ウクライナの卒業証書・学位・医師免許は、日本でどう扱われるか
ウクライナの11年制の学校を修了した人は、文部科学大臣の指定により、日本の大学に出願する資格があります。大学院は「16年の課程」か「3年以上の課程で得た学士相当の学位」などが目安で、最後は出願先が判断します。医師や看護師として働くには、厚生労働省の受験資格認定から始まります(2026年9月時点)。
ウクライナで学校を終え、大学を出て、仕事の資格を取った人が日本で次の一歩を考えるとき、最初に出てくるのは「その学歴は日本で何年分として数えられるのか」という問いです。答える場所は、目的によって違います。日本の大学に入るなら出願先の大学が、医師の国家試験を受けるなら厚生労働省が、それぞれ国の定めた基準に沿って一人ずつ判断します。
以下は、文部科学省、厚生労働省、大学改革支援・学位授与機構の高等教育資格承認情報センター(NIC-Japan)が公開している情報と、学校教育法施行規則の条文を、2026年9月に確認した内容です。自分の学歴や資格が認められるかどうかは、出願先や所管の窓口でしか確かめられません。
目的ごとに、判断するところが違う
| したいこと | 判断するところ | 基準が書かれている場所 |
|---|---|---|
| 日本の大学(学部)に入る | 出願先の大学 | 学校教育法施行規則第150条と文部科学省の告示 |
| 日本の大学院に入る | 出願先の大学院 | 学校教育法施行規則第155条 |
| 医師・看護師などの国家試験を受ける | 厚生労働大臣(受験資格認定) | 厚生労働省の認定基準と通知 |
| 外国の教育制度について調べる | NIC-Japan(情報の提供) | 東京規約・世界規約 |
NIC-Japanは、大学改革支援・学位授与機構が2019年9月1日に設けた組織で、ユネスコの「高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約」(東京規約)にもとづく日本の公式の国内情報センターです。日本は「高等教育の資格の承認に関する世界規約」も2022年9月に締結しており、2023年3月の発効を受けて、NIC-Japanはこの規約の情報センターも兼ねています。NIC-Japanが業務として挙げているのは、日本の高等教育制度の情報提供、外国の教育制度の情報提供、各国の情報センターとの連携、調査研究の四つです。個人の学歴を審査して証明書を出す業務は、この一覧にはありません。
ウクライナの11年の学校を終えた人は、日本の大学に出願できる
日本の大学に入る資格は、原則として「外国において学校教育における12年の課程を修了した者」に認められます(学校教育法施行規則第150条第1号)。学校の年数が12年に届かない国の場合は、文部科学大臣が指定した準備教育課程をさらに修了する必要があります。
ウクライナの普通教育はこれまで11年でした。ただし文部科学省は、11年以上の課程のうち指定したものを修了した人にも大学入学資格を認めており(昭和56年文部省告示第153号第3号)、その一覧(2023年8月21日現在)に「ウクライナのポウナ・ザハリナ・セレドニャ・オスヴィタの課程」が載っています。ウクライナ語の повна загальна середня освіта(完全普通中等教育)のことです。一覧が示す適用開始日は平成3年(1991年)5月23日で、この日以後に修了した人が対象です。
つまり、ウクライナで完全普通中等教育を終えた人は、準備教育課程を経なくても日本の大学に出願する資格があります。ウクライナの学校は12年制への移行を進めており、その経過はウクライナの12年制の学校、最後の3年間は2027年に始まるで扱っています。
修了を示す書類の名前
NIC-Japanは、この課程の修了資格の名前が交付された年によって二つあると説明しています。
- 1992〜2018年:Атестат про повну загальну середню освіту
- 2019年以降:Свідоцтво про здобуття повної загальної середньої освіти
NIC-Japanによれば、修了には11年目の最後に行われる国家最終認定試験(State Final Attestation)に合格する必要があります。大学進学を希望する人が一般に受ける全国統一試験(External Independent Evaluation)は、修了の条件ではありません。例外として、2019〜2020年度と2020〜2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、最終試験を受けるのは進学を希望する人に限られ、それ以外の人は受けずに修了資格が与えられました。2021〜2022年度もNIC-Japanは「ウクライナ情勢の影響」で試験が中止され、受験なしで修了資格が与えられたとしています。この年度の途中、2022年2月にロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まっています。
このほか、大学が個別の入学資格審査で「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」と認めた18歳以上の人にも入学資格があります(同条第7号)。
大学院に入るときの三つの道
日本の大学院(修士課程・博士課程前期)に入る資格は、日本の大学を卒業した人のほか、学校教育法施行規則第155条第1項が定める人に認められます。外国で学んだ人に関係するのは主に次の三つです。
- 外国で学校教育の16年の課程を修了した人(第2号)。医学・歯学・獣医学と、6年制の学部を基礎とする薬学の博士課程に入る場合は18年
- 外国の大学などで、修業年限3年以上の課程を修了し、学士に相当する学位を授与された人(第4号の2)。医学・歯学・薬学・獣医学の博士課程は5年以上。ただし、その学校が教育研究活動について、その国の政府か関係機関の認証を受けた者による評価を受けていること(またはこれに準ずるものとして文部科学大臣が指定したもの)が条件です
- 大学院が個別の入学資格審査で、大学を卒業した人と同等以上の学力があると認めた22歳以上の人
学校の年数を足して16年に届くかどうかだけで決まるわけではありません。どの道で出願するのか、事前の資格審査が必要かは、出願先の大学院の入試担当に早めに聞いてください。外国の大学を卒業した人が日本の大学の学部に「学士入学」できるかどうかも、各大学の判断です(NIC-Japan)。
医師として働くには、受験資格認定から始まる
厚生労働省は、外国の医学校を卒業した人や外国で医師免許を取った人が日本で医師として働くには、日本の医師国家試験に合格して免許を取る必要があるとしています。受験するには、まず厚生労働大臣の「受験資格認定」を受けます。
審査は、出された書類から、申請者が日本の医学校を卒業した人と同等以上かどうかをみるものです。書類審査の基準を満たした人は、次に「日本語診療能力調査」を受けます。聴く、話す、書く、医学用語を読み取る、診察する、の五つの能力を、調査委員2人がそれぞれ4段階(3〜0)で評価し、100点満点に換算して60点以上、かつ0点の項目がないことが条件です。
結果は三通りに分かれます。国家試験の受験資格が認められる場合、まず「医師国家試験予備試験」の受験資格が認められる場合(予備試験に合格し、1年以上の診療と公衆衛生の実地修練を経てから国家試験を受けます)、どちらも認められない場合です。書類審査の基準を満たしていても日本語診療能力調査で基準に届かなかった人は、予備試験の受験資格認定を受けることができます。
厚生労働省は、卒業後に日本の国家試験の受験資格が得られる旨の認可を厚生労働省から受けている、などと示して外国の医学校への入学を勧誘する広告に注意を呼びかけています。審査は申請があった後に申請者一人ひとりについて行うもので、外国の医学校の卒業生に一律に受験資格を認めることはない、としています。
申請で求められる主な書類
- 受験資格認定願、履歴書(学歴は日本の小学校にあたる学校から西暦で書く。小学校から高校までの年数が12年未満の場合は、原則としてその事情が分かる書類を添える)
- 本人確認書類(住民票、在留カード、旅券のいずれか)と、日本の医師免許を持つ医師が申請前1か月以内に書いた診断書
- 外国の医師免許証の写し、医学校の卒業証書の写しまたは卒業証明書、履修した教科と時間数が分かる書類
- 日本の中学校と高校を卒業していない人は、日本語能力試験N1の認定書と成績の写し
外国語の書類にはすべて日本語訳を付けます。医師免許証、卒業証明書、履修の書類などは、書類と日本語訳の両方の記載が真実であることを公的な機関(当該国の大使館、領事館、外務省など)で確認してもらい、その証明も出します。厚生労働省は、この「大使館、領事館」は外国にある日本の大使館・領事館ではない、と注意書きしています。申請は本人が行い、郵送や代理は受け付けられず、窓口に行くときは担当者との約束が必要です。
申込みには期限があります。2026(令和8)年度の申込みシートの送信期限は2026年2月27日でした。次の年度の期限は、厚生労働省のページで確認してください。看護師などにも同じ趣旨の受験資格認定があり、2026年度の申請受付は4月13日に始まっています。
書類を集めるときに気をつけたいこと
- 名前の綴り。厚生労働省の手続きでは、願書の氏名を本人確認書類の表記に合わせ、卒業証書などの表記が違う場合は旅券などで同じ人だと示すよう求めています。ラテン文字の綴りが書類ごとに違うことがあるので、手元の書類の表記を一覧にしておくと説明しやすくなります。名前の綴りについてはウクライナの人の名前──ローマ字の綴り、父称、呼びかけの形を参照してください
- 原本。厚生労働省の手続きでは、照合のために原本を持参し、照合後に返してもらいます。原本を手放さずに済む手続きかどうか、提出先ごとに確かめてください
- アポスティーユ。日本(1970年7月27日)とウクライナ(2003年12月22日)は、外国公文書の認証を不要とするハーグ条約(アポスティーユ条約)の締約国です。ただ、提出先が何を求めるかは別の問題です。厚生労働省の医師の手続きは、上に書いた公的機関による確認を求めています。アポスティーユで足りるかどうかは、提出先に聞いてください
- 翻訳。誰の翻訳でよいか、翻訳に証明が要るかは、手続きによって違います。翻訳を頼む前に、提出先の条件を確かめてください
相談するときに聞いておくこと
- 大学・大学院の入試担当:自分の学歴でどの入学資格にあたるか。出願前の資格審査が必要か、その締切はいつか。卒業証書・成績証明書に翻訳や証明が必要か
- 厚生労働省(医師・看護師などの受験資格認定):その年度の申込み期限。自分の書類でどの公的機関の確認を受ければよいか
- NIC-Japan:日本や外国の教育制度についての情報(問い合わせフォームがあります)
日本で働くための在留資格や、就職で学歴がどう扱われるかは、この記事の範囲の外です。相談先は日本で暮らし始めたときの相談窓口にまとめています。国の基準は改められることがあります。ここに書いた内容は2026年9月に確認したものです。
出典・参考資料
- 大学入学資格について(外国で12年の課程を修了した者、12年未満の場合の準備教育課程、指定された11年以上の課程、個別の入学資格審査)
発行:文部科学省 確認日:2026-09-23 - 文部科学大臣指定 高等学校に対応する外国の学校の課程一覧(令和5年8月21日現在。ウクライナの課程の名称と適用開始日)
発行:文部科学省 確認日:2026-09-23 - 修士課程・博士課程(前期)の入学資格について(施行規則第155条第1項の各号)
発行:文部科学省 確認日:2026-09-23 - 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第150条、第155条
発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-23 - 高等教育資格承認情報センター(NIC-Japan)の目的・業務(2019年9月1日設置、東京規約・世界規約、業務内容)
発行:大学改革支援・学位授与機構 確認日:2026-09-23 - Q&A:ウクライナの「ポウナ・ザハリナ・セレドニャ・オスヴィタの課程」とこの課程の修了資格のウクライナ語表記(1992〜2018年と2019年以降の名称)
発行:NIC-Japan 確認日:2026-09-23 - Q&A:同課程の修了に最終試験の合格が必要か(State Final Attestation、External Independent Evaluation、2019〜2022年度の例外)
発行:NIC-Japan 確認日:2026-09-23 - Q&A:初等中等教育の課程が11年である国の高等学校を卒業した方の大学入学資格
発行:NIC-Japan 確認日:2026-09-23 - Q&A:外国の大学を卒業した方の「学士入学」
発行:NIC-Japan 確認日:2026-09-23 - 外国の医学校を卒業し、または外国で医師免許を取得している方の受験資格認定について(制度の概要、令和8年度の申込み期限、勧誘広告への注意)
発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23 - 医師国家試験受験資格認定制度(審査方法、日本語診療能力調査の評価項目と基準、予備試験)
発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23 - 申請に必要な書類(医師国家試験受験資格認定)(書類の一覧、日本語訳と公的機関の確認、原本の持参、本人申請)
発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23 - 医師国家試験受験資格認定の申請の流れ(申込みシートと送信期限)
発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23 - 外国で看護師等免許を取得している方の受験資格認定について(2026年度の申請受付開始日)
発行:厚生労働省 確認日:2026-09-23 - Status table: Convention of 5 October 1961 Abolishing the Requirement of Legalisation for Foreign Public Documents(日本とウクライナの発効日)
発行:Hague Conference on Private International Law(HCCH) 確認日:2026-09-23
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