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文化・歴史/解説

ウクライナ語の声で配給証明を受けた、宮崎駿の9作品と『天気の子』

2019年から2021年にかけて、宮崎駿監督の9作品がウクライナ語の音声つきで映画館の配給証明書を受けました。『天気の子』は「吹き替え」、『ONE PIECE FILM RED』は「字幕」。国立映画庁の証明書の記録から、日本のアニメが映画館・テレビ・ビデオでどう届いてきたか、作品の題名の変化とあわせて見ていきます。

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オリュカのひとこと

日本のアニメは、ウクライナでどう届けられてきたのでしょう。最初の見出しで確かめられます。

2019年1月から2021年9月にかけて、宮崎駿監督の9作品が、ウクライナ語の音声を付けて映画館で配給するための国の証明書を受けました。ウクライナ国立映画庁(Держкіно)の配給証明書の記録によると、権利を受けたのは KISFF Films と Kyivmusicfilm の2社です。証明書の記録には、新海誠監督『天気の子』(証明書は2019年)と宮崎吾朗監督『アーヤと魔女』(同2021年)は「ウクライナ語に吹き替え」、『ONE PIECE FILM RED』(同2022年)と『THE FIRST SLAM DUNK』(同2023年)は「ウクライナ語の字幕」と書かれています。

この記録には、テレビ局やビデオ会社が日本のアニメの権利を受けた証明書も残っています。ここでは、国立映画庁が公開している証明書の記録をもとに、日本のアニメがウクライナ語でどう届いてきたかを、映画館・テレビ・ビデオの順に見ていきます(2026年10月時点)。映画館で外国映画をウクライナ語で上映する決まりそのものは映画館の言葉を決めてきた法律で扱っており、ここでは繰り返しません。

アニメのウクライナ語版と、国の配給証明書

ウクライナでは、映画を映画館で上映したり、テレビで放送したり、ビデオで売ったりするには、長く国の「配給・上映の権利の証明書(прокатне посвідчення)」が必要でした。国立映画庁は、これまでに出した証明書を「配給証明書(アーカイブ)」として公開しています。そのページによれば、証明書はメディア法の終わりの規定第31項により、2024年4月1日に効力を失いました。

一つひとつの記録には、証明書の番号、権利を受けた会社、期間、権利の種類(映画館、全国・地域・ケーブル・衛星のテレビ、ビデオの複製・販売・レンタル)、そして「追加情報」の欄があります。言葉についての記載は、この「追加情報」の欄に書かれていることがありますが、書かれていない記録も多くあります。

映画館:宮崎駿の9作品(2019〜2021年)

記録の「追加情報」に言葉の記載がある、日本のアニメ映画の映画館の証明書は次のとおりです。

作品(監督)記録のウクライナ語の題権利を受けた会社証明書の期間「追加情報」の言葉の記載
千と千尋の神隠しВіднесені привидамиKISFF Films2019年1月30日〜2021年1月31日озвучено укр. мовою
風の谷のナウシカНавсікая з долини вітрівKISFF Films2019年3月19日〜2020年3月28日озвуч. укр. мовою
もののけ姫Принцеса МононокеKISFF Films2019年6月4日〜2020年5月31日Озвучено українською мовою
天気の子(新海誠)Дитя погодиVolga Ukraina2019年10月24日〜2020年10月27日дубл. укр. мовою
ハウルの動く城Мандрівний замокKyivmusicfilm2020年1月15日〜2021年11月30日озв. укр. мовою
紅の豚Порко РоссоKyivmusicfilm2020年2月13日〜2022年1月9日Озвучено українською мовою
となりのトトロМій сусід ТотороKISFF Films2020年10月20日〜2022年3月31日озвуч. укр. мовою
魔女の宅急便Служба доставки Кікі, юної відьмиKISFF Films2021年1月28日〜2022年3月31日озвучено українською мовою
崖の上のポニョРибка Поньо на кручіKISFF Films2021年5月27日〜2022年3月31日озвучений українською мовою
アーヤと魔女(宮崎吾朗)Ая та відьмаSvoie kino2021年7月1日〜2024年7月8日дубл. укр. мовою
天空の城ラピュタНебесний замок ЛапутаKISFF Films2021年9月7日〜2022年3月31日озвучений українською мовою
ONE PIECE FILM RED(谷口悟朗)One Piece фільм: ЧервонийCool Connections2022年10月21日〜2024年8月1日субтитровано українською мовою
THE FIRST SLAM DUNK(井上雄彦)Перший Slum Dunk(記録の表記のまま)個人事業者2023年7月10日〜10月26日мова оригіналу, субтитровано українською мовою
出典:ウクライナ国立映画庁「配給証明書(アーカイブ)」の各記録(2026年10月31日確認)。監督の記載のない行は宮崎駿監督。社名はラテン文字に置き換えた。題名・作品名で探した範囲で、すべての証明書を網羅したものではない。

宮崎駿監督の9作品はどれも、KISFF Films か Kyivmusicfilm が権利を受けています。『千と千尋の神隠し』『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』は、期間が終わったあと、同じ会社がもう一度証明書を受けています(2020〜2021年)。

『ONE PIECE FILM RED』と『THE FIRST SLAM DUNK』の記録は字幕です。国家語法は、映画館が外国映画を原語・ウクライナ語字幕で上映することを、その映画館のひと月の上映回数の10%までと定めています。

  1. オリュカ

    二つの言葉は、どこが違うのかな。

  2. タブリ

    それぞれの意味は、この見出しの最初の段落にあるよ。

  3. ヨリクネ

    どの作品がどちらかは、前の見出しの表と見比べるといいね。

「озвучено」と「дубльовано」

表の記載には二つの言葉があります。宮崎駿監督の9作品の記録は「озвучено(オズヴチェノ)」、その略、または「озвучений」、『天気の子』と『アーヤと魔女』の記録は「дубльовано(ドゥブリョヴァノ)」の略です。ウクライナの映画法は、口の動きに合わせて別の言葉で録り直すことを「吹き替え(дублювання)」、口の動きに合わせずに元の音声を置き換えることを「ボイスオーバー(озвучення)」と分けて定義しています(映画館の言葉を決めてきた法律)。ただし、証明書の記録からは、それぞれの作品のウクライナ語の音声が実際にどう作られたかまでは分かりません。録音したスタジオや声優の名も、記録には書かれていません。

言葉の記載がない、それより前の記録

映画館の証明書は、2019年より前にもあります。『千と千尋の神隠し』は2003年2月18日から2004年8月20日までの証明書をキーウの会社が受けており、『君の名は。』は2017年10月18日から12月19日までの証明書を MMD という会社が受けています。どちらも「追加情報」に言葉の記載はなく、どの言葉で上映されたかは記録からは分かりません。

オリュカのひとこと

テレビでは、どんな作品が放送されてきたのでしょう。この見出しで確かめられます。

テレビ:『セーラームーン』から宮崎駿の作品まで

テレビの権利の証明書には、2000年代の初めから日本のアニメの名前が並びます。記録で確かめられたものの一部を挙げます。

  • 『美少女戦士セーラームーン』(ウクライナ語の題は Сейлормун):2000年11月15日から、ドニプロ(当時の名はドニプロペトロウシク)の会社の証明書に「Новий канал(ノーヴィ・カナル)で放送」と記載。2002年には Новий канал 自身が証明書を受けている
  • 『デジモンアドベンチャー』(Дигимон):2002年8月19日から、Новий канал
  • 『猫の恩返し』(Повернення кота):2005年7月20日から、Новий канал。「追加情報」に「ウクライナ語に吹き替え(дубл. укр. мовою)」と記載
  • 『もののけ姫』(2003年)と『千と千尋の神隠し』(2004年):1+1(オジン・プリュス・オジン)。2006年に『千と千尋の神隠し』と『ハウルの動く城』:Новий канал
  • 『新世紀エヴァンゲリオン』『NARUTO』『BLEACH』『DEATH NOTE』『ONE PIECE』(第1〜62話):2010〜2012年に、キーウの Khmarochos Media(Хмарочос Медіа)
  • 劇場版『ポケモン』の作品:2013〜2014年に ТЕТ(テト)。「1+1 メディアのグループのチャンネルで放送」と記載
  • 宮崎駿監督の9作品:2017年12月から、ТРК «Україна»(テレビ局「ウクライナ」)

これらの記録のうち、言葉の記載があるのは『猫の恩返し』だけです。ほかの作品がテレビでどの言葉で放送されたか、そもそも証明書の期間中に放送されたかどうかは、記録からは分かりません。

  1. オリュカ

    題が変わった作品が、あるのかな。

  2. スウネ

    どの作品かは、この見出しの最初に出ているよ。

  3. タブリ

    題の訳も、本文に一緒に並んでいるね。

同じ作品の、昔の題と今の題

記録を年の順に並べると、同じ作品のウクライナ語の題が変わっていることがあります。『ハウルの動く城』は、2005〜2017年のビデオとテレビの証明書では «Ходячий замок»(ホジャチー・ザモク、歩く城)、2020年と2021年の映画館の証明書では «Мандрівний замок»(マンドリウヌィ・ザモク、旅する城)です。『崖の上のポニョ』も、2010〜2017年の記録の «Рибка Поньйо на кручі» が、2021年の映画館の証明書では «Рибка Поньо на кручі» になっています。

ビデオ:VHS と DVD の時代

2000年代の記録には、ビデオの複製・販売の証明書も見つかります。オデーサの Inter-Film(Інтер-фільм)は2001年から劇場版『ポケモン』や『カウボーイビバップ 天国の扉』『東京ゴッドファーザーズ』『ハウルの動く城』を、キーウの Video-Galaktyka(Відео-Галактика)は2001年から『もののけ姫』を、それぞれ VHS・ビデオCD・DVD で出す証明書を受けています。これらの記録にも、言葉の記載はありません。

年表:日本のアニメと、ウクライナの配給証明書

年月日出来事典拠
2000年11月15日『美少女戦士セーラームーン』のテレビの証明書(Новий канал で放送と記載)証明書 29.6303.00Т
2003年2月18日『千と千尋の神隠し』の映画館の証明書(言葉の記載なし)証明書 29.0042.03К
2005年7月20日『猫の恩返し』のテレビの証明書。「ウクライナ語に吹き替え」と記載証明書 29.4132.05Т
2017年10月18日『君の名は。』の映画館の証明書(言葉の記載なし)証明書 29.3397.17К
2017年12月宮崎駿監督の9作品のテレビの証明書(ТРК «Україна»)証明書 29.4440.17Т〜29.4444.17Т、29.4446.17Т〜29.4448.17Т、29.4489.17Т
2019年1月30日『千と千尋の神隠し』の映画館の証明書。「ウクライナ語で озвучено」と記載証明書 29.0420.19К
2019年10月24日『天気の子』の映画館の証明書。「ウクライナ語に吹き替え」と記載証明書 29.4265.19К
2021年9月7日『天空の城ラピュタ』の映画館の証明書。宮崎駿監督の9作品がそろう証明書 29.3757.21К
2022年10月21日『ONE PIECE FILM RED』の映画館の証明書。「ウクライナ語の字幕」と記載証明書 29.1960.22К
2023年7月10日『THE FIRST SLAM DUNK』の映画館の証明書。「原語、ウクライナ語の字幕」と記載証明書 29.1296.23К
2024年4月1日メディア法により、配給・上映の権利の証明書が効力を失う国立映画庁の配給証明書(アーカイブ)のページ
出典:ウクライナ国立映画庁「配給証明書(アーカイブ)」(2026年10月31日確認)。日付は証明書の期間の始まり。
出典と記事の記録出典 19件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Прокатні посвідчення (архів)検索ページ。証明書がメディア法の終わりの規定第31項により2024年4月1日に効力を失った旨の表示、題名による検索
    発行:Державне агентство України з питань кіно(kino.usfa.gov.ua) 確認日:2026-10-31
  2. 証明書 29.0420.19К/29.3483.21КВіднесені привидами、KISFF Films、映画館、「озвучено укр. мовою」
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  3. 証明書 29.1262.19К/29.2132.20КНавсікая з долини вітрів、KISFF Films、映画館
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  4. 証明書 29.2213.19К/29.2131.20КПринцеса Мононоке、KISFF Films、映画館
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  5. 証明書 29.4265.19КДитя погоди、Volga Ukraina、映画館70本、「дубл. укр. мовою」
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  6. 証明書 29.0172.20К/29.4079.21КМандрівний замок、Kyivmusicfilm、映画館
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  7. 証明書 29.0694.20КПорко Россо、Kyivmusicfilm、映画館
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  8. 証明書 29.3870.20КМій сусід Тоторо、KISFF Films、映画館
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  9. 証明書 29.0373.21КСлужба доставки Кікі, юної відьми、KISFF Films、映画館
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  10. 証明書 29.2468.21КРибка Поньо на кручі、KISFF Films、映画館
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  11. 証明書 29.2804.21КАя та відьма、Svoie kino、映画館、「дубл. укр. мовою」
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  12. 証明書 29.3757.21КНебесний замок Лапута、KISFF Films、映画館
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  13. 証明書 29.1960.22КOne Piece фільм: Червоний、Cool Connections、映画館、「субтитровано українською мовою」
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  14. 証明書 29.1296.23КПерший Slum Dunk、映画館、「мова оригіналу, субтитровано українською мовою」
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  15. 証明書 29.0042.03К(Віднесені привидами、2003年、映画館、言葉の記載なし)と 29.3397.17КТвоє ім'я、MMD、2017年
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  16. 証明書 29.6303.00Т/29.2733.02ТСейлормун、テレビ、「Показ на "Новому каналі"」
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  17. 証明書 29.4132.05ТПовернення кота、Новий канал、テレビ、「дубл. укр.мовою」
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  18. 証明書 29.4440.17Т〜29.4448.17Т、29.4489.17Т宮崎駿監督の9作品、ТРК «Україна»、テレビ。Ходячий замок の題を含む
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31
  19. 証明書(Дигимон 2002年、Новий канал 2006年の2作、Студія 1+1 2003〜2004年、Хмарочос Медіа 2010〜2012年、ТЕТ 2013〜2014年、Інтер-фільм・Відео-Галактика のビデオ、Рибка Поньйо на кручі 2010〜2017年)の各記録
    発行:Державне агентство України з питань кіно 確認日:2026-10-31

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