夫の母は свекруха、妻の母は теща。ウクライナ語の親族の呼び名
ウクライナ語では、夫の母と妻の母、夫の兄弟と妻の兄弟を別の語で呼びます。結婚でつながる親族、おじ・おば・いとこ・甥と姪の呼び名、子どもの洗礼を通じて親と代父母が呼び合う кум と кума の意味を、ウクライナ科学アカデミーの辞書と語源辞典の語釈でまとめました。
オリュカのひとこと
夫の母と妻の母を、同じ言葉で呼ばないとしたら。呼び分け方を最初の見出しで見比べられます。
日本語では、夫の母も妻の母も「義理の母」「義母」と言えます。ウクライナ語では、夫の母は свекру́ха、妻の母は те́ща と、別の語で呼びます。父も同じで、夫の父は све́кор、妻の父は тесть です。
結婚でつながる親族、おじ・おば・いとこ・甥・姪、そして日本語にぴったり当たる語のない кум(クム)と кума́(クマー)の意味を、ウクライナ国立科学アカデミーの辞書と語源辞典の語釈でまとめます。確認は2026年9月時点です。
語釈は、アカデミーの『ウクライナ語辞典』20巻本(オンライン版は2026年9月時点で А〜Р の語まで)と、それより前の11巻本(1970〜1980年)によります。強勢(アクセント)の位置は、ウクライナ語言語情報基金の「Словники України online」の表記に従いました。
結婚でつながる親族:夫の側と妻の側
まず、配偶者の家族の呼び名です。夫の家族を妻から見た呼び名と、妻の家族を夫から見た呼び名が、それぞれ別にあります。
| 語 | 辞書の語釈 | 日本語の目安 |
|---|---|---|
| све́кор | 夫の父。複数の све́кри は夫の父と母 | 夫の父(しゅうと) |
| свекру́ха | 夫の母 | 夫の母(しゅうとめ) |
| ді́вер | 夫の兄弟 | 夫の兄・弟 |
| зови́ця | 夫の姉妹 | 夫の姉・妹 |
| ятрі́вка | 夫の兄弟の妻 | 夫の兄弟の妻(相嫁) |
| тесть | 妻の父 | 妻の父 |
| те́ща | 妻の母 | 妻の母 |
| шу́рин | 妻の兄弟 | 妻の兄・弟 |
| своя́к | 妻の兄弟。妻の姉妹の夫 | 妻の兄弟、妻の姉妹の夫 |
11巻本は、шу́рин と своя́к のどちらにも「妻の兄弟」という語釈を立てています。своя́к にはさらに「妻の姉妹の夫」の意味があり、方言では「親戚」一般を指すこともあるとしています。辞書の上でも、語と関係が一対一に決まっているわけではありません。
ятрі́вка は、兄弟と結婚した女性どうしの関係です。11巻本は、劇作家カルペンコ=カルィイの戯曲から「私たちは実の兄弟の妻どうしじゃないか」という台詞を用例に引いています。
オリュカ
婿を指す言葉は、娘の夫だけを指すのでしょうか。
スウネ
この見出しの下の表を見ると、範囲がもう少し広いようだよ。
タブリ
日本語の「嫁」「婿」との違いは、次の段落で説明されているよ。
両方の家族から見た呼び名
| 語 | 辞書の語釈 |
|---|---|
| зять | 娘の夫。姉妹の夫 |
| неві́стка | 結婚した女性を、夫の親族(父・母・兄弟・姉妹、兄弟の妻、姉妹の夫)から見た呼び名 |
| братова́ | 兄弟の妻 |
| сват | 夫婦の一方の父や親族を、もう一方の親や親族から見た呼び名。複数の свати́ は夫婦の一方の両親 |
| сва́ха | 夫婦の一方の母や親族の女性を、もう一方の親や親族から見た呼び名 |
日本語の「嫁」「婿」と比べると、範囲の違いが見えてきます。зять は「娘の夫」のほかに「姉妹の夫」にも使います。неві́стка は、夫の両親から見た息子の妻だけでなく、夫の兄弟姉妹から見た兄弟の妻でもあります。
сват と сва́ха には、もう一つ別の意味があります。11巻本の最初の意味は、結婚を望む人に頼まれて相手の家に縁談を申し込みに行く人、婚礼の世話役です。сва́ха にも、婚礼の作法をよく知って取り仕切る女性、縁談をまとめる女性という意味が立っています。
語の成り立ちについて、アカデミーの言語学研究所の『ウクライナ語語源辞典』は、зять がインド・ヨーロッパ語の「生む」「知る」にかかわる語根にさかのぼり、もとは兄弟や息子のようにもとからいる家族ではなく、一族に迎え入れられた男を指したと説明しています。同じ辞典は、方言の記録には све́кор を妻の父の意味で使う例もあることを載せています。
オリュカ
おじを指す言葉は、父方でも母方でも同じなのでしょうか。
スウネ
父方か母方かの区別は、この見出しの下では、日本語ほど細かくないようだよ。
ヨリクネ
使われなくなった古い呼び方も、この節の後半に載っているよ。
おじ、おば、いとこ、甥と姪
| 語 | 辞書の語釈 |
|---|---|
| дя́дько | 父または母の兄弟。おばの夫 |
| ті́тка | 父または母の姉妹。おじの妻(дя́дина と同じ意味) |
| дя́дина | おじの妻 |
| двою́рідний брат/двою́рідна сестра́ | いとこ(男/女)。двою́рідний は「父や母の兄弟姉妹を通じて親族である」 |
| трою́рідний брат/трою́рідна сестра́ | 祖父や祖母を通じて三代目でつながる親族(日本語の「はとこ」) |
| племі́нник、не́бі́ж | 兄弟姉妹の息子(いとこ、またいとこの息子も) |
| племі́нниця、небо́га | 兄弟姉妹の娘(いとこ、またいとこの娘も) |
дя́дько は、父方か母方か、親より年上か年下かを区別しません。日本語では「伯父」「叔父」と書き分けますが、ウクライナ語の語はどちらも дя́дько です。反対に、日本語の「いとこ」は男女を区別しませんが、ウクライナ語では двою́рідний брат(いとこの男)と двою́рідна сестра́(いとこの女)のように、兄弟・姉妹の語に形容詞をつけて言います。трою́рідний も同じ形で、11巻本には трою́рідна ті́тка(親のまたいとこにあたる女性)のような組み合わせも載っています。
甥と姪には、племі́нник/племі́нниця と не́бі́ж/небо́га の二組があり、20巻本はどちらも同じ意味で説明しています。昔はもっと細かく分けていました。百科事典『Українська мова. Енциклопедія』(2004年)は、使われなくなった親族名の例として、синовець(兄弟の息子)、сестринець(姉妹の息子)、нетій(甥)などを挙げています。
親族でない人にも使う
いくつかの語は、親族でない人にも使います。20巻本によれば、дя́дько は話し言葉で大人の男性一般を指し、年上の男性への呼びかけにも使います。11巻本は、ті́тка にも話し言葉で「大人の女性一般」の意味を立てています。не́бі́ж と небо́га には、年下の相手への親しみを込めた呼びかけの意味があります。
呼びかけるときは、語の形が変わります。「Словники України online」の変化表では、дя́дько は дя́дьку、ті́тка は ті́тко、свекру́ха は свекру́хо、кума́ は ку́мо という形になります。呼びかけの形の仕組みはウクライナの人の名前──ローマ字の綴り、父称、呼びかけの形で扱っています。
オリュカのひとこと
кум と кума は、どんなきっかけで結ばれる間柄なのでしょう。この節の語釈で確かめましょう。
кум と кума:子どもの洗礼でつながる間柄
кум と кума́ は、子どもの洗礼を通じてできる間柄の呼び名です。20巻本の語釈を並べると、次のようになります。
- кум:子の洗礼の代父(хреще́ний ба́тько)を、その子の親や代母から見た呼び名。また、子の父を、代父・代母から見た呼び名
- кума́:子の洗礼の代母(хреще́на ма́ти)を、その子の親や代父から見た呼び名。また、子の母を、代父・代母から見た呼び名
- куми́(複数):кум と кума́ の二人をまとめて
つまり кум・кума́ は、子どもと代父母の関係ではなく、子どもの親と代父母とが互いを呼び合う関係です。子どもは代父母から見て хреще́ник(男の子)、хреще́ниця(女の子)と呼ばれます(11巻本第11巻)。日本語の「名付け親」「代父・代母」は、子どもから見た言い方で、親どうしの関係を一語で言う語はありません。
カナダ・アルバータ大学ウクライナ研究所の『Internet Encyclopedia of Ukraine』(IEU)の「Folk customs connected with birth」(誕生にかかわる民間の習俗)の項は、子どもの洗礼に кум と кума́ が招かれたと書いています。
語の由来について、『ウクライナ語語源辞典』は、кум はスラヴ祖語の kumъ にさかのぼり、これはバルカン半島の民衆ラテン語で「代母」を意味した語(「共に」を表す接頭辞と「母」mater からなる語)が短くなった形 kuma から派生したものだとしています。同じ辞典は、方言の語 кумство を「кумівство(кум の間柄)、精神的な親族」と説明しています。
кум と кума́ は、親族の呼び名にとどまりません。20巻本によれば、кум は話し言葉で友人への呼びかけにもなり、昔話や寓話ではオオカミが кум、キツネが кума́ と呼ばれます。オオカミとウサギが кум の間柄になる昔話は、400編のうちキツネが55編。1916年に一冊になった動物の昔話で紹介しています。
辞書を引くときに
親族名は、辞書によって、また地域によって、指す範囲が少しずつ違います。この記事の語釈は、アカデミーの辞書が標準語として示しているものです。親族名についてはまとまった研究もあり、言語学者アンドリー・ブリャチョクは1961年に『ウクライナ語における血縁と姻戚の名称』を出しています(百科事典の人物の項による)。
ある人が相手をどう呼ぶかは、その家族や地域の習慣にもよります。語の意味は辞書で確かめられますが、実際の呼び方は本人たちに聞くのがいちばん確かです。辞書の見出しの引き方は、лютого と打つと「ルター派」が出る。ウクライナ語の辞書の引き方にまとめています。
出典と記事の記録
出典・参考資料
- Словник української мови у 20 томах, onlineзять、кум 1、кума、невістка、двоюрідний、дядько、дядина、небіж、небога、племінник、племінниця、дівер、зовиця、братова の各項
発行:Український мовно-інформаційний фонд НАН України 確認日:2026-09-24 - Словник української мови в 11 томах, т. 91978。свекор〔свекри〕、свекруха、свояк、сват 1、сваха の各項
発行:АН УРСР, Інститут мовознавства ім. О. О. Потебні(Наукова думка) 確認日:2026-09-24 - Словник української мови в 11 томах, т. 101979。тесть、теща、тітка、троюрідний の各項
発行:АН УРСР, Інститут мовознавства ім. О. О. Потебні(Наукова думка) 確認日:2026-09-24 - Словник української мови в 11 томах, т. 111980。шурин、ятрівка、хрещеник、хрещениця の各項
発行:АН УРСР, Інститут мовознавства ім. О. О. Потебні(Наукова думка) 確認日:2026-09-24 - Словники України onlineсвекор、свекруха、тесть、теща、зять、невістка、кума、сват、сваха、дядько、тітка、дівер、зовиця、шурин、свояк、ятрівка、братова、небога、племінник、племінниця、хрещеник の強勢と変化表〔呼格を含む〕
発行:Український мовно-інформаційний фонд НАН України 確認日:2026-09-24 - Етимологічний словник української мови, т. 21985。зять の項
発行:Інститут мовознавства ім. О. О. Потебні АН УРСР(Наукова думка) 確認日:2026-09-24 - Етимологічний словник української мови, т. 31989。кум, кума の項〔кумство «кумівство, духовна рідня»〕
発行:Інститут мовознавства ім. О. О. Потебні АН УРСР(Наукова думка) 確認日:2026-09-24 - Етимологічний словник української мови, т. 52006。свекор の項〔方言の тесть の意味〕
発行:Інститут мовознавства ім. О. О. Потебні НАН України(Наукова думка) 確認日:2026-09-24 - Українська мова. Енциклопедія, 2-ге вид.2004。「Застарілі слова」:синовець、сестринець、нетій ほか。「Бурячок Андрій Андрійович」:『Назви спорідненості і свояцтва в українській мові』〔1961〕
発行:НАН України, Інститут мовознавства ім. О. О. Потебні, Інститут української мови 確認日:2026-09-24 - Folk customs connected with birth洗礼に kum と kuma が招かれたこと。1984年の紙の事典が初出、P. Odarchenko
発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(Canadian Institute of Ukrainian Studies) 確認日:2026-09-24
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