本文へ移動

ウクライナの人・文化・社会・未来を、日本と世界につなぐ

Ukrainavi Ukrainavi

社会を知る/データ・資料

ウクライナの人口の公式推計は、2022年1月1日で止まっている

ウクライナ国家統計局の人口推計は、全面侵攻前の2022年1月1日の4,117万人が最新のままです。その後の人口は、国連の推計・予測、政府の戦略文書に引かれた研究所の推計など、範囲も数え方も違う数字で語られています。政府の文書に引かれた2024年7月の推計で3,110万人、国連の予測で3,968万人。なぜこれほど違うのかを、定義から説明します。

ウクライナ国家統計局が公開している人口の推計で、いちばん新しいものは2022年1月1日時点です。全面侵攻の54日前にあたります。2026年9月の時点で、同局のデータ集「人口の規模と構成」に載っているのは、この2022年1月1日までの推計でした。

それから4年半、ウクライナの人口を示す数字は、国連、ウクライナ政府の戦略文書、研究機関と、統計局以外のところから出ています。それぞれが数えている範囲と時点が違うので、同じ「人口」でも大きく食い違います。

同じ2022年1月1日に、四つの数字

まず、全面侵攻の直前の同じ日付について、三つの機関の数字を並べます。

数字出どころ数えているもの
4,116万7,335人ウクライナ国家統計局「現在人口」(наявне населення)の推計。クリミア自治共和国とセヴァストポリ市を除く
4,099万7,698人ウクライナ国家統計局「常住人口」(постійне населення)の推計。同じくクリミアとセヴァストポリを除く
4,200万人プトゥハ人口学・生活の質研究所(ウクライナ国立科学アカデミー)の推計。政府の戦略文書に引用範囲の説明は引用の中にない
4,407万3千人国連「世界人口推計2024年版」その時点で国内にいる人(de facto)。クリミアを含む
いずれも2022年1月1日時点。国家統計局は「ウクライナの現在人口」「ウクライナの性別・年齢別常住人口」(いずれも2022年刊)、研究所の推計は内閣令第922-р号(2024年9月30日)の本文、国連は世界人口推計2024年版の年初人口。2026年9月24日確認。

統計局の二つの数字は、定義の違いから生まれています。同局の説明では、「現在人口」はその時点でその地域にいる人で、一時的に滞在している人(本来の居所を離れて12か月以内の人)を含みます。「常住人口」はその地域に常住している人で、12か月以内の一時的な不在者を含みます。どちらも、最後の国勢調査の結果を起点に、出生・死亡の登録と住所の登録の変更から計算した推計です。統計局が国連に届け出た資料によれば、最後の国勢調査は2001年12月5日で、2003年以降の人口は「暫定値」の扱いです(ウクライナはどんな国か──面積、人口、言葉、暮らしも参照)。

統計局は常住人口の刊行物の中で、ドネツィク州とルハンシク州の都市ごとの数字を「計算(推計)が正確でない」として載せていません。

国連の数字はクリミアを含み、国連人口部が各国の国勢調査、出生・死亡の登録、標本調査を使って独自に推計した値です。統計局の数字との300万人近い差のうち、どれだけがクリミアの分なのかは、公表資料からは分かりません。

国連の推計は、2023年までが推計、2024年からは予測

国連人口部の「世界人口推計(World Population Prospects)」の、2026年9月時点の最新版は2024年7月に公表された2024年版です。この版は1950年から2023年までを「推計」、2024年以降を「予測」として分けています。

時点人口区分
2022年1月1日4,407万人推計
2022年7月1日4,105万人推計
2023年1月1日3,802万人推計
2024年1月1日3,744万人予測(中位)
2026年1月1日3,968万人予測(中位)
国連人口部「世界人口推計2024年版」(2024年7月)。クリミアを含む。千人単位の値を万人に丸めた。2026年9月24日確認。

2022年の1年間の純移動(入ってきた人から出ていった人を引いた数)は、マイナス570万人と推計されています。一方、2024年はプラス115万人、2025年はプラス170万人です。この2年の値は予測の前提として置かれた純移動で、実際に入国・出国した人を数えたものではありません。2026年1月1日の3,968万人も、この前提の上に立った数字です。どのような考え方でこの前提が置かれたかは、この記事では確認していません。

政府の戦略文書に書かれた「3,110万人」

ウクライナ内閣は2024年9月30日、内閣令第922-р号で「2040年までの人口発展戦略」を承認しました。その本文は、プトゥハ人口学・生活の質研究所の推計として、2022年1月1日の人口を4,200万人、2024年7月の人口を3,580万人としたうえで、そのうち「国家機関が権限を完全に行使している地域」の人口を3,110万人と書いています。

同じ文書は、国外にいる人の数も独自に見積もっています。国連(2022年分)と国家国境警備庁(2023〜2024年分)のデータで、全面侵攻から2024年5月31日までに3,439万人が出国し、3,091万人が入国したので、出たまま戻っていない人は348万人。これに、ロシアとベラルーシへ移送されたか自ら移った人(国連難民高等弁務官事務所〈UNHCR〉の報告で120万人)などを加えて、国外にいる人を約500万人としています。

将来については、何も新しい手を打たない「慣性シナリオ」で2041年1月1日に2,890万人(1991年の国境の範囲)、戦略を実行する「変化のシナリオ」で3,390万人という研究所の見通しを載せています。同じ文書は、占領された地域で人口の動きを把握できないこと、戦争の先行きに複数の筋書きがあることから、人口の予測は難しいとも書いています。

国外にいる人の数も、数え方で動く

国外に避難した人の数としてよく使われるのが、UNHCRの統計です。UNHCRの統計データベースで、ウクライナを出身国とする難民の数(各年末)は次のとおりです。

年末難民うちドイツうちポーランドうちロシア
2022年568万4,177人
2023年596万362人122万7,554人
2024年512万36人6,894人
2025年522万4,131人117万3,192人97万2,287人5,488人
UNHCR 難民統計データベース(Refugee Data Finder の API、出身国=ウクライナ)。「—」はこの記事で取り出していない値。2026年9月24日確認。

2023年末から2024年末にかけての減少のほとんどは、ロシアにいるとされる人の数が122万人余りから7千人弱になったことによります。この変化の理由は、データベースの数値には付記されていません。年ごとの合計を比べるときは、国別の内訳まで見ないと読み違えます。

国内についても同じです。UNHCRのデータベースでは、2025年末の国内避難民は371万2千人です。内閣の戦略文書は、2024年7月時点で国に登録された国内避難民を470万人としています。前者は国際機関のデータベースの数字、後者は国の登録の数で、時点も数え方も違います。「難民」「国内避難民」「避難者」の区別は、難民、国内避難民、避難者 — 同じ意味で使わないためにで扱っています。

日本にいる人については、UNHCRのデータベースは2025年末の難民を2,346人としています。日本政府の数字とその定義は、日本に避難したウクライナの人は2,902人、いま暮らしているのは1,931人で扱っています。

数字を使うときに添えるもの

「ウクライナの人口は何人か」という問いには、一つの答えがありません。数字を引くときは、少なくとも次の四つを添える必要があります。

  • 時点:2022年1月1日の推計か、2024年7月の推計か、予測か。
  • 範囲:クリミアを含むか。2022年以降に占領された地域を含むか。政府が管理する地域だけか。
  • 数え方:その時点で国内にいる人か、ふだん住んでいる人か。国外にいる人はどちらに入るか。
  • 出どころ:統計局の公式推計か、研究機関の推計か、国際機関の推計・予測か。

統計局の公式推計が止まったままであることは、それ自体が、戦争のもとで人口を数えることの難しさを示しています。ウクライナ政府の文書が示す「3,110万人」と、国連の予測「3,968万人」の間には約860万人の開きがありますが、この二つは範囲も時点も性格も違い、どちらかが誤っているわけではありません。

出典・参考資料

  1. Population size and structure(データ集。刊行物は2022年1月1日時点までを掲載)
    発行:ウクライナ国家統計局 確認日:2026-09-24
  2. Number of Present Population of Ukraine(刊行物一覧。2020〜2022年1月1日時点の3冊)
    発行:ウクライナ国家統計局 確認日:2026-09-24
  3. Чисельність наявного населення України на 1 січня 2022 року(現在人口41,167,335人、クリミアとセヴァストポリを除く、推計の方法、定義)
    発行:ウクライナ国家統計局 確認日:2026-09-24
  4. Розподіл постійного населення України за статтю та віком на 1 січня 2022 року(常住人口40,997,698人、ドネツィク州・ルハンシク州の都市別を掲載しない理由、常住人口の定義)
    発行:ウクライナ国家統計局 確認日:2026-09-24
  5. Demographic Yearbook: Questionnaire on Population Estimates, Part 2: Metadata — Ukraine, reporting year 2022(最後の国勢調査2001年12月5日、2003年以降は暫定値)
    発行:国連統計部(記入者はウクライナ国家統計局) 確認日:2026-09-24
  6. Про схвалення Стратегії демографічного розвитку України на період до 2040 року(内閣令第922-р号、2024年9月30日。研究所の推計42百万・35.8百万・31.1百万、出入国34.39百万・30.91百万・3.48百万、約5百万、登録国内避難民4.7百万、2041年の28.9百万・33.9百万)
    発行:ウクライナ内閣(最高会議の法令データベース) 確認日:2026-09-24
  7. World Population Prospects 2024: Demographic Indicators(GEN/01/REV1、Estimates 1950-2023・Medium variant。ウクライナの年初人口・年央人口・純移動、注記15「クリミアを含む」)
    発行:国連経済社会局人口部 確認日:2026-09-24
  8. World Population Prospects 2024(トップページ。2024年版が第28版、国勢調査・登録・標本調査による推計)
    発行:国連経済社会局人口部 確認日:2026-09-24
  9. Glossary of Demographic Terms(Population=de facto population)
    発行:国連経済社会局人口部 確認日:2026-09-24
  10. Refugee Data Finder API(出身国=ウクライナ。2022〜2025年末の難民数、国内避難民、2025年末の受入国別〈ドイツ・ポーランド・ロシア・日本〉、2023・2024年末のロシア)
    発行:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) 確認日:2026-09-24

記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。