業を設けています。当時の同庁長官は、統合されるのは158の林業企業で、州ごとにあった24の地域の管理局は九つにまとめる、と説明していました。

決定第1003号は、この企業を後に国が株式の100%を持つ株式会社に改めるとしています。前述の森林戦略も、この会社の民営化を法律で禁じることを方針に掲げています。同社の説明によれば、同社が管理する国有林の土地は約660万ヘクタールで、国の予算からの資金は受けず、自らの事業で運営しています。

植物油の原料の種にかけている輸出関税も、原料のまま出すより国内で加工させる方向の政策です(ひまわり油の記事)。木材は関税ではなく禁止と枠で、EUとの間にはこの点で2020年の判断が残っています。EUとの貿易の全体はEUとの関税の記事にあります。

出典と記事の記録出典 16件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Закон України «Про особливості державного регулювання діяльності суб’єктів підприємницької діяльності, пов’язаної з реалізацією та експортом лісоматеріалів»2005年9月8日 第2860-IV号。第1条の10種、第2条、第2-1条、第3条、第4条。2023年12月31日の版
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  2. Закон України від 09.04.2015 № 325-VIII第2-1条の追加、松以外は2015年11月1日・松は2017年1月1日から10年
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  3. Закон України від 06.09.2018 № 2531-VIII刑法第201-1条、第2860-IV号第4条の年2,500万立方メートル、2019年1月1日施行
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  4. Постанова КМУ від 24.12.2024 № 14812025年の許可・枠の一覧。2025年10月31日の決定第1399号による改正、薪と松以外の未加工の木材の枠0
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  5. Постанова КМУ від 31.12.2025 № 17952026年の許可・枠の一覧。付属書1の4401 11 00 00と4403の枠0、2026年5月3日の版
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  6. Уряд продовжив заборону на експорт дров і необробленої деревини до кінця 2026 року2026年1月19日。決定の理由三つ
    発行:国家森林資源庁 東部地域森林・狩猟管理局 確認日:2026-09-24
  7. Лісовий кодекс України1994年、2006年の全面改正。第7条
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  8. Розпорядження КМУ від 29.12.2021 № 1777-р «Державна стратегія управління лісами України до 2035 року»森林の面積、森林率15.9%、州の森林率、民営化禁止の方針、2023年の追記
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  9. Ukraine wood export ban2019年1月16日の協議要請、2020年1月28日のパネル設置、2020年12月11日の最終報告
    発行:European Commission, DG Trade 確認日:2026-09-24
  10. Ukraine wood export ban found illegal in independent panel ruling2020年12月12日
    発行:European Commission, DG Trade 確認日:2026-09-24
  11. The history of the EU-Ukraine dispute on wood export ban - Memo2020年12月12日。第35条、第36条とGATT第20条(b)、初めての仲裁
    発行:European Commission, DG Trade 確認日:2026-09-24
  12. Законопроєкт № 132232025年4月29日登録、欧州統合委員会の意見2025年7月14日、主管委員会の結論2026年2月23日、状態
    発行:ウクライナ最高会議 確認日:2026-09-24
  13. Законопроєкт № 13227 «Про ринок деревини»主管委員会が2025年9月5日に否決を勧告
    発行:ウクライナ最高会議 確認日:2026-09-24
  14. Постанова КМУ від 07.09.2022 № 1003 «Деякі питання реформування управління лісової галузі»統合と株式会社化
    発行:ウクライナ最高会議 法令データベース 確認日:2026-09-24
  15. About SFE «Forests of Ukraine»約660万ヘクタール、予算の資金を受けない、命令第804号
    発行:国営企業「ウクライナの森」 確認日:2026-09-24
  16. Україна об'єднає усі 158 лісгоспів у ДП "Ліси України" – голова Держлісагентства2022年9月8日
    発行:Interfax-Ukraine 確認日:2026-09-24

記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。