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社会を知る/解説

「ウクライナ国家の日」は、聖ヴォロディーミルの日に置かれた

ウクライナの祝日「ウクライナ国家の日」は、2021年の大統領令で生まれ、2022年の法律で祝日になり、2023年の法律で7月28日から7月15日へ移りました。なぜキーウ・ルーシの洗礼の日と重ねたのか、なぜ13日早めたのかを、大統領令と法案の説明書からたどります。2026年9月時点の扱いも書きます。

画像:Ukrainavi

オリュカのひとこと

大統領令で決めた記念日は、それだけで休みの日になるのでしょうか。憲法第92条と最初の表で確かめられます。

ウクライナの祝日の一覧には、7月15日に「ウクライナ国家の日」(День Української Державності)があります。できたのは2021年と新しく、日付も一度動いています。この日は、キーウ・ルーシがキリスト教を受け入れたことを記念する日、つまりキーウの大公ヴォロディーミルをしのぶ日に重ねて置かれました。

以下は、最高会議の法令データベースに載っている大統領令・法律と、法案に付いた説明書を2026年9月に読んだ内容です。独立記念日を含む祝日の一覧は独立記念日と祝日の記事に、988年の出来事そのものはキーウ・ルーシから16世紀までの記事にまとめています。

大統領令、法律、日付の変更

「国家の日」は、ひとつの文書でできたのではありません。記念日を決める大統領令と、休みの日を決める法律が、別々に作られてきました。ウクライナの憲法は第92条で、国の祝日は法律だけで定めるとしています。大統領令で「祝う日」を決めても、労働法典の祝日にはなりません。

日付文書決めたこと
2008年7月25日大統領令第668/2008号(ユシチェンコ大統領)7月28日を「キーウ・ルーシ=ウクライナの洗礼の日」とする
2021年8月24日大統領令第423/2021号(ゼレンシキー大統領)「ウクライナ国家の日」を毎年7月28日、洗礼の日に祝う
2021年8月25日法案第5864号(大統領が提出)7月28日を労働法典第73条の祝日に加える案
2022年5月31日法律第2295-IX号(6月9日施行)第73条に「7月28日 ウクライナ国家の日」を加える
2023年7月14日法律第3258-IX号(7月30日施行)第73条の日付を「7月15日」に改める
2023年7月28日大統領令第455/2023号洗礼の日と国家の日を、大統領令の上でも7月15日に改める
各大統領令・法律の本文と文書カード、法案のページ(最高会議)をもとに作成。2026年9月24日確認。

表のとおり、法律で祝日になったのは2022年、ロシアによる全面侵攻が始まった後です。7月28日が「国家の日」として迎えられたのは2022年と2023年の2回で、7月15日になったのは2024年からです。2023年は、日付を移す法律が7月30日に施行されたため、まだ7月28日でした。

なぜ洗礼の日に重ねたのか

2021年の大統領令は、前文で理由を書いています。ウクライナの国家の歴史は、キーウの町ができたころと、大公ヴォロディーミルの時代にまでさかのぼる。ヴォロディーミルは988年にキリスト教を受け入れて、キーウ・ルーシの「文明の選択」を示した。そのキーウ・ルーシを受け継いだのが、ハールィチ・ヴォルィーニ公国、コサックの国家、ウクライナ人民共和国、西ウクライナ人民共和国、ウクライナ国(1918年)、カルパト・ウクライナ、そしていまのウクライナだ、という筋立てです。

前文はさらに、シェウチェンコ、コストマーロウ、アントノーヴィチ、ドラホマーノウ、フランコ、レーシャ・ウクラインカ、フルシェウシキーの名を挙げて、その仕事に敬意を示すとしています。第1条は、国家の日を「キーウ・ルーシ=ウクライナの洗礼の日」に祝うと定めました。洗礼の日は、2008年の大統領令が「キーウ・ルーシの洗礼者、聖なる亜使徒ヴォロディーミル公の記念日」に置いた日です。

大統領が同じ月に議会へ出した法案第5864号の説明書は、もう一歩踏み込んでいます。受け継いだ国家の並びに「リトアニア=ルーシ国家」を加えたうえで、祝日にする理由をこう書いています。

ロシア連邦は国の最高レベルで、キーウ・ルーシの時代に始まった伝統的な価値——正教、民族性、国家性——の守り手だという偽りの像を広めている。この偽情報の体系のなかでは、ウクライナ人は千年を超える国家の歴史をもつ別の民族ではなく、「三位一体のロシア民族」の一部とされ、キーウ・ルーシの歴史はロシア国家の一段階とされる。

法案第5864号の説明書(2021年8月、大統領府)より。日本語訳は本記事による

キーウ・ルーシを誰の歴史として語るかは、祝日の日付の話にとどまらず、ロシアが侵略を正当化する主張の一部になっている——説明書はその認識を前提にしています。キーウ・ルーシをめぐる歴史学の論点は、キーウ・ルーシから16世紀までの記事で扱っています。

オリュカのひとこと

7月28日と7月15日は、別の日を記念しているのでしょうか。二つの暦の差をこの節で確かめられます。

なぜ13日早めたのか

2023年、国家の日は7月28日から7月15日へ移りました。日付を移した法律第3258-IX号は、同時にクリスマスを1月7日から12月25日へ移し、「ウクライナの防衛者の日」を10月14日から10月1日へ移した法律です。

大統領が出した法案第9431号の説明書によれば、きっかけは教会の暦の変更です。ウクライナ正教会(OCU)は2023年5月24日の主教会議で、9月1日から新ユリウス暦に全面的に移ると決めました。説明書は、クリスマスの日付を変えることにあわせて、国家の日と防衛者の日も「13日」移す必要がある、と書いています。国家の日は、大公ヴォロディーミルをしのぶ日として7月15日になりました。

7月28日と7月15日は、同じ聖ヴォロディーミルの記念日を、別の暦で数えた日付です。説明書のいう「13日」は、ユリウス暦と、いま一般に使われている暦(グレゴリオ暦)との差にあたります。教会が新しい暦に移ったので、記念日の日付も13日早まりました。クリスマスの日付が動いた経緯はウクライナのクリスマスは1月7日から12月25日へで書いています。

大統領令の側も、2023年7月28日の第455/2023号で、洗礼の日と国家の日を7月15日に改めました。この大統領令は、ほかの記念日の日付もまとめて改めています。たとえば「ウクライナの書き言葉と言葉の日」は11月9日から10月27日へ、「ウクライナ・コサックの日」は10月14日から10月1日へ移りました。

戒厳令のもとでの7月15日

労働法典第73条のいまの一覧にも、「7月15日 ウクライナ国家の日」は載っています。ただし、2022年3月に作られた戒厳令下の労働関係の法律(第2136-IX号)の第6条第6項が、戒厳令の期間は第73条を適用しないと定めています。第73条の本文にも、その旨の注記が付いています。

つまり国家の日は、法律で祝日になった2022年から一度も、第73条にもとづく休みの日として迎えられていません。戒厳令は2026年5月4日から90日延長されていたので、2026年7月15日もその期間の中でした。戒厳令はさらに2026年8月2日から90日延長されています(2026年9月時点)。戒厳令で止まっている規定の全体はウクライナの戒厳令で止まっていること、止められないことにまとめています。

日付に込められたもの

「国家の日」は、独立記念日(8月24日)や憲法記念日(6月28日)のように、ある年のある日に起きた出来事を記念する日ではありません。1991年の独立より千年近く前の、キーウ・ルーシの大公の記念日に、いまのウクライナの国家を結びつける日です。祝日にするための2021年の法案の説明書は、その結びつきを、ロシアの歴史の語り方に対抗するものとして説明しました。2023年の法案の説明書は、ユリウス暦で1月7日にクリスマスを祝うことを、ロシアが長く押しつけてきたものと書き、その「ロシアの遺産」から離れることを目的に挙げました。国家の日の日付も、その流れのなかで教会の新しい暦に合わせて改められました。

休みの日としてはまだ働いていない祝日ですが、その日付を決めた文書を並べると、ウクライナが自分たちの国家の始まりをどこに置こうとしているのかが読み取れます。

出典と記事の記録出典 11件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Указ Президента України «Про День Української Державності» № 423/20212021年8月24日。前文、第1条(2023年改正後は7月15日)、第2・3条、改正の注記
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  2. Указ Президента України «Про День хрещення Київської Русі - України» № 668/20082008年7月25日。前文、聖ヴォロディーミルの記念日に祝うこと、2023年に28日を15日に改めた注記
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  3. Указ Президента України «Про внесення змін до деяких указів Президента України» № 455/20232023年7月28日。七つの記念日の日付の変更
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  4. Закон України № 2295-IX2022年5月31日。労働法典第73条に「7月28日 ウクライナ国家の日」を追加。文書カードで2022年6月9日施行、官報の掲載
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  5. Закон України № 3258-IX2023年7月14日。「15 липня - День Української Державності」、10月1日、12月25日。文書カードで2023年7月30日施行
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  6. Законопроєкт № 5864 と Пояснювальна записка2021年8月25日登録、大統領提出。祝日にする目的と理由
    発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-24
  7. Законопроєкт № 9431 と Пояснювальна записка2023年6月28日登録、大統領提出。クリスマスの日付の変更にともない13日早める理由
    発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-24
  8. Кодекс законів про працю України第73条の現行の祝日一覧と、戒厳令の期間中は適用しない旨の注記
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  9. Закон України «Про організацію трудових відносин в умовах воєнного стану» № 2136-IX第6条第6項、最終規定第3項
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  10. Указ Президента України «Про введення воєнного стану в Україні» № 64/2022延長の注記。2026年5月4日から90日、2026年8月2日から90日
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24
  11. Конституція України第92条第2項第7号「国の祝日」は法律だけで定める
    発行:Верховна Рада України(zakon.rada.gov.ua) 確認日:2026-09-24

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