自治会の加入と退会は自由、共益費は別。最高裁判決と町内会の仕組み
自治会・町内会は、地域の住民が自主的につくる団体です。2005年の最高裁判決は、県営住宅の自治会の会員はいつでも退会できるとしつつ、共用施設の共益費の支払いは残るとしました。法人になれる「認可地縁団体」の決まり、ごみ集積所との関係が地域で違うこと、会費と加入率の数字を、法令と総務省・自治体の資料でまとめました。
オリュカのひとこと
自治会には、入らなければならないのでしょうか。最初の見出しで整理されています。
日本で部屋を借りたり家を買ったりすると、近所の人や管理会社から「自治会(町内会)に入りませんか」と声をかけられることがあります。自治会は、同じ地域に住む人たちがつくる団体です。出入国在留管理庁が監修する『生活・就労ガイドブック』(日本語版第8版、2026年2月)は、防災訓練、登下校の見守り、高齢者・障害者への福祉活動、市役所などからのお知らせの回覧、祭りや運動会などを主な活動に挙げ、活動の費用は会員が負担すると説明しています。
入らなければいけないのか、やめられるのか、入らないとごみを出せないのか。以下、地方自治法の条文(e-Gov法令検索)、2005年の最高裁判所の判決、総務省の調査と研究会の報告書、いくつかの自治体の公式の案内をもとに説明します。記載は2026年9月に確かめた内容です。ある自治会の決まりがどうなっているか、自分がどうすべきかは、この記事では判断しません。住んでいる市区町村の担当の窓口か、その自治会に確かめてください。
全国に約30万、名前はさまざま
総務省の調査(2023年4月1日時点)では、市区町村が把握している地域の団体は全国で295,838ありました。名前別では「自治会」が44.1%、「町内会」が22.8%、「町会」が6.0%で、ほかに「部落会」「区会」「区」などがあります。呼び名が違っても、基本的には同じ種類の団体です。以下では、まとめて「自治会」と書きます。
法律の上では、住民が自主的につくる団体
自治会の多くは、法人格を持たない任意の団体で、法律上は「権利能力のない社団」と解されています。総務省の研究会の報告書(2022年4月)は、認可を受けていない自治会について「国の法制度上の枠組みは存在しない」と書いています。
そのうえで地方自治法第260条の2は、自治会が市町村長の認可を受けて法人になる道を設けています。これを「認可地縁団体」と言います。もとは、集会所などの不動産を団体の名前で登記するための制度として1991年の法改正で設けられましたが、2021年の改正(2021年11月26日施行)で、不動産を持つかどうかにかかわらず認可を受けられるようになりました。総務省の調査では、認可地縁団体は2022年度末で56,078団体です。
同じ条文は、認可を受けた団体について次のように定めています。
- 認可は、その団体を「公共団体その他の行政組織の一部とすることを意味するものと解釈してはならない」(第6項)
- 正当な理由がない限り、その区域に住所を持つ人の加入を拒んではならない(第7項)
- 民主的な運営のもとで自主的に活動し、会員を不当に差別してはならない(第8項)
- 特定の政党のために利用してはならない(第9項)
認可の要件(第2項第3号)は「その区域に住所を有するすべての個人は、構成員となることができる」ことで、条文に国籍の条件は書かれていません。総務省の報告書は、認可地縁団体について、住民は加入・脱退を任意に行うことができる私法人だ、と説明しています。
戦時中の「町内会」と、いまの自治会
同じ「町内会」という名前でも、時代によって性格が違います。総務省の報告書は、戦前・戦中の町内会は1940年の「部落会町内会等整備要領」と1943年の市制・町村制の改正で市町村の下部組織として制度化されたもので、いまの認可地縁団体の制度とは基本的に性格が異なる、と書いています。
| 年 | 出来事 | 典拠 |
|---|---|---|
| 1940年 | 「部落会町内会等整備要領」で町内会などが制度化される | 総務省 研究会報告書(2022年) |
| 1943年 | 市制・町村制の改正で、市町村の下部組織として位置づけられる | 同上 |
| 1991年 | 地方自治法の改正で、認可地縁団体の制度ができる(不動産を持つための法人化) | 同上 |
| 2005年4月26日 | 最高裁判所が、県営住宅の自治会の会員は一方的な意思表示でいつでも退会できるとする判決 | 最高裁判所第三小法廷判決(平成16年(受)第1742号) |
| 2021年11月26日 | 改正地方自治法の施行。不動産を持たない自治会も認可を受けられるように | 総務省の制度改正の説明資料 |
オリュカのひとこと
加入もやめることも、法律ではどう扱われているのでしょう。この見出しの判決で確かめられます。
入るのも、やめるのも自由:2005年の最高裁判決
自治会をやめられるかどうかが争われた裁判で、最高裁判所第三小法廷は2005年4月26日に判決を出しました(平成16年(受)第1742号、自治会費等請求事件)。埼玉県新座市の県営住宅の自治会が、退会を申し入れた入居者に、未払いの共益費と自治会費を払うよう求めた事件です。二審の東京高等裁判所は、自治会の公共的な性格などを理由に、個人的な感情などから退会を申し入れることは許されないとして、退会は無効だと判断していました。
最高裁はこれを改めました。判決は、この自治会が会員の親ぼく、快適な環境の維持管理、会員の福祉・助け合いなどを目的とする団体であり、「いわゆる強制加入団体でもなく」、規約に退会を制限する規定もないのだから、会員は「いつでも」自治会に対する一方的な意思表示で退会できる、として退会の申し入れを有効としました。退会したあとの期間の自治会費は払わなくてよい、とされました。
オリュカ
共益費というお金は、自治会費と同じものなのかな。
スウネ
共益費は、自治会費とは別のものだと、この見出しの下にあるよ。
タブリ
何のための費用かは、契約書や規約で確かめてね、ともここに書いてあるよ。
やめても払う必要が残ったもの:共益費
同じ判決は、共益費については退会しても支払いの義務は消えない、と判断しました。この団地の共益費は、街灯や階段の電灯の電気代、屋外の水道代、エレベーターの保守、害虫駆除など共用の施設を保つための費用で、団地を管理する県の住宅供給公社が、各入居者は自治会に共益費を払うよう指示し、入居者もそれに従っていました。最高裁は、この事実から、入居者は入居するときに、住んでいる限り自治会に共益費を払うと約束したものと言える、としました。
つまり、この事件では「自治会の会員としての会費」と「住んでいる建物の共用部分にかかる費用」が分けて扱われました。判決は、この団地の事実関係にもとづく判断です。自分の住まいで自治会に払っているお金が何のためのものかは、賃貸借契約書や管理規約、自治会の規約で確かめてください。部屋を借りるときの費用は部屋を借りるときの記事にまとめています。
ごみ集積所と自治会の関係は、地域で違う
加入が任意でも、暮らしの中で自治会が担っていることは少なくありません。総務省の報告書は、回覧板による連絡、防犯灯の設置・管理、防犯・防火のパトロール、環境美化などを挙げています。とくに問題になりやすいのが、ごみ集積所(ごみステーション)です。
神奈川県茅ヶ崎市は公式サイトの「よくある質問」で、市のごみ収集は自治会に入っているかどうかで変わらないとしたうえで、集積所をどこに置き、どう管理するかは自治会に決めてもらっており、自治会を中心とする地域の人が使い方のルールや清掃を担っている、と説明しています。自治会に入れない、退会せざるを得ない事情がある場合は、その集積所を管理している自治会に、清掃当番に加わるなど使い方を相談するよう求めています。同市は、自治会は「自主的な組織のため加入について強制されません」と書きつつ、加入を呼びかけています。
国立環境研究所の研究者によれば、茨城県つくば市の自治会長を対象にした2019年のアンケート(回答402人)では約7割の自治会が「未加入者の利用を許可していない」と答え、利用を認める約3割のうち約半数は利用料を取っていました(年500円から12,000円)。同じ研究グループの2020年の全国の市町村への調査では、70%の市町村で、未加入者が集積所を使えないといったトラブルが起きていました。市町村が、清掃センターへの持ち込みや、一定の世帯数が集まれば新しい集積所を設けられることを案内している例もある、としています。
香川県は、自治会をやめるとごみステーションを使わせないと言われたという県民の声に対し、未加入の人のごみについては各市町が地域の実情に応じて対応しているとして、住んでいる市町に相談するよう回答しています。ごみの分け方と出し方そのものはごみを出すときの決まりの記事に、引っ越しの届出は住民登録の記事にまとめています。
会費と加入率
会費の額は、自治会ごとに規約で決まります。全国で一律の額はありません。茅ヶ崎市は、市では会費の詳細は分からないので、地域の自治会長の連絡先を調べて案内する、としています。上の最高裁の事件の自治会では、規約で自治会費を1世帯あたり月300円、共益費を月2,700円と定めていました(1998〜2003年ごろの事実)。
加入する世帯の割合は下がり続けています。総務省が市区町村に行ったアンケートで、2010年度から2020年度まで毎年、世帯単位の加入率を把握していた600市区町村の平均(単純平均)は、次のとおりです。
| 年度 | 2010 | 2012 | 2014 | 2016 | 2018 | 2020 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 加入率(%) | 78.0 | 77.2 | 75.9 | 74.7 | 73.3 | 71.7 |
市ごとの数字の例として、横浜市は自治会町内会の加入率を毎年4月1日時点で公表しており、2021年の69.4%から2025年は65.3%になっています。同市が2025年に自治会町内会長を対象に行ったアンケートでは、加入を断られる理由として「班長や役員をやりたくないから」が65.1%で最も多く挙げられ、「ほとんど家にいない、活動に参加できないから」が48.0%で続きました。
迷ったときに確かめる場所
- 地域の自治会の連絡先や加入の方法:住んでいる市区町村の、自治会を担当する課(横浜市は各区役所の地域振興課で案内している)
- ごみ集積所の使い方:市区町村のごみの担当課と、その集積所を管理している自治会
- 家賃と一緒に払う共益費・自治会費の中身:賃貸借契約書、管理会社・大家、マンションの管理規約
自治会の会合や回覧は日本語で行われることがほとんどです。ウクライナ語で相談できる窓口は相談窓口の記事にまとめています。
出典と記事の記録
出典・参考資料
- 地方自治法第260条の2 地縁による団体
発行:e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日:2026-09-26 - 最高裁判所第三小法廷判決 平成17年4月26日(平成16年(受)第1742号 自治会費等請求事件、集民第216号639頁)の判示事項・裁判要旨・全文
発行:裁判所 確認日:2026-09-27 - 地域コミュニティに関する研究会 報告書2022年4月。自治会の法的性格、戦前・戦中の町内会、約30万の自治会等、600市区町村の加入率の推移、回覧板・防犯灯など
発行:総務省 確認日:2026-09-26 - 地縁による団体の認可事務の状況等に関する調査結果2024年3月。基準日2023年4月1日の地縁団体数と名称別内訳、年度別認可地縁団体数
発行:総務省自治行政局市町村課 確認日:2026-09-26 - 認可地縁団体制度の改正不動産の保有の有無に関わらず法人格取得が可能となる見直し。2021年5月26日公布、11月26日施行
発行:総務省 確認日:2026-09-26 - 地域コミュニティ認可地縁団体制度の資料一覧
発行:総務省 確認日:2026-09-26 - 自治会には入らなければいけないのですか。よくある質問、2023年3月31日更新
発行:茅ヶ崎市 確認日:2026-09-26 - 自治会費の金額を教えてください。よくある質問、2023年3月31日更新
発行:茅ヶ崎市 確認日:2026-09-26 - 自治会未加入者はごみの集積場所にごみを捨ててはいけないのですか。よくある質問、2025年2月7日更新
発行:茅ヶ崎市 確認日:2026-09-26 - 増える自治会未加入者、ごみ集積所の管理はどうする?資源循環領域オンラインマガジン「環環」2022年3月
発行:国立環境研究所 確認日:2026-09-26 - ご提言等の内容自治会非加入によるごみステーションの利用制限について
発行:香川県 知事公室広聴広報課 確認日:2026-09-26 - 自治会町内会への加入をお考えの方へ2026年6月2日更新
発行:横浜市 確認日:2026-09-26 - 自治会町内会加入世帯及び加入率の推移各年4月1日現在、2021〜2025年
発行:横浜市 確認日:2026-09-26 - 令和7年度 自治会町内会アンケート調査 報告書2026年1月。加入をしない/断られる理由
発行:横浜市市民局地域活動推進課 確認日:2026-09-26 - 生活・就労ガイドブック 日本語版 第8版第12章 3-1 地域生活(1)地域コミュニティ団体(自治会・町内会)
発行:出入国在留管理庁 監修 確認日:2026-09-26
記載内容に誤りを見つけた場合は、訂正のご連絡からお知らせください。確認のうえ、訂正した内容と経緯を記事に記載します。







