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社会を知る/解説

ハンガリー語で学べるのは何年生までか。教育法第7条をめぐる6年

ザカルパッチャ州のハンガリー系の学校では、2017年の教育法で5年生から上の授業をウクライナ語に移すことになり、ハンガリー政府は強く反発しました。2020年の法律で割合が決まり、2023年12月の改正を経て、ハンガリー語などEUの公用語で学べる範囲は大きく広がりました。

画像:Ukrainavi

オリュカのひとこと

ハンガリー語で学べる学年は、2017年からどう変わってきたのでしょう。三度の定めを本文で順にたどれます。

ウクライナの西の端、ハンガリーと国境を接するザカルパッチャ州には、ハンガリー系の人々がまとまって暮らしています。2001年の全ウクライナ国勢調査では、国内のハンガリー人は15万6,600人(人口の0.3%)で、そのうち15万1,500人がザカルパッチャ州に住み、州の人口の12.1%を占めていました。州内のベレホヴェ市では、住民の48.1%がハンガリー人でした。ウクライナで国勢調査が行われたのはこの一度だけなので、これより新しい公式の人数はありません。

この人々の学校で何語で授業をするかが、2017年からウクライナとハンガリーの間の大きな争点になりました。きっかけは、2017年9月5日に採択された教育法(法律第2145-VIII号)の第7条です。その後、2020年の完全普通中等教育法、2023年12月の改正と、定めは三度変わりました。国家語法全体の仕組みは段階を踏んだウクライナの国家語法で扱っています。ここでは学校の言葉に絞ります。

2017年の第7条が定めたこと

第7条の第1項は「教育機関における教育の言語は国家語である」と定めています。国家語はウクライナ語です(憲法第10条)。そのうえで、少数民族の言語で学べる範囲を、民族の種類によって分けました。

  • 民族的少数者(ハンガリー人、ルーマニア人、ポーランド人など):公立の就学前教育と初等教育(小学校の1〜4年生)では、ウクライナ語と並んでその民族の言語で学ぶ権利が保障される。この権利は、ウクライナ語の学校の中に別の学級(グループ)をつくる形で実現される
  • 先住民族(クリミア・タタールなど):就学前教育と普通中等教育の全課程で、ウクライナ語と並んで自分たちの言語で学ぶ権利が保障される
  • すべての民族的少数者と先住民族:普通中等教育の学校で、自分たちの言語を教科として学ぶ権利が保障される
  • 第4項:教育課程に応じて、1つ以上の教科を、国家語と英語、そのほかのEUの公用語の2言語以上で教えることができる

5年生から上の学年について、民族的少数者の言語で学ぶ権利は、第7条の中に書かれていません。一方で第4項により、EUの公用語(ハンガリー語、ルーマニア語、ポーランド語、ブルガリア語、ギリシャ語、ドイツ語、スロバキア語)では、一部の教科を教えることができる余地が残りました。EUの公用語でない少数民族の言語(ロシア語、ベラルーシ語、イディッシュ語など)には、この余地がありません。

変化の大きさは、それまでの学校の姿と比べるとわかります。欧州評議会のヴェネツィア委員会(法による民主主義のための欧州委員会)の意見書によれば、ウクライナ教育科学省は2017年10月27日付の文書で、少数民族の言語だけで授業をし、ウクライナ語は教科として学ぶだけの学校が全国に735校あり、約40万人の子どもが通っていると説明していました。法律は、2018年9月1日より前に少数民族の言語で学び始めた子どもには、2020年9月1日まで、ウクライナ語で学ぶ教科を少しずつ増やしながら従来の規則で学び続けることを認めました(最終・経過規定)。

ハンガリー政府の反発と、欧州評議会の意見

ハンガリー政府は、法律の採択の直後から強く反対しました。外務貿易省の発表によれば、シーヤールトー・ペーテル外務貿易相は2017年9月7日、改正は「ハンガリー人少数者の権利を強く侵害する」と述べ、ハンガリー政府は新しい規則が施行されないよう、あらゆるヨーロッパの場で行動すると表明しました。同年10月10日にはザカルパッチャ州のウージュホロドで、この法律はEUとウクライナの連合協定に違反するとして、EU外相会合で協定の見直しを提起すると述べています。2018年5月24日には、ザカルパッチャのハンガリー人少数者の保護を理由に、北大西洋条約機構(NATO)に対ウクライナ政策の見直しを求める覚書を出したと発表しました。いずれも、ハンガリー政府がそう主張した、という記録です。

教育法は2017年9月27日に最高会議の新聞『ホロス・ウクライーヌィ』で公布され、翌28日に施行されました。欧州評議会の議員会議は10月12日の決議第2189号で、新しい第7条について少数民族の代表との実質的な協議がなかったことを遺憾とし、公用語と少数民族の言語の間の適切な均衡がとれていないようだ、と述べました。決議は、国家の公用語の習得を促し、全員にその言語での教育を求めることは正当だ、という原則もあわせて掲げています。

ウクライナ政府は第7条をヴェネツィア委員会に諮り、委員会は2017年12月8〜9日の総会で意見書(CDL-AD(2017)030)を採択しました。意見書は、国家語を強め、すべての市民がそれを身につけられるようにすることは「正当で称賛に値する目的」だと認めています。そのうえで、第7条はとくに中等教育で少数民族の言語による教育の範囲を減らしており、法律としての明確さを欠く、と指摘しました。勧告には、第4項を使ってEUの公用語での教育を十分な水準で保障すること、改革に時間をかけられるよう経過規定を改めること、私立学校を新しい言語の要件から外すこと、少数民族の代表との対話を始めることが挙がっています。EUの公用語でない言語を不利に扱う点は、差別の問題を生むとも述べています。

ウクライナの憲法裁判所の判断

国内では、48人の最高会議議員が教育法の違憲審査を求めました。憲法裁判所は2019年7月16日の決定(第10-р/2019号)で、法律を合憲と判断しました。決定は、法律は民族的少数者と先住民族に母語を学ぶ権利を保障し、同時に国家語を学ぶことを定めており、国家語を学べないことは少数民族の人々が社会で暮らしていくうえでの妨げになる、と述べています。どの教育段階で、何時間を母語での授業にあてるかは、立法者が決めることだともしています。

オリュカのひとこと

5年生で20%以上、9年生で40%以上とは、何に占める割合なのでしょう。表と注記で確かめましょう。

2020年の法律が決めた割合

2020年1月16日に採択された完全普通中等教育法(法律第463-IX号)の第5条は、5年生から上の学年でウクライナ語を使う授業時間の下限を、少数民族の言語によって分けて定めました。

学年EUの公用語である少数民族の言語の学級(ハンガリー語など)それ以外の少数民族の言語の学級
1〜4年生(初等教育)ウクライナ語と並んで少数民族の言語で学べるウクライナ語と並んで少数民族の言語で学べる
5〜9年生(基礎中等教育)ウクライナ語は5年生で年間の授業時間の20%以上。毎年増やし、9年生で40%以上ウクライナ語が年間の授業時間の80%以上
10〜12年生(専門中等教育)ウクライナ語が年間の授業時間の60%以上ウクライナ語が年間の授業時間の80%以上
完全普通中等教育法(法律第463-IX号、2020年1月16日採択)第5条の制定時の条文から作成。どの教科をどちらの言語で教えるかは、国の基準に沿って各学校の教育課程で決める。私立学校は、公的な資金を受けていなければ授業の言語を自由に選べる(同条第10項)。

2019年4月25日の国家語法(法律第2704-VIII号)は、2018年9月1日より前にEUの公用語である少数民族の言語で学び始めた子どもについて、従来の規則で学べる期限を2023年9月1日まで延ばしました。ウクライナ語で学ぶ教科を少しずつ増やす、という条件つきです。この期限は、2023年6月10日の法律(第3143-IX号)でさらに2024年9月1日まで延ばされています。

2023年12月の改正で変わったこと

欧州委員会は2022年6月17日、ウクライナを加盟候補国とするよう勧めた意見の中で、七つの措置の一つに「ヴェネツィア委員会の勧告どおりに、民族的少数者に関する法的枠組みの改革を仕上げ、ただちに効果のある実施の仕組みを採択する」ことを挙げました。ウクライナは2022年12月13日に民族的少数者法(第2827-IX号)を採択しましたが、ヴェネツィア委員会は2023年6月の意見書(CDL-AD(2023)021)で、少数民族の言語による学校の段階的な移行をさらに延期し、2017年の意見に照らして見直すよう勧告しました。

最高会議は2023年12月8日、「民族的少数者(共同体)の権利に関する欧州評議会とその機関の専門的評価を考慮して」一部の法律を改める法律(第3504-IX号)を採択し、同月10日に施行されました。学校の言葉については、次の点が変わりました。

  • 教育法第7条と完全普通中等教育法第5条の第1項に、「EUの公用語である民族的少数者の言語で学ぶ学級では、国家語と並んでその言語を教育に使う権利が保障される」という一文が加わった
  • EUの公用語である少数民族の言語の学級では、基礎中等教育(5〜9年生)も専門中等教育(10〜12年生)も、その言語で学ぶことができる。ただし、ウクライナ語、ウクライナ文学、ウクライナ史の教科(専門中等教育では、これに「ウクライナの防衛」を加えた教科)はウクライナ語で学ぶ。ウクライナ語で学ぶ教科は、学校の判断で増やせる
  • 2018年9月1日より前にEUの公用語である少数民族の言語で学び始めた子どもは、期限なしに、普通中等教育を終えるまで従来の規則で学び続けられる
  • 私立の大学は、EUの公用語から授業の言語を自由に選べる(ウクライナ語は独立した科目として学ぶ)

EUの公用語でない少数民族の言語の学級については、5年生から上の学年で授業時間の80%以上をウクライナ語で行う、という2020年の定めが残りました。この法律の採択から6日後の2023年12月14日、欧州理事会はウクライナとの加盟交渉を始めることを決めています(EU加盟交渉の記事を参照)。

数字と条文を読むときに

ザカルパッチャ州の人数として使えるのは、2001年の国勢調査の数字だけです。ロシアによる2022年2月24日の全面侵攻のあと、国外に移った人も州内に避難してきた人もいますが、民族別の新しい公式の数はありません。ハンガリー語で授業をしている学校や学級の数も、この記事で扱った法律や意見書には書かれていません。

条文は2026年9月24日時点で最高会議の法令データベースに掲載されている版によります。教育法第7条は2024年6月にも改められ(英語の学習の項)、法律は戦時下でも改正が続いています。ウクライナ語以外の言語全般の扱いは国家語法の記事の「ウクライナ語以外の言語」、クリミア・タタール語など先住民族の言語はウクライナの先住民族法の記事にあります。

出典と記事の記録出典 15件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. 全ウクライナ国勢調査2001年 民族別の人口構成ハンガリー人15万6,600人・0.3%
    発行:ウクライナ国家統計委員会 確認日:2026-09-24
  2. 全ウクライナ国勢調査2001年 ザカルパッチャ州の民族別の人口構成ハンガリー人15万1,500人・12.1%、ベレホヴェ市48.1%
    発行:ウクライナ国家統計委員会 確認日:2026-09-24
  3. 教育法(法律第2145-VIII号、2017年9月5日採択、9月28日施行)第7条と最終・経過規定第3項第18・19号現行の条文と改正の注記
    発行:ウクライナ最高会議 確認日:2026-09-24
  4. 完全普通中等教育法(法律第463-IX号、2020年1月16日採択)第5条2020年1月16日の版と現行の版
    発行:ウクライナ最高会議 確認日:2026-09-24
  5. 国家語としてのウクライナ語の機能の確保に関する法律(法律第2704-VIII号)最終・経過規定第3項2019年7月16日の版。EUの公用語の少数民族の期限2023年9月1日
    発行:ウクライナ最高会議 確認日:2026-09-24
  6. 法律第3143-IX号教育法の経過規定の期限を2024年9月1日に変更
    発行:ウクライナ最高会議 確認日:2026-09-24
  7. 法律第3504-IX号2023年12月8日採択、12月10日施行。民族的少数者の権利に関する欧州評議会の専門的評価を考慮した改正
    発行:ウクライナ最高会議 確認日:2026-09-24
  8. 憲法裁判所決定第10-р/2019号2019年7月16日。教育法を合憲と判断
    発行:ウクライナ最高会議(法令データベース) 確認日:2026-09-24
  9. Opinion on the provisions of the Law on Education of 5 September 2017 which concern the use of the State Language and Minority and other Languages in Education, CDL-AD(2017)0302017年12月8〜9日採択。教育科学省の説明による735校・約40万人、第7条の分析、勧告
    発行:欧州評議会ヴェネツィア委員会 確認日:2026-09-24
  10. Opinion on the Law on National Minorities (Communities), CDL-AD(2023)0212023年6月9〜10日採択。勧告H:学校の移行の延期
    発行:欧州評議会ヴェネツィア委員会 確認日:2026-09-24
  11. Resolution 2189 (2017) The new Ukrainian law on education: a major impediment to the teaching of national minorities' mother tongues2017年10月12日採択
    発行:欧州評議会議員会議 確認日:2026-09-24
  12. Opinion on the EU membership application by UkraineQ&A、2022年6月17日。七つの措置
    発行:欧州委員会 確認日:2026-09-24
  13. Ukraine has stabbed Hungary in the back by amending its education act2017年9月7日
    発行:ハンガリー外務貿易省 確認日:2026-09-24
  14. Hungary will initiate review of EU-Ukraine Association Agreement2017年10月10日
    発行:ハンガリー外務貿易省 確認日:2026-09-24
  15. Hungary is calling for NATO to introduce a new policy with relation to Ukraine in the interests of protecting the Hungarian minority in Transcarpathia2018年5月24日
    発行:ハンガリー外務貿易省 確認日:2026-09-24

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