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社会を知る/解説

公共放送が抜けたあとも国費で続く、ウクライナの「統一ニュース」

ロシアによるウクライナへの全面侵攻の翌月、ウクライナの国家安全保障国防会議は、全国のニュース系テレビ局を一つの24時間番組「統一ニュース」に集めると決めました。2024年に公共放送が抜けたあとも、番組は国の予算で続いています。欧州委員会は2025年の報告で、遅くとも戒厳令が止まるときまでにこの番組を見直すよう求めました。

オリュカのひとこと

全国の局を一つの番組に集めた決定には、参加する局や費用まで書かれていたのでしょうか。決定の中身から確かめましょう。

ウクライナで2022年から続くテレビのニュース番組に、「統一ニュース #UAразом(Єдині новини #UАразом)」があります。複数の放送局が一つの番組を分担して、24時間流し続ける形式です。英語では「テレソン(telethon)」「TVマラソン」とも呼ばれます。

決定は2022年3月18日

番組の根拠は、国家安全保障国防会議(РНБО)が2022年3月18日に出した決定「戒厳令下での統一的な情報政策の実施について」です。翌3月19日、ゼレンスキー大統領が大統領令第152号でこの決定を発効させました。大統領令は根拠に憲法第107条を挙げています。

決定はまず理由を述べています。ロシア連邦による直接の軍事侵略、侵略国による偽情報の積極的な拡散、事実の歪曲、ロシアの武力侵略の正当化や否定。そのうえで「戦争についての真実を伝える」こと、戒厳令のあいだ統一的な情報政策を保つことを目的に掲げました。

中身は2項目だけです。

  • 戒厳令下では、統一的な情報政策の実施が国家安全保障の優先課題であるとする。それは、番組の大半が報道・報道解説で構成される全国のテレビ局をすべて、戦略的コミュニケーションの統一情報プラットフォームである24時間の情報マラソン「統一ニュース #UAразом」にまとめることで実現する
  • テレビ・ラジオ放送国家評議会(放送の規制機関)に、この実施のための措置をとるよう勧告する

決定には、どの局が参加するか、費用を誰が出すか、編集を誰が決めるかは書かれていません。いつまで続けるかも、「戒厳令下で」という以外には定められていません。最高会議の法令データベースは、2026年9月23日時点でこの決定と大統領令をどちらも「効力あり」と表示しています。

国の予算と、公共放送の離脱

その後の運営の変化は、欧州委員会がウクライナのEU加盟準備を評価する年次報告から読み取れます。

  • 2023年:政府が公的資金をこの番組に投じた(2024年の報告)
  • 2024年5月:番組の形が一部改められ、公共放送ススピーリネ(Суспільне)がより独立して動けるようになった。ススピーリネは第1チャンネルで自前の24時間放送を始めた(2024年の報告)
  • 2024年10月:ススピーリネが番組からの離脱を正式に発表し、独立したニュースチャンネルを立ち上げた。以後、番組は残りの放送局を集めて続き、国の資金も受け続けている(2025年の報告)
  • 2025年9月16日:議会チャンネル「ラーダ」が、最高会議の本会議の生中継を再開した(2025年の報告)

ススピーリネは2017年から独立した公共放送として運営されており、2023年の報告は、ラジオ・テレビの中で最も信頼されている放送局だと書いています。その公共放送が抜けたあとも、番組は国費で続いています。

オリュカのひとこと

欧州委員会は、いつまでに何を見直すよう求めたのでしょう。年ごとの報告の書き方を比べてみましょう。

欧州委員会が求めてきた見直し

欧州委員会の評価は、戦時下で情報を守る必要を認めながら、戦後の姿を問う形をとっています。

2023年の報告は、番組そのものには触れていませんが、広告市場の崩壊によってとくにテレビでメディアの集中が進み、多様な報道に触れる機会が減ったと指摘しました。そのうえで、戦後に向けて、多元的で独立したテレビの仕組みをどう整えるかを考えるよう求めています。

2024年の報告は、国費を投じたこの番組が「ウクライナの人々のあいだで自由な意見交換を可能にする最善の場なのか、見直すべきだ」と書きました。議会チャンネルについては、野党の議員の活動も含めて、議会の仕事を伝えることを主な目的にすべきだとしています。

2025年の報告は、さらに踏み込みました。国費によるこの番組の見直しは、「遅くとも戒厳令が停止されるときまでに」行うべきだとし、その理由として「公衆の信頼と到達範囲が落ち続けていること」を挙げています。2024年の報告によれば、ウクライナ政府は2024年6月26日に、戒厳令の終了後に多元的で透明、独立したメディア空間を取り戻すための工程表を採択しています。2025年の報告は、その実施を続けるよう求めています。

戦時の措置として始まったもの

「統一ニュース」は、ロシアによるウクライナへの全面侵攻の翌月に、偽情報に対抗する戦時の措置として制度になりました。決定の文面は短く、終わり方を定めていません。公共放送が自前の放送に戻り、議会の中継が再開されたいま、残っているのは国の予算で続く共同番組をいつ、どう終えるかという問いです。欧州委員会はその答えを、戒厳令の終わりと結びつけて求めています。

戒厳令のもとで何が制限されているかはウクライナの戒厳令で止まっていること、止められないこと、EU加盟の条件にメディア法が含まれていたことはEU加盟を申請して4年半、ウクライナの交渉はどこまで進んだかで扱っています。ニュースを読むときの注意はウクライナのニュースを読むとき、最初に確認する五つのことも参照してください。

出典・参考資料

  1. Рішення РНБО «Щодо реалізації єдиної інформаційної політики в умовах воєнного стану»(2022年3月18日。前文の理由、第1項の「統一ニュース #UАразом」、第2項の放送国家評議会への勧告、2026年9月23日時点で「чинний」)
    発行:Рада національної безпеки і оборони України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  2. Указ Президента України № 152/2022(2022年3月19日。国家安全保障国防会議の決定の発効、憲法第107条、公布日)
    発行:Президент України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  3. Ukraine 2023 Report, SWD(2023) 699 final(2023年11月8日。メディアの集中、戦後のテレビの仕組み、ススピーリネの信頼)
    発行:European Commission 確認日:2026-09-24
  4. Ukraine 2024 Report, SWD(2024) 699 final(2024年10月30日。2023年の公的資金、2024年5月の再編、見直しの勧告、議会チャンネル)
    発行:European Commission 確認日:2026-09-24
  5. Ukraine 2025 Report, SWD(2025) 759 final(2025年11月4日。2024年10月のススピーリネの離脱、国の資金、戒厳令の停止までの見直し、信頼と到達範囲の低下、ラーダの生中継再開、メディアの工程表)
    発行:European Commission 確認日:2026-09-24

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