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文化・歴史/解説

2026年は西方より1週間遅い4月12日。ウクライナの復活祭の決まり方

2026年の復活祭は、ローマ・カトリックが4月5日、ウクライナ正教会とギリシャ・カトリック教会が4月12日でした。2023年の暦の改正でクリスマスは12月25日に移りましたが、二つの教会は復活祭の計算を変えていません。春分と満月の決め方、年ごとのずれ、復活祭から数える祝日、国の祝日としての扱いを、教会の決定と教会暦から見ていきます。

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オリュカのひとこと

復活祭の日付は、どうやって決まるのでしょう。最初の見出しで確かめられます。

2026年の復活祭は、ローマ・カトリック教会では4月5日、ウクライナ正教会(ПЦУ、以下OCU)とウクライナ・ギリシャ・カトリック教会(УГКЦ、以下UGCC)では4月12日でした。OCUの2026年の教会暦では、4月5日は復活祭の1週間前の「主のエルサレム入城」(枝の主日)にあたります。同じ日曜日が、西では復活祭、ウクライナの二つの教会ではその前の週の始まりだったことになります。

OCUとUGCCは2023年9月1日から、クリスマスのような日付の決まった祝日を12月25日などの新しい暦で祝っています。この経緯はクリスマスが1月7日から12月25日へ移った記事で扱いました。そのとき二つの教会がそろって「変えない」と決めたのが、復活祭の日付の計算でした。ここでは、その計算がどういう仕組みで、どの日付を動かしているのかを見ていきます。

春分のあとの満月のあとの日曜日

復活祭は毎年日付が変わる「動く祝日」です。カナダ・アルバータ大学のウクライナ研究所(CIUS)が発行する『Internet Encyclopedia of Ukraine』(IEU)の「Easter」の項と、ウクライナの国の電子版『大ウクライナ百科事典』(ВУЕ)の「Пасха」の項は、325年のニカイア公会議が、復活祭を春分のあとの満月に続く最初の日曜日に祝うと決めた、と書いています。

ただ、ここでいう春分と満月は、空を観測して決めるものではありません。アメリカ海軍天文台(USNO)の解説によれば、教会の規則では春分を3月21日に固定し、満月も天文学上の満月ではなく、表から求める「教会の満月」を使います。そのうえで、3月21日かそれ以後に来る最初の教会の満月の、次の日曜日が復活祭になります。

  1. オリュカ

    同じ決まりなのに、どうして日付が分かれるのかな。

  2. スウネ

    使う暦と表の違いが、この見出しの下で説明されているよ。

  3. タブリ

    春分と満月の決め方に戻るなら、ひとつ上の見出しの本文だよ。

二つの表:グレゴリオ暦の表と、ユリウス暦の表

同じ規則なのに日付が分かれるのは、使う暦と表が違うからです。USNOの解説は、1582年に教皇グレゴリウス13世のもとで暦が改められ(グレゴリオ暦)、新しい復活祭の表が作られたこと、西方の教会はこの表を、東方の多くの教会はユリウス暦にもとづく古い表を使っていることを説明しています。

OCUの主教会議が2023年5月24日に出した決定文は、ユリウス暦では「3月21日」と実際の春分とのずれが20世紀と21世紀には13日になり、2100年からは14日になると書いています。そのため、ユリウス暦で3月21日に置かれた春分は、いまの暦では4月3日にあたります。ユリウス暦の表で求めた復活祭は、ユリウス暦の3月22日から4月25日のあいだに来るので、13日を足すと、21世紀のいまの暦では4月4日から5月8日のあいだになります。IEUの「Church holidays」の項は、東方の復活祭は西方と同じ日になるか、1週間、4週間、5週間遅れる、と書いています。

同じ決定文は、復活祭の計算(パスハリア)の伝統は、フィンランド正教会を除くすべての正教会に共通で、正教会がそろって決めなければ改められない、とも書いています。

オリュカのひとこと

西方の教会と同じ日になる年もあるようです。この見出しで確かめられます。

同じ日になる年、ずれる年

2024年から2028年までを並べると、ずれの幅が年ごとに変わることがわかります。2027年と2028年は、上の二つの表の計算による日付です。

年西方の教会(ローマ・カトリックなど)OCU・UGCCずれ
2024年3月31日5月5日5週間
2025年4月20日4月20日同じ日
2026年4月5日4月12日1週間
2027年3月28日5月2日5週間
2028年4月16日4月16日同じ日
2024〜2026年は、教皇庁が公開している各年の復活祭の教皇メッセージの日付と、OCU・UGCCの公式サイト(2026年はOCUの2026年教会暦とUGCCの礼拝予定)による。2027・2028年は、USNOが公開するグレゴリオ暦の計算法と、ユリウス暦の復活祭の計算に13日を足して求めた日付で、教会の公表した暦ではない。2026年9月27日確認。

復活祭から数える日

復活祭が動くと、その前後の祝日と斎(ものいみ)の期間もいっしょに動きます。OCUの2026年の教会暦に載っている日付は次のとおりです。

2026年の日付OCUの教会暦の呼び名復活祭との関係
2月23日〜4月3日大斎(Великий піст)復活祭の前
4月5日(日)主のエルサレム入城(枝の主日)1週間前
4月6日〜11日受難週(Страсний тиждень)直前の週
4月12日(日)パスハ、ヴェリークデニ当日
4月13日〜19日光明週間(Пасхальна (Світла) седмиця)直後の週
4月19日(日)アンティパスハ(使徒フォマの主日)1週間後
4月20日から復活祭後の第2週(「プロヴォディ」)8日目から
5月21日(木)主の昇天40日目
5月31日(日)三位一体の日(ペンテコステ)50日目
6月8日〜28日ペトロの斎(Петрів піст)三位一体の8日後から
Православна Церква України「Церковний календар на 2026 рік」(Київська Митрополія, 2026)から作成。「〜日目」は復活祭の日を1日目として数えた。2026年9月27日確認。

ペトロの斎は、6月29日の使徒ペトロとパウロの祝日の前日に終わります。始まりは復活祭から数えるので、斎の長さは年によって変わります。2023年の決定文も、伝統的なパスハリアと、日付の決まった祝日の新しい暦とを組み合わせると、礼拝の運び方で難しい場合が出てくるとして、委員会に提案をまとめるよう求めています。

「プロヴォディ」は、いつの日か

復活祭のあとには、亡くなった家族を思う習わしがあります。その日取りは、資料によって書き方が違います。

  • IEUの「Easter」の項は、復活祭の次の週全体を通して死者を思い、とくに復活祭の次の日曜日(フォマの日曜日、「プロヴィドナ」とも呼ぶ)に教会の墓地へ食べ物を持って集まる、と書いています
  • OCUの2026年の教会暦は、復活祭後の第2週(4月20日から)に「プロヴォディ」と添え、この週には伝統として死者の記憶を行う、と書いています
  • ВУЕの「Великдень」の項は、復活祭の祝いを死者の記憶で締めくくった、と書き、特定の曜日は挙げていません

家や村でどの日に墓地を訪ねるかは、地域や教区によって違いがあります。

「パスハ」と「ヴェリークデニ」

ウクライナ語には、復活祭を指す言葉が二つあります。

  • パスハ(Пасха):ВУЕは、ギリシャ語のπάσχαを挙げ、ユダヤ教の過越祭(ペサハ)と同じ見出しで説明しています
  • ヴェリークデニ(Великдень):「大いなる日」という意味です。ВУЕはギリシャ語の「大いなる日」をなぞって作られた語とし、東スラヴの人々のキリスト教化とともに1千年紀の終わりに広まったという見方を挙げたうえで、それ以前から使われていたという推測もあると書いています。IEUは、キーウ・ルーシの早い時期のダマスコのイオアンの翻訳に使われた語だとしています

OCUの2026年の教会暦は、4月12日を「光り輝くキリストの復活。パスハ。ヴェリークデニ」と、二つの語を並べて書いています。ウクライナの労働法典も「Пасха (Великдень)」と並べています。

2023年の暦の改正で、動かなかったもの

OCUの主教会議の2023年5月24日の決定は、第1項で、教区と修道院に新ユリウス暦を使うことを認め、そのかっこ書きに「伝統的なパスハリアは変わらず守る」と書いています。第2項で、移行を2023年9月1日(教会の新しい年の始まり)からとしました。

UGCCのウクライナの主教シノドは、2023年2月1〜2日の会期で、9月1日から動かない祝日を新しい暦で祝い、「現行のパスハリア」は残すと決めました。首長スヴャトスラウ・シェウチュークは発表のとき、改正は二段階で、復活祭については「少し待つ」と決めたと述べ、2025年のニカイア公会議1700年に向けて、ローマとコンスタンティノープルの対話で、世界のキリスト教徒が同じ日に復活祭を祝うための新しいパスハリアが検討されていると説明しています。

UGCCの公式サイトが2024年4月11日に伝えたところでは、シェウチュークはテレビ局「生きたテレビ」の番組「開かれた教会」で、ウクライナのUGCCが古いパスハリアを続ける理由を「正教の兄弟たちと復活祭を祝いたい」と説明しました。同じ番組でシェウチュークは、ウクライナの外にあるUGCCの教区の多くは、新しいパスハリアで復活祭を祝っているとも述べています。

国の祝日としての復活祭

ウクライナの祝日を並べた労働法典第73条は、「宗教の祝日」として次の三つを挙げ、この日には仕事をしないと定めています。

один день (неділя) – Пасха (Великдень)
один день (неділя) – Трійця
25 грудня – Різдво Христове.
(1日〈日曜日〉──パスハ〈ヴェリークデニ〉/1日〈日曜日〉──三位一体/12月25日──キリスト降誕祭)

労働法典第73条第2項(最高会議の法令データベース、2026年7月31日版)。日本語訳は本記事による

条文は、どの教会の暦による日曜日かを書いていません。また第73条の冒頭には、戒厳令の期間中はこの条を適用しないという注記があります。祝日の一覧の移り変わりと、戒厳令のもとの扱いは、独立記念日と祝日の記事で詳しく書いています。

  1. オリュカ

    暦と復活祭の決まりは、どんな順で変わってきたのかな。

  2. タブリ

    会議や決定の順番は、この見出しの下の年表でたどれるよ。

  3. シメロ

    同じ日に祝う話が今どこまで来ているかは、まず次の見出しから読もう。

暦と復活祭をめぐる年表

年出来事典拠
325年ニカイア公会議。復活祭を春分のあとの満月に続く日曜日に祝うと決めたとされるIEU「Easter」、ВУЕ「Пасха」
1582年教皇グレゴリウス13世のもとで暦を改め、新しい復活祭の表を作るUSNO
1584〜1586年ポーランド王ステファン・バートリが、正教会にユリウス暦を続けることを認める布告を出すIEU「Calendar」
1918年3月1日中央ラーダが民間の暦にグレゴリオ暦を導入。教会はユリウス暦を使い続けるIEU「Calendar」
1923年コンスタンティノープルの正教会の会議で、新ユリウス暦が承認されるOCUの2023年の決定文
2023年2月1〜2日UGCCのシノドが、9月1日からの新しい暦と、パスハリアの維持を決めるUGCC
2023年5月24日OCUの主教会議が、同じく新しい暦と、パスハリアの維持を決めるOCU
2025年4月20日東西の教会の復活祭が同じ日になる教皇庁、OCU
2025年11月29日教皇レオ14世と全地総主教バルトロメオス1世の共同宣言教皇庁
IEU・ВУЕ・USNO・OCU・UGCC・教皇庁の公表から作成。2026年9月27日確認。

ニカイアから1700年:「同じ日の復活祭」の話はどこまで来たか

2025年は、ニカイア公会議から1700年にあたり、東西の復活祭がともに4月20日でした。その年の11月29日、教皇レオ14世とコンスタンティノープル全地総主教バルトロメオス1世は、イスタンブールで共同宣言に署名しています。宣言は、ニカイア公会議がすべてのキリスト教徒に共通の復活祭の日付を決める基準を示したことに触れ、この年に全キリスト教世界が同じ日に復活祭を祝ったことに感謝したうえで、毎年ともに祝うための解決策を探る過程を続けたい、と書いています。

宣言は、新しい計算の方法や、いつから変えるかは示していません。2026年のOCUとUGCCの暦は、従来のパスハリアにより復活祭を4月12日としていました。この先、二つの教会が計算を改めるかどうかは、それぞれの教会の公式の発表で確かめる必要があります。

出典と記事の記録出典 15件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Постанова Архієрейського Собору ПЦУ від 24 травня 2023 р. «Про врегулювання календарного питання в Православній Церкві України»パスハリアの伝統はフィンランド正教会を除く全正教会に共通、13日と2100年からの14日、第1項のかっこ書き「伝統的なパスハリアを変わらず守る」、第2項の2023年9月1日、第4項の委員会への求め、1923年の会議
    発行:Православна Церква України(pomisna.info) 確認日:2026-09-27
  2. Церковний календар на 2026 рікПасха 12 квітня、大斎・受難週・光明週間・ペトロの斎の期間、4月5日の主のエルサレム入城、4月19日のアンティパスハ、4月20日からの「Проводи」、5月21日の昇天、5月31日の三位一体、6月29日のペトロとパウロ
    発行:Православна Церква України(pomisna.info) 確認日:2026-09-27
  3. Богослужіння свята Пасхи – Світлого Христового Воскресіння2024年5月5日、2025年4月20日、2026年4月12日の各年の記事
    発行:Православна Церква України(pomisna.info) 確認日:2026-09-27
  4. Історичне рішення: УГКЦ в Україні переходить на новий календар第93回会期・2023年2月1〜2日、「現行のパスハリアを保って」、二段階、ニカイア1700年とローマ・コンスタンティノープルの対話
    発行:Українська Греко-Католицька Церква(ugcc.ua) 確認日:2026-09-27
  5. Блаженніший Святослав пояснив, чому УГКЦ в Україні святкує Пасху за старим стилем2024年4月11日。正教の兄弟と祝う、国外の教区の多くは新しいパスハリア
    発行:Українська Греко-Католицька Церква(ugcc.ua) 確認日:2026-09-27
  6. Розклад богослужінь на Страсний тиждень і Великдень у Патріаршому соборі Воскресіння Христового2026年4月12日の復活祭
    発行:Українська Греко-Католицька Церква(ugcc.ua) 確認日:2026-09-27
  7. Кодекс законів про працю України 第73条宗教の祝日「Пасха (Великдень)」「Трійця」、戒厳令期間中の不適用の注記。2026年7月31日版
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-27
  8. Easterニカイア公会議、Velykden の語、ダマスコのイオアンの翻訳、死者の記憶とフォマの日曜日。執筆 Z. Kuzelia, P. Odarchenko
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-27
  9. Church holidays東方の復活祭は同じ日か1・4・5週遅れ、昇天は40日後。初出1984年
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-27
  10. Calendar1584〜1586年のバートリの布告、1918年3月1日の中央ラーダの導入。執筆 Viktor Pavlovsky、初出1984年
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-27
  11. Пасха語源、ニカイア公会議、1582年の改革。執筆 П. Ю. Павленко、2020年4月30日公開
    発行:Велика українська енциклопедія(国立学術機関「百科事典出版」) 確認日:2026-09-27
  12. Великденьギリシャ語のなぞり、1千年紀末の広まり、死者の記憶で締めくくる。2023年3月1日公開
    発行:Велика українська енциклопедія(国立学術機関「百科事典出版」) 確認日:2026-09-27
  13. The Date of Easter教会の春分は3月21日に固定、教会の満月、1582年のグレゴリオ暦の表、東方はユリウス暦の表、計算法
    発行:U.S. Naval Observatory, Astronomical Applications Department 確認日:2026-09-27
  14. Joint Declaration2025年11月29日、教皇レオ14世と全地総主教バルトロメオス1世。ニカイアの基準、2025年の同じ日の復活祭、共に祝う解決策を探る過程
    発行:The Holy See(vatican.va) 確認日:2026-09-27
  15. Urbi et Orbi Message, Easter 2024 / 2025 / 2026各年の復活祭の日付:2024年3月31日、2025年4月20日、2026年4月5日
    発行:The Holy See(vatican.va) 確認日:2026-09-27

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