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ビジネス・復興/解説

約20年続いた農地の売買禁止。期限を延ばした法律は10本

ウクライナでは2001年から2021年7月まで、多くの農地を売ることができませんでした。1990年代に農民へ配られた土地の「持ち分」、期限を書き換え続けた法律、2018年に欧州人権裁判所が財産権の侵害と判断した判決、2020年の法律までを、法令と判決文でたどります。

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オリュカのひとこと

農民に配られた土地の「持ち分」とは、何だったのでしょう。最初の見出しで確かめられます。

ウクライナでは2021年7月1日まで、多くの農地を売ることができませんでした。禁止は2001年に「当分のあいだ」として始まり、期限が来るたびに法律で延ばされ、約20年続きました。ウクライナではこれを「土地のモラトリアム」(земельний мораторій)と呼んできました。

なぜ禁止が始まり、どう延ばされ、何がそれを終わらせたのか。1990年代の土地改革から、2018年の欧州人権裁判所の判決、2020年の法律までを、法令の本文と判決文でたどります。

1990年代、農民に配られた「持ち分」

ソ連のウクライナでは、土地はすべて国のものでした。欧州人権裁判所の判決がまとめた経緯によれば、1990年12月18日の土地法典で、地方議会が個人に土地を渡せるようになりました。1995年8月8日の大統領令第720/95号は、集団農場(コルホーズなどを改めた「集団農業企業」)の土地を、場所を決めない面積の「持ち分」(земельна частка (пай)、パイ)として、農場の働き手や元の働き手、農村の学校・病院で働く人などに分ける仕組みを定めました。1999年12月3日の大統領令第1529/99号は、2000年4月までに集団農業企業を解散させ、土地の持ち分と財産を分けるよう求めました。

最高会議の2003年5月22日の決議第882-IV号によれば、持ち分の証書を受け取った国民は687万人で、2003年3月1日までに317万人(47.2%)が、証書を実際の区画の所有権の証書に替えていました。州によって差が大きく、キロヴォフラード州では96%が区画の証書を受け取ったのに対し、ジトーミル州は13%でした。証書のうち10万7千件は、すでに売られたり贈られたりしていた、と決議は書いています。

2001年、禁止が始まる

最初の禁止は、2001年1月18日の法律第2242-III号「土地の持ち分(パイ)の譲渡に関する取引について」です。土地法典が持ち分の扱いを定めるまで、持ち分の持ち主は売買や贈与などで持ち分を手放せない、と定めました。相続と、国や公共の必要のための買い取りは例外でした。

同じ年の10月25日に新しい土地法典(第2768-III号)が制定され、2002年1月1日に施行されました。経過規定の第15項は、農家の経営や商業的な農業生産のための土地を持つ国民・法人と、持ち分を持つ国民は、2005年1月1日まで土地や持ち分を売ったり、ほかの方法で手放したりできないと定めました。交換、相続、公共の必要による取り上げは例外です。

オリュカのひとこと

売買の禁止の期限は、何度も書き換えられたようです。この年表で確かめられます。

年表:期限の書き換え

2005年の期限が近づくと、最高会議は経過規定の第15項を書き換えて期限を延ばしました。その後も同じことが繰り返されました。

法律(日付)禁止の期限ほかに変わったこと典拠
第2242-III号(2001年1月18日)土地法典が持ち分の扱いを定めるまで持ち分の売買・贈与などを禁止法律の本文
土地法典 第2768-III号(2001年10月25日)2005年1月1日まで商業的な農業生産の土地と持ち分の売却などを禁止制定時の条文
第2059-IV号(2004年10月6日)2007年1月1日まで交換も例外から外す法律の本文
第3415-IV号(2006年2月9日)(変更なし)禁止のあいだに結んだ譲渡の取引(委任状を含む)を無効とする法律の本文
第490-V号(2006年12月19日)2008年1月1日まで。売買の開始は、土地台帳の法律と土地市場の法律の施行が条件個人の副業の農地にも広げ、用途の変更も禁止法律の本文
第107-VI号(2007年12月28日)と第309-VI号(2008年6月3日)土地台帳の法律と土地市場の法律の施行まで2008年の国家予算法の変更は2008年5月22日に憲法裁判所が違憲とし、同じ内容を第309-VI号で定め直した土地法典の改正注記、判決文
第1783-VI号(2010年1月19日)同上、ただし2012年1月1日より前には解かない―法律の本文
第4174-VI号(2011年12月20日)2013年1月1日まで。売買の開始は土地市場の法律が条件―法律の本文
第5494-VI号(2012年11月20日)農地の流通に関する法律の施行まで、ただし2016年1月1日より前には解かない内閣に6か月以内の法案の提出を求める法律の本文
第767-VIII号(2015年11月10日)同上、2017年―法律の本文
第1669-VIII号(2016年10月6日)同上、2018年―法律の本文
第2236-VIII号(2017年12月7日)同上、2019年―法律の本文
第2666-VIII号(2018年12月20日)同上、2020年―法律の本文
第552-IX号(2020年3月31日)2021年7月1日から売買を認める第15項を新しい内容に置き換える法律の本文
各法律の本文と土地法典の経過規定第15項の改正注記(最高会議の法令データベース、2026年9月閲覧)、欧州人権裁判所の判決(2018年5月22日)の表による。

何回延長されたと数えるか

延長の回数は、何を数えるかで変わります。土地法典の第15項の改正注記には、2020年の第552-IX号を含めて15本の法律が並んでいます。このうち禁止の終わりの日を動かしたのは、2004年から2018年までの10本です(無効になった2008年の予算法を除く)。残りは、取引の無効(2006年2月)、生産分与契約の投資家に渡した土地の用途変更(2012年10月の第5406-VI号)、公有地の扱い(2018年7月の第2498-VIII号)など、期限以外の変更でした。

  1. オリュカ

    禁止を解く条件になった法律の名前は、どう変わってきたのかな。

  2. タブリ

    条文が挙げた法律の名前の移り変わりは、この見出しの下にあるよ。

  3. ヨリクネ

    「モラトリアム」という呼び名がどこから来ているかも、この見出しの下の終わりで寄り道できるよ。

「土地市場法」から「農地の流通に関する法律」へ

禁止を解く条件として条文が挙げた法律の名前も変わりました。2006年の改正では「土地市場について」の法律、2012年11月の改正からは「農地の流通について」の法律です。判決文によれば、最高会議は2011年12月9日に「土地市場について」の法案を第一読会で可決しましたが、その後は審議が進まなかったとみられ、審議の中では法律の名前を改める案が出ていました。「モラトリアム」という言葉は、ここで挙げた条文には出てきません。条文は「売ったり手放したりできない」「認めない」という書き方で、判決文はこの禁止を「ウクライナで一般に土地のモラトリアムと呼ばれている」と説明しています。

  1. オリュカ

    判決は、この禁止のどこを問題にしたのかな。

  2. シメロ

    判決の考え方を一本でつかむなら、まずこの見出しの下の引用とその前の段落から読もう。

  3. スウネ

    判決が求めなかったことも、引用の後の段落にあるね。

2018年、欧州人権裁判所の判決

この禁止を、欧州人権条約の財産権の保護(第1議定書第1条)に反すると判断したのが、2018年5月22日の欧州人権裁判所の判決「ゼレンチュクとツィツュラ対ウクライナ」(申立番号846/16と1075/16)です。第4小法廷の7人の裁判官が全員一致で判断し、判決は2018年8月22日に確定しました。

申立人の2人は、1947年生まれと1939年生まれです。どちらも母親が受け取った土地の持ち分を相続し、区画として受け取った農地(リウネ州で2.5917ヘクタール、テルノーピリ州で3.41ヘクタール)を、会社に貸していました。2人は、禁止のために土地を売れず、財産権を侵害されていると訴えました。

政府は、富裕な個人や敵対的な勢力への土地の集中、耕作の放棄、農村の人々が土地を失って貧しくなることを防ぎ、国と食料の安全を守るための禁止だと主張し、申立人は制限を知りながら土地を相続したとも反論しました。判決は、禁止がこうした目的に役立つという国の判断は「明らかに合理的な根拠を欠く」とはいえないと認めたうえで(第108段落)、2007年12月と2008年6月の法律で具体的な終わりの日が消え、禁止が事実上無期限になったのに、その理由が示されていないと指摘しました(第117・119段落)。期限が繰り返し延ばされたことによる先の見えなさそのものが持ち主の負担を重くし、所有権は実際には不安定で失われうるものになったとも述べています(第146段落)。

裁判所は、申立人が、当局が自ら定めた目標と期限を果たせなかったことの負担を、個人として負わされてきたと結論づける。(中略)裁判所は、申立人に課された負担は過大であると考える。

欧州人権裁判所「ゼレンチュクとツィツュラ対ウクライナ」判決 第147段落(英語の原文からの訳)

判決は、問題が法律の状態そのものにあるとして、ウクライナに、農地の持ち主と社会全体の利益のあいだで公正な均衡をとる立法などの一般的な措置を求めました(第150段落)。ただし、均衡のとり方は国が選べるとし、「この判決は、ウクライナで制限のない農地市場をただちに導入しなければならないという意味に理解されるべきではない」とも書いています。慰謝料は違反の認定で足りるとし、訴訟の費用として各申立人に3,000ユーロを支払うよう命じました。

判決文によれば、その少し前の2018年2月14日、ウクライナの憲法裁判所は、禁止の延長を違憲とするよう求めた55人の議員の申し立てを、理由の書き方が足りないとして、中身に入らずに退けていました。

2020年の法律と、2021年の開放

最高会議は2020年3月31日、法律第552-IX号「農地の流通の条件に関する一部の法律の改正について」を可決しました。法律は2021年7月1日に施行され、この日から国民は1人100ヘクタールまで農地を買えるようになりました。2024年1月1日からは、ウクライナ国民・国・地方の共同体だけが出資するウクライナの法人も、1万ヘクタールまで買えるようになっています。

外国人と外国籍の出資者がいる法人は、2026年9月時点でも農地を買えません。土地法典第130条は、外国籍の出資者や最終的な受益者がいる法人が農地を買えるのは、国民投票で承認された日からだとしています。一方、全ウクライナ国民投票法(2021年、第1135-IX号)の第20条は、戒厳令のあいだは国民投票を決めることも行うことも禁じています。戒厳令は2026年7月13日の大統領令で、8月2日から90日間延長されました。戒厳令のもとで止まっていることは戒厳令の記事にあります。

開放のあとの取引

国の測地・地図・地籍庁(Держгеокадастр)の2026年3月4日の発表によれば、2021年7月1日から2026年3月3日までに結ばれた農地の売買契約は33万4,803件、面積は合わせて100.1万ヘクタールでした。同庁はこれを、かつて禁止の対象だった土地の5.8%にあたるとし、大部分はいまも貸し出されていると説明しています。1ヘクタールの平均価格は2026年初めの時点で6万4,631フリヴニャ(同庁の換算で1,501米ドル)で、この期間にフリヴニャ建てで96%上がったとしています。数字はいずれも同庁の発表で、第三者の集計ではありません。

ウクライナの農地でとれる主な作物の収穫量と作付面積は、三大作物の収穫量の記事にあります。

出典と記事の記録出典 10件 · AIの利用 · 運営体制

出典・参考資料

  1. CASE OF ZELENCHUK AND TSYTSYURA v. UKRAINEApplications nos. 846/16 and 1075/16、2018年5月22日、確定2018年8月22日。第6〜7・9〜22・26・86・95・108・117・119・146〜150・156〜160段落と主文
    発行:European Court of Human Rights(HUDOC) 確認日:2026-09-27
  2. Закон України «Про угоди щодо відчуження земельної частки (паю)» № 2242-III2001年1月18日。第1条
    発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-27
  3. Земельний кодекс України № 2768-III2001年10月25日の制定時の条文。経過規定第15項、施行日
    発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-27
  4. Земельний кодекс України № 2768-III現行の条文。第130条、経過規定第15項の改正注記
    発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-27
  5. 土地法典の経過規定第15項を改めた法律 № 2059-IV(2004年10月6日)、№ 3415-IV(2006年2月9日)、№ 490-V(2006年12月19日)、№ 1783-VI(2010年1月19日)、№ 4174-VI(2011年12月20日)、№ 5494-VI(2012年11月20日)、№ 767-VIII(2015年11月10日)、№ 1669-VIII(2016年10月6日)、№ 2236-VIII(2017年12月7日)、№ 2666-VIII2018年12月20日
    発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-27
  6. Постанова Верховної Ради України № 882-IV2003年5月22日。持ち分の証書を受け取った国民の数など
    発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-27
  7. Закон України № 552-IX «Про внесення змін до деяких законодавчих актів України щодо умов обігу земель сільськогосподарського призначення»2020年3月31日。施行日
    発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-27
  8. Закон України «Про всеукраїнський референдум» № 1135-IX第20条
    発行:Верховна Рада України 確認日:2026-09-27
  9. Указ Президента України № 596/2026 «Про продовження строку дії воєнного стану в Україні»2026年7月13日
    発行:Президент України(最高会議の法令データベース) 確認日:2026-09-27
  10. Держгеокадастр: Обсяг ринку землі в Україні досягнув одного мільйона гектарів2026年3月4日
    発行:Державна служба України з питань геодезії, картографії та кадастру 確認日:2026-09-27

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