本文へ移動

ウクライナの人・文化・社会・未来を、日本と世界につなぐ

Ukrainavi Ukrainavi

ビジネス・復興/解説

原発のタービンをつくるハルキウの工場、旧トゥルボアトム

ハルキウで1934年に稼働したタービン工場「トゥルボアトム」は、原子力・火力・水力の発電所のタービンをつくってきました。2021年に合併して社名を変え、株式の75%あまりを国が持つまま、内閣の民営化の一覧に載っています。工場の歩み、つくっているもの、国の持ち分、全面侵攻のもとでの動きをたどります。

画像:Ukrainavi

オリュカのひとこと

民営化の一覧に載っていれば、売却の時期も決まっているのでしょうか。国の持ち分の節で確かめられます。

ハルキウに、発電所のタービンを90年以上つくり続けている工場があります。長く「トゥルボアトム」(Турбоатом)の名で知られ、2021年に社名を「ウクライナ・エネルギー機械」(Українські енергетичні машини、略称ウクルエネルホマシーヌィ)に変えました。株式の75%あまりを国が持つ株式会社で、2026年9月時点で、内閣が決めた「大規模民営化の対象の一覧」に載っています。

工場の歩みは会社の沿革とInternet Encyclopedia of Ukraine(カナダ・アルバータ大学のウクライナ研究所=CIUS発行。以下IEU)で、国の持ち分と民営化の扱いはウクライナ内閣の決定で、2026年9月時点までの動きは会社の発表で追います。

1929年に建設が始まり、1934年に稼働

会社の沿革によれば、工場の建設は1929年に始まり、1932年5月1日に最初の部分が稼働しました。設計上の能力は、蒸気タービンで年150万キロワットでした。1934年1月21日に「ハルキウ・タービン発電機工場」(ХТГЗ)として全体が稼働し、会社はこの日を創立の日としています。IEUのハルキウの項目も、1934年にハルキウ・タービン工場が生産を始めたと書いています。当時のハルキウはソ連ウクライナの首都で、同じ時期にハルキウ・トラクター工場(1931年)などの大工場が次々に稼働しました。

沿革によれば、工場はハルキウが占領される3日前の1941年10月21日まで操業し、疎開しました。主な設備と働き手は、ウラルのスヴェルドロフスク(現在のロシアのエカテリンブルク)に移されています。1943年8月23日にハルキウが解放されると再建が始まり、1946年1月に戦前の生産面積に戻りました。

原発・火力・水力のタービン

会社の説明では、つくっているのは火力発電所・熱電併給所・原子力発電所の蒸気タービンと、水力発電所・揚水発電所の水車(水力タービン)です。年に蒸気タービン800万キロワット分、水力タービン200万キロワット分をつくる能力があり、設計・研究から製造・組み立て・試験・出荷まで工場の中で行う、としています。

IEUはこの工場を「火力・水力・原子力発電所のタービンをつくる、世界最大級の工場の一つ」と書き、2000年にはウクライナの大型タービンのすべてをハルキウがつくっていた、としています。この評価は事典によるもので、ほかの国のメーカーと比べた数字は示されていません。

沿革が挙げる仕事の例は次のとおりです。

  • 1996〜2002年、ドニプロ川の水力発電所群(キーウ、ドニプロ、カホウカなど)の改修の第1段階に、水車18組を納める。2003〜2017年の第2段階では、水力発電会社ウクルヒドロエネルホの6つの発電所で45基の改修にかかわる
  • 1996〜2003年、ハンガリーのパクシュ原発とフィンランドのロヴィーサ原発のタービンを、入札で受注して近代化する
  • 2002年、インド原子力発電公社と、カイガ原発・ラージャスターン原発の4基分のタービン設備の契約を結び、2006年に納め終える

ウクライナの原子力発電所の数や、ロシアに占拠されたザポリッジャ原発の状況は、ウクライナの原子炉は15基の記事にまとめています。

2021年の合併と、国の持ち分

2021年8月26日、内閣は決定(第1005-р号)で、同じハルキウの電機メーカー「エレクトロヴァジマシュ」をトゥルボアトムに合併させる国有財産基金の提案を承認しました。同じ決定で、トゥルボアトムを「大規模民営化の対象の一覧」に加えています。一覧に書かれた国の持ち分は75.22407664%です。

続く10月6日の内閣決定(第1228-р号)は、社名が変わった「ウクライナ・エネルギー機械」について、国の株主としての権利を内閣自身が行使すると決め、国有財産基金に、合併の手続きが終わったあと(遅くとも2021年12月28日まで)75.22407664%の株式を内閣の管理に移すよう命じました。民営化の一覧でも、この会社は国有財産基金の欄から「内閣」の欄に移されています。

2026年9月24日時点で有効な一覧(2025年2月14日版)にも、この会社は国の持ち分75.22407664%とともに載っています。ただし、一覧に載っていることは、売却の時期や方法が決まっていることを意味しません。この記事の時点で、売却の入札の告知は確認できていません。

なお、2019年11月20日の内閣決定(第950号)の時点では、トゥルボアトムは「経済と国の安全にとって戦略的な意義をもつ国有財産の一覧」にも載っていました。

ロシアとつながる株主

トゥルボアトム自身は2021年5月の発表で、株式の5.59%を持つ会社(BISCONE LIMITED)について、ロシアの重電大手「シロヴィエ・マシーヌィ」と関係があり、実質的な所有者はロシアの実業家アレクセイ・モルダショフ氏だと説明しました。会社によれば、同氏と同社はウクライナの国家安全保障国防会議の制裁の対象で(2018年と2019年の大統領令で発効)、会社は配当の支払いを止めていました。この株式がその後どう扱われたかは、この記事では確認できていません。

全面侵攻のもとで

ハルキウは、2022年2月24日に始まったロシアによる全面侵攻のあと、繰り返し攻撃を受けてきた都市です。会社は2024年4月22日の発表で、監査役会が4月18日に、西部のザカルパッチャ州・リヴィウ州・チェルニウツィー州に支所を開く計画を決めたと明らかにしました。理由として挙げたのは、ウクライナ国内の部品や鋼材の調達先を失い国外から買う必要が出たこと、EUとの国境に近いほうが輸出や資材の運搬に有利なこと、そして、ロシアによるミサイル攻撃が増えてハルキウの電力供給が不安定になり、停電で生産が止まる危険を減らす必要があることです。会社は、本社はハルキウに残り、登記上の住所も変えないとしています。

2026年に入っても、会社は国内の発電会社との取引を発表しています。2月19日には、水力発電会社ウクルヒドロエネルホと、国際復興開発銀行(世界銀行)の融資による事業で設備を納める契約を結びました。8月28日には、経済・環境相、国家安全保障国防会議の書記、ハルキウ州軍政の長が工場を訪れ、戦時下で操業を続けるための国の支援などを話し合った、と会社は伝えています。

電力網への攻撃の規模や、失われた発電能力については、発電所が狙われ続ける国で、電気を小さく分けてつくるで扱っています。

出典と記事の記録出典 13件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. Історія1929年の建設開始、1932年5月1日の第1期、1934年1月21日の稼働、1941年の疎開、1943年8月23日の解放と再建、1946年1月、ドニプロ川の水力発電所の改修、パクシュ・ロヴィーサ、インドの原発
    発行:АТ «Українські енергетичні машини» 確認日:2026-09-24
  2. Підприємство製品、年間の製造能力、所在地
    発行:АТ «Українські енергетичні машини» 確認日:2026-09-24
  3. Заява пресслужби2024年4月22日。西部3州の支所の計画、監査役会の4月18日の決定、理由
    発行:АТ «Українські енергетичні машини» 確認日:2026-09-24
  4. Партнерство, що працює на Україну: Укргідроенерго та Українські енергетичні машини посилюють співпрацю2026年2月19日の契約、世界銀行の融資による事業
    発行:АТ «Українські енергетичні машини» 確認日:2026-09-24
  5. Відбулася робоча зустріч урядової делегації…2026年8月28日の政府代表団の訪問
    発行:АТ «Українські енергетичні машини» 確認日:2026-09-24
  6. З Днем заснування акціонерного товариства «Українські енергетичні машини»2026年1月の92周年
    発行:АТ «Українські енергетичні машини» 確認日:2026-09-24
  7. АТ «Турбоатом» повідомляє…2021年5月の発表。5.59%の株主、制裁、配当。ウェブアーカイブの2021年5月25日の保存版
    発行:АТ «Турбоатом» 確認日:2026-09-24
  8. Розпорядження КМУ від 26.08.2021 № 1005-рエレクトロヴァジマシュの合併の承認、大規模民営化の一覧への追加、75.22407664%
    発行:Кабінет Міністрів України 確認日:2026-09-24
  9. Розпорядження КМУ від 06.10.2021 № 1228-р国の株主の権利を内閣が行使、株式の移管、一覧の欄の移動
    発行:Кабінет Міністрів України 確認日:2026-09-24
  10. Розпорядження КМУ від 17.11.2021 № 1443-р1228-р号と一覧の改正、施行日
    発行:Кабінет Міністрів України 確認日:2026-09-24
  11. Розпорядження КМУ від 16.01.2019 № 36-р «Про затвердження переліку об’єктів великої приватизації державної власності»2025年2月14日版。内閣の欄のウクライナ・エネルギー機械、75.22407664%
    発行:Кабінет Міністрів України 確認日:2026-09-24
  12. Постанова КМУ від 20.11.2019 № 950戦略的な意義をもつ国有財産の一覧の改正。АТ «Турбоатом»
    発行:Кабінет Міністрів України 確認日:2026-09-24
  13. Kharkiv1934年のハルキウ・タービン工場の生産開始、世界最大級の工場の一つという記述、2000年の大型タービンの生産、首都の時代の工業化
    発行:Internet Encyclopedia of Ukraine(CIUS) 確認日:2026-09-24

記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。