誕生日より大切にされてきた「名の日」。聖ミコラの日は12月6日へ
ウクライナの「名の日」(イメニヌィ、天使の日)は、自分の名前のもとになった聖人の記念日です。事典は、かつては誕生日より大切な祝いだったと書いています。2023年9月に二つの大きな教会が新しい暦に移り、教会の暦の上では名の日も13日早まりました。名前のつけ方、洗礼名とふだんの名前、呼び名の違いとあわせてまとめます。
オリュカのひとこと
誕生日より大切にされてきた日があるそうです。最初の見出しで確かめられます。
ウクライナ語の「イメニヌィ」(іменини)は、日本語にすると「名の日」です。ウクライナの国の百科事典『大ウクライナ百科事典』(ВУЕ)は、キリスト教(正教会とカトリック)で、自分の名前のもとになった聖人の記念日に祝う個人の祝日と説明し、「天使の日」(день ангела)という別名も挙げています。そして、歴史的には誕生日よりも大切な祝いとされてきた、と書いています。
名の日は教会の暦の日付で決まるので、暦が変わると日付も動きます。2023年9月、ウクライナの二つの大きな教会が新しい暦に移り、教会の暦の上では聖人の記念日が13日早まりました。名前のつけ方、ふだんの名前と洗礼名、日付の変わり方を順に見ていきます。名前の綴りや父称はウクライナの人の名前の記事で扱っています。
洗礼の日の聖人から名前をもらう
ВУЕによれば、キリスト教に改宗するときや洗礼の秘跡を受けるとき、人は教会の暦にしたがって、ある聖人にちなんだキリスト教の名前を選びました。キリスト教の暮らしが根づいた社会では、赤ちゃんは洗礼のとき(多くは生まれて8日目)に名前をもらい、その名前は洗礼の日に教会が記念する聖人の一人から取られた、と同じ項目は書いています。親族の名前や親の好みで名づけることは少なかったといいます。
ウクライナ国立科学アカデミーの『現代ウクライナ百科事典』(ЕСУ)の「名前」の項(2011年)も、正教会のきまりでは、教会の暦(聖人の名前を記念の月日の順に並べたもの)にしたがい、子が洗礼を受ける日の聖人にちなんで名前をつける、と説明しています。IEUの「Saints」の項は、聖人はそれぞれ教会の暦(ミシャツェスロウ、またはメナイオン)に記された日に記念されてきたと書いています。
ВУЕは、ウクライナでは名づけの儀礼に、司祭のほか、産婆、クム(代父母と親との関係の呼び名)、代父母が必ず加わったと書いています。同じ名前の聖人は、その子を天から守る者になると信じられていました。クムという呼び名については親族の呼び名の記事にあります。
誕生日と名の日が離れていった
ВУЕによれば、洗礼のときに名前をもらっていたころは、誕生日と名の日の間はふつう短いものでした。その後、教会の暦にしたがう名づけの習慣が薄れ、親が好みや流行、人気のある人物にちなんで名前を選んだり、新しい名前を作ったりするようになります。宗教から離れた社会では誕生日が一番の個人の祝いになり、名の日は象徴的なものになった、と同じ項目は書いています。一方で、宗教への関心が高まる時期には、教会の伝統にしたがって名前を選ぶ習慣が戻る傾向も記録されているといいます。
洗礼名と、ふだんの名前
ЕСУの「名前」の項によれば、キーウ・ルーシにキリスト教が入った10世紀末から、スラヴの名前と、新しい宗教とともに来た名前がせめぎ合いました。10〜14世紀には、スラヴの伝統的な名前と、洗礼のときにもらう名前の二つを持つ人がいたことが記録に残っています。例として、同じ項目は11世紀のキーウの大公「ヴォロディーミル=ヴァスィーリ」を挙げています。地元の聖人が列聖されたことで、ボリスやヴォロディーミルのようなスラヴの名前も、教会の名前の一覧に入りました。
ウクライナ正教会(OCU)の2026年の教会暦も、7月15日の聖ヴォロディーミルを「洗礼名ヴァスィーリ」、7月11日の聖オリハを「洗礼名オレーナ」と書き添えています。ЕСУはまた、教会の暦にある公式のキリスト教の名前の多くは、ウクライナの人々がふだん使うことのなかった名前だとも書いています。
名前の一覧の歴史にも触れておくと、IEUの「Onomastics」の項によれば、1909年に出たボリス・フリンチェンコのウクライナ語・ロシア語辞典の第4巻には、ウクライナ語の洗礼名の16ページの辞典が付けられていました。
オリュカ
教会の暦が変わると、名の日はどう動くのかな。
タブリ
名前ごとの前と後の日付は、この見出しの下の表で見比べられるよ。
スウネ
家でいつ祝うかは人によって違いうると、この節の終わりにあるね。
2023年、教会の暦で13日早まった
OCUの主教会議は2023年5月24日、2023年9月1日から「新ユリウス暦」を使うと決めました。決定文は、ユリウス暦(旧暦)と天文上の日付のずれが20世紀と21世紀には13日になっていると説明しています。ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会(UGCC)も同じ年の2月1〜2日の主教シノドで、9月1日から日付の決まった祝日を新しい暦で祝うと決めました。UGCCの発表は、例として「聖ミコラの日は12月6日」を挙げ、クリスマスだけでなく日付の決まった祝日のすべてが移るのだと説明しています。二つの教会の決定とクリスマスの日付の変化はウクライナのクリスマスの記事にまとめています。
名の日は聖人の記念日なので、教会の暦の上ではこれに合わせて13日早まります。名前と記念日の例を並べると次のとおりです。
| 名前 | 記念される聖人(OCUの暦の書き方) | 2023年8月まで(民間の暦の日付) | OCUの2026年の暦 |
|---|---|---|---|
| ミコラ(Микола) | ミラのニコラオス(聖ミコラ) | 12月19日 | 12月6日 |
| ヴァスィーリ(Василь) | 大ワシリイ(カイサリアの大主教) | 1月14日 | 1月1日 |
| テチャナ(Тетяна) | ローマの殉教者タチアナ | 1月25日 | 1月12日 |
| ユーリー(Юрій) | 大殉教者ユーリー(ゲオルギオス) | 5月6日 | 4月23日 |
| オリハ(Ольга) | キーウの公妃オリハ(洗礼名オレーナ) | 7月24日 | 7月11日 |
| ヴォロディーミル(Володимир) | キーウの大公ヴォロディーミル(洗礼名ヴァスィーリ) | 7月28日 | 7月15日 |
| メラニヤ、マランカ(Меланія) | ローマのメラニア | 1月13日 | 12月31日 |
教会の暦には、聖職者の名の日も載っています。OCUの2026年の暦は、5月12日をOCUの首座、キーウと全ウクライナの府主教エピファニーの「名の日」(テゾイメニトストヴォ)としています。聖ヴォロディーミルの日の移動が国の記念日「国家の日」の日付も変えたことは、国家の日の記事で扱っています。
ただし、OCUの決定は、旧暦を続けたい教区と修道院には、構成員の3分の2以上の賛成があればそれを認めています。UGCCも、準備のできていない教区には主教の許可のもとで2025年9月まで旧暦を認めました。教会の暦が変わっても、名の日を家でいつ祝うかは人によって違いえます。
オリュカ
名の日には、いくつの呼び方があるのかな。
ヨリクネ
府主教などの名の日に使う語も、この見出しの下にあるよ。
タブリ
名づけの習わしに戻るなら、記事の初めの見出しから読めるよ。
イメニヌィ、天使の日、テゾイメニトストヴォ
名の日の呼び方にもいくつかの形があります。ВУЕは「イメニヌィ」(іменини)と「天使の日」(день ангела)を同じものとして並べ、宗教から離れた社会では、イメニヌィが誕生日(ナロドィヌィ、ウロドィヌィ)と同じ意味で使われることも多いと書いています。いっぽう、教会の暦が府主教などの名の日に使うのは、「テゾイメニトストヴォ」(тезоіменитство)という語です。
オリュカのひとこと
暦の日付は、時代によって重なっていたようです。この見出しで確かめられます。
ソ連の時代と、暦の二重の日付
IEUの「Saints」の項(1993年の紙版の再録)によれば、ソ連の支配が始まると、当局は聖人の日を公に祝うことを禁じ、イコンや像を壊し、子に聖人の名前をつける習慣を思いとどまらせました。
教会と民間で日付がずれていたのも、20世紀の初めからです。IEUの「Calendar」の項によれば、民間の暦は1918年3月1日にウクライナ中央ラーダが新しい暦(グレゴリオ暦)に切り替えましたが、教会はユリウス暦を使い続けました。旧暦の12月6日にあたる聖ミコラの日が、民間の暦では12月19日になっていたのは、この二つの暦の差のためです。2023年の変更で、二つの教会の暦の上では、この差がなくなりました。
出典と記事の記録
出典・参考資料
- Іменини定義、別名「день ангела」、誕生日より大切とされたこと、洗礼のとき〈多くは8日目〉の名づけ、儀礼の参加者、守護の聖人、誕生日が主な祝いになったこと、誕生日の意味での用法。版 oldid=449750
発行:Велика українська енциклопедія(国立学術機関「百科事典出版所」) 確認日:2026-09-27 - Ім’я執筆 І. М. Желєзняк。10〜14世紀の二つの名前、ヴォロディーミル=ヴァスィーリ、ボリスとヴォロディーミルの列聖、教会の暦による名づけ、使われなかった公式の名前。第11巻、2011年12月
発行:Енциклопедія Сучасної України(ウクライナ国立科学アカデミー百科事典研究所) 確認日:2026-09-27 - Saints教会の暦〈misiatseslov・menaion〉の日の記念、ソ連の時代の聖人の日の禁止と名づけの抑制。紙の第4巻〈1993年〉の再録
発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-27 - Calendar1918年3月1日に中央ラーダが民間に新しい暦を導入、教会はユリウス暦。紙の第1巻〈1984年〉の再録
発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-27 - Onomastics1909年のフリンチェンコの辞典第4巻に付いた16ページの洗礼名の辞典。紙の第3巻〈1993年〉の再録
発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-27 - Постанова Архієрейського Собору від 24 травня 2023 р. «Про врегулювання календарного питання»2023年9月1日から新ユリウス暦、20〜21世紀の13日の差、3分の2以上の賛成で旧暦の継続を認める
発行:Православна Церква України(pomisna.info) 確認日:2026-09-27 - Церковний календар 20261月1日 大ワシリイ、1月12日 タチアナ、4月23日 ユーリー、5月12日 府主教エピファニーの тезоіменитство、7月11日 オリハ〈洗礼名オレーナ〉、7月15日 ヴォロディーミル〈洗礼名ヴァスィーリ〉、12月6日 ミコラ、12月31日 ローマのメラニア
発行:Православна Церква України(pomisna.info) 確認日:2026-09-27 - Історичне рішення: УГКЦ в Україні переходить на новий календар2023年2月1〜2日の第93回主教シノド、日付の決まった祝日を9月1日から新しい暦で、聖ミコラの日は12月6日、2025年までの旧暦の容認
発行:Українська Греко-Католицька Церква 確認日:2026-09-27 - Календарна реформа УГКЦ в Україні: коротко про головне日付の決まった祝日の移行、復活祭の計算は変えない
発行:Синод Єпископів УГКЦ 確認日:2026-09-27
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