33本の学生映画から始まった、キーウの映画祭「モロジスト」
キーウの国際映画祭「モロジスト」は、1970年に演劇大学の映画学部の学生作品を2日間で33本見せる上映会として始まりました。1993年に国際映画製作者連盟(FIAPF)に国際映画祭として登録され、2025年秋に第54回を開いています。始まりの経緯、「国際」になった時期、2020年の延期と2022年12月の開催まで、主催者と事典の記録から並べます。
オリュカのひとこと
キーウの映画祭は、どうやって始まったのでしょう。最初の見出しで確かめられます。
1970年のキーウで、映画を学ぶ学生の作品33本を2日間かけて見せる上映会が開かれました。キーウの国際映画祭「モロジスト」(Молодість、「若さ」の意味)の始まりです。映画祭は2025年10月25日から11月2日まで、第54回をキーウで開いています。
学内の上映会が国際映画祭になるまでの流れと、ここ数年の開催の記録を、『現代ウクライナ百科事典』(ЕСУ)の項目(執筆 В. М. ヴォイテンコ、2019年)、映画祭の公式サイトの沿革、国際映画製作者連盟(FIAPF)の資料から並べます。
始まりは学生作品の2日間
公式サイトの沿革によれば、モロジストは、いまのカルペンコ=カルィイ大学に新しくできた映画学部の学生作品を見せる上映として始まりました。キーウ演劇大学の学生の作品を集めた最初の上映はヴァディム・チュバソフとヴィクトル・イウチェンコが組織し、2日間で33本を見せた、と公式サイトは書いています。
ЕСУ は、1970年にキーウで、学生の短編を2日間見せる上映として始まったと書き、発起したのはキーウ演劇大学、ウクライナ映画人同盟、監督ミコラ・マシチェンコだとしています。誰が始めたのかの書き方は、公式サイトと ЕСУ で違います。
1970年代半ばになると、上映会はパウロフラードやクリヴィー・リーフなどウクライナの町を回るようになり、ほかのソ連の共和国の学生作品も加わりました(公式サイト)。ЕСУ も、1970年代半ばからほかの共和国の映画が競争部門に入り、ロシア、アルメニア、ジョージア、リトアニアなどの監督が受賞したと書いています。
国際映画祭へ
公式サイトによれば、ペレストロイカの時代に、ポーランドや東ドイツなどソ連の外の新人の作品や、大学で学ぶ外国人学生の作品が上映されるようになりました。ЕСУ は、1988年からウクライナ若手映画人組織(代表 М. パウロフ)が映画祭の運営を担ったとしています。
独立前後の数年は、続けることが難しい時期でした。公式サイトは、1991年には賞金を出せず、翌1992年には映画祭が開かれなかったと書いています。そして1993年、映画祭は国際映画祭として FIAPF に正式に登録されました(公式サイト)。ЕСУ は、1993年から現在の名前になり、総監督はアンドリー・ハルパフチ、主催は「モロジスト」基金、最高賞は彫刻家 С. ヴォロシンの設計による像「スキタイの鹿」になったと書いています。
オリュカ
モロジストは、いつから国際映画祭と呼べるのかな。
スウネ
資料ごとに何を節目にしているかが、この見出しの下に並んでいるよ。
タブリ
学生の上映会からの流れは、記事の初めの二つの見出しに戻るとたどれるよ。
「国際」になったのはいつか
「国際映画祭になった年」は、一つの年に決めにくい言い方です。資料ごとに、何を節目にしているかが違います。
- 国外の作品が加わった時期:公式サイトは、ペレストロイカの時代にソ連の外の新人の作品を上映し始めたとし、ЕСУ は、ソ連のほかの共和国の映画が1970年代半ばから加わったことに続けて、カナダ、ポーランド、チェコ、フランスなどの映画も競争部門や非競争部門で上映されたと書いています(その時期は書いていません)
- 国際映画祭としての登録:公式サイトは1993年に FIAPF に登録されたとしています
- 世界の作品を広く集めるようになった時期:ЕСУ は「ウクライナの独立が確立したあと」、世界中の映画が参加するようになったと書いています
1991年を国際化の年とする資料は、ここで挙げた資料の中にはありませんでした。
FIAPFの認定
FIAPF は、各国の映画製作者の団体が加わる国際組織で、映画祭の認定を行っています。FIAPF の認定映画祭の一覧には、ウクライナから「Molodist – Kyiv International Film Festival」が載っており、映画祭の頁は創設の年を1970年とし、競争部門と非競争部門、長編と短編を扱う映画祭としています(2026年9月27日時点)。映画祭自身は2025年の発表で、FIAPF の「専門映画祭」の区分で認定されたウクライナで唯一の映画祭だと書いています。
競争部門の中心は、長編のデビュー作、短編のデビュー作、学生作品を集める国際コンペティションです(2025年の映画祭の発表)。ЕСУ は、このほかにウクライナの短編を集める国内コンペティションがあるとしています。国の映画への支援の仕組みは映画支援法と公募の記事で扱っています。
オリュカ
応募や観客の数は、どこが数えたものなのかな。
スウネ
出した主体ごとに数字が違うことが、この見出しの下にあるよ。数え方の説明が無いことも書いてあるね。
ヨリクネ
国の映画への支援の仕組みは、すぐ上の段落のリンク先の記事へ寄り道できるよ。
2025年の数字は、誰が数えたか
第54回の規模を示す数字は、出した主体で少しずつ違います。FIAPF の頁は2025年の応募を1,977本(うち国外の作品89%)、公式部門に選ばれた作品を152本、観客を1万7,830人としています。映画祭は開幕の知らせで59か国158本・11部門と書き、開幕前の発表では約200本・45か国としていました。数え方(部門の範囲、長編と短編の別)は、どの資料も説明していません。
オリュカのひとこと
開かれなかった年も、あったようです。この見出しで確かめられます。
2019〜2025年の開催
この7年のあいだ、開かれなかった年はありません。ただし2020年は会期が動き、2022年は例年と違う12月に開かれました。公式サイトの発表(保存されたものを含む)から並べます。
| 回 | 会期 | 形・場所など | 典拠 |
|---|---|---|---|
| 第48回 | 2019年5月25日〜6月2日 | — | 公式サイト(2019年10月の保存版) |
| 第49回 | 2020年8月22〜30日 | 5月30日〜6月7日の予定を、2020年3月27日に延期と発表。映画館とオンラインの併用で264本 | 公式サイト(2020年4月の保存版、2020年10月27日の発表) |
| 第50回 | 2021年5月29日〜6月6日 | 受賞作の発表は6月7日付 | 2020年10月27日の発表、2021年11月の保存版 |
| 第51回 | 2022年12月1〜7日 | 映画館で開催 | 2022年11月14日の発表 |
| 第52回 | 2023年10月21〜29日 | 映画館「クラキウ」で、赤じゅうたんと式典なしで開幕 | 2023年の発表 |
| 第53回 | 2024年10月〜11月 | 開幕の知らせは10月27日付、映画人会館で44か国123本。受賞発表は11月2日付 | 2024年の発表 |
| 第54回 | 2025年10月25日〜11月2日 | 映画館「ジョウテニ」と映画人会館。授賞式は11月1日 | 2025年の発表 |
2022年の第51回について、映画祭は開催の発表で、ロシアの全面的な侵略、空襲警報、停電のなかでも映画館での開催にしたと書いています。2025年の第54回の開幕では、国家映画庁のアンドリー・オシポウ長官が挨拶しました(映画祭の発表)。
2026年9月時点の予定
映画祭の公式サイトが2026年9月時点で公開している規程によれば、第55回は2026年10月24日から11月1日までキーウで開かれる予定です。2023〜2025年と同じく、10月下旬の開幕です。会期や会場は公式サイトの最新の発表で確かめてほしいと映画祭自身も案内しています。ウクライナの映画の歩みはウクライナに関わる映画の記事、国の映画アーカイブはドヴジェンコ・センターの記事で読めます。
出典と記事の記録
出典・参考資料
- Молодість1970年に2日間の学生短編の上映として始まったこと、発起した主体、1988年からの運営、1993年からの名前と総監督・主催・賞の像、部門、1970年代半ばからの参加国。執筆 В. М. Войтенко、第21巻、2019年12月
発行:Енциклопедія Сучасної України(ウクライナ国立科学アカデミー・シェウチェンコ学術協会) 確認日:2026-09-27 - About us/Historyカルペンコ=カルィイ大学の映画学部の学生作品の上映として始まったこと、2日間・33本、1970年代半ばの巡回、ペレストロイカ期の国外作品、1991年と1992年、1993年のFIAPFへの登録、2010年の第40回
発行:Kyiv International Film Festival Molodist(公式サイト) 確認日:2026-09-27 - Molodist – Kyiv International Film Festival創設年1970、競争・非競争、長編・短編、2025年の応募・上映・観客の数
発行:FIAPF(国際映画製作者連盟) 確認日:2026-09-27 - Accredited Festivals認定映画祭の一覧にウクライナから「Molodist – Kyiv International Film Festival」
発行:FIAPF 確認日:2026-09-27 - 54th Kyiv IFF Molodist to take place in Kyiv despite Russia’s full-scale war against Ukraine2025年10月20日。会期10月25日〜11月2日、FIAPFの専門映画祭の区分、会場
発行:Molodist 確認日:2026-09-27 - The 54th Molodist Kyiv International Film Festival has opened in Kyiv2025年10月27日。55周年、59か国158本・11部門、国家映画庁長官の挨拶
発行:Molodist 確認日:2026-09-27 - Winners of the 54th Molodist Film Festival Announced in Kyiv2025年11月3日。11月1日の授賞式、グランプリの賞金5,000ドルと「スキタイの鹿」
発行:Molodist 確認日:2026-09-27 - 公式サイトのトップ2019年10月20日の保存版。第48回〈2019年5月25日〜6月2日〉、第49回の予定〈2020年5月30日〜6月7日〉
発行:Molodist(Internet Archive) 確認日:2026-09-27 - 公式サイトのトップ2020年4月2日の保存版。2020年3月27日付「第49回『モロジスト』を8月へ延期」、8月22〜30日
発行:Molodist(Internet Archive) 確認日:2026-09-27 - Пресреліз щодо 50-го сезону КМКФ «Молодість»2020年10月27日。第50回を2021年5月29日〜6月6日とする発表、2020年に映画館とオンラインの併用で264本を上映したこと
発行:Molodist(Internet Archive) 確認日:2026-09-27 - Оголошено програму 51-го КМКФ «Молодість»2022年11月14日。第51回を12月1〜7日に映画館で開くこと
発行:Molodist(Internet Archive) 確認日:2026-09-27 - Без червоної доріжки та урочистостей: у кінотеатрі «Краків» відкрився 52-й КМКФ «Молодість»(2023年10月22日)と、会期を10月21〜29日とする発表
発行:Molodist(Internet Archive) 確認日:2026-09-27 - У Києві відкрився 53-й Міжнародний кінофестиваль «Молодість»(2024年10月27日。映画人会館で開幕、44か国123本)と、2024年11月2日付の受賞発表の見出し
発行:Molodist(Internet Archive) 確認日:2026-09-27 - About us/Regulations 2026第55回を2026年10月24日〜11月1日にキーウで開くこと
発行:Kyiv International Film Festival Molodist(公式サイト) 確認日:2026-09-27
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