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日本とのつながり/解説

オンライン参加の予定だったゼレンスキー大統領が、広島に来た

2023年5月のG7広島サミットに、ゼレンスキー大統領は当初オンラインで参加する予定でした。対面での参加を強く望んだことから、最終日の21日に広島でG7首脳とウクライナの議題を話し合い、原爆死没者慰霊碑に献花しています。外務省の記録から、2日間の出来事と首脳声明の中身をたどります。

2023年5月21日、広島平和記念公園。岸田文雄内閣総理大臣(当時)とウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、松井一實広島市長の先導で原爆死没者慰霊碑に進み、献花して黙祷を捧げました。ゼレンスキー大統領はそのあと平和記念資料館を訪れ、展示の説明を受けています(外務省の発表による)。

ロシアによる全面侵攻が始まってから1年3か月。ゼレンスキー大統領がG7サミットに対面で参加したのは、このときが初めてでした(同日の首脳会談での大統領の発言による)。ただし外務省の記録を読むと、この来日は最初から決まっていたものではありません。

最初の約束は「オンライン参加」だった

G7広島サミットは2023年5月19日から21日まで、岸田総理が議長となって広島で開かれました。外務省の概要によれば、G7の7か国とEUの首脳に加えて、8か国の首脳(豪州、ブラジル、コモロ、クック諸島、インド、インドネシア、韓国、ベトナム)と7つの国際機関の長が招かれ、ウクライナは「ゲスト国」として扱われています。

外務省が5月20日に出した発表は、経緯をこう説明しています。3月に岸田総理がウクライナを訪問した際、ゼレンスキー大統領はこのサミットにオンラインで参加することで合意していた。その後、大統領から対面で参加したいという強い希望が示され、日本政府はサミット全体の議題と日程を慎重に検討した結果、最終日の21日に、大統領が対面で参加する形でウクライナに関するセッションを開くことにした、というものです。

同じ発表は、大統領の安全確保のため、20日には取材の機会を設けないとも書いています。広島に着いた日時や移動の方法は、外務省の発表には書かれていません。

ウクライナが議題になった三つのセッション

外務省の概要によると、3日間の日程のうち、ウクライナが中心になったのは次の三つのセッションです。

日付セッション出席
5月19日セッション2「ウクライナ」G7メンバー
5月21日セッション8「ウクライナ」(午前10時45分から約60分間)G7メンバー、ウクライナ
5月21日セッション9「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」G7メンバー、招待国、ウクライナ
外務省「G7広島サミット(概要)」(令和5年5月26日)と各セッションの概要から作成。2026年9月24日に確認。

初日のセッション2は、G7の首脳だけで開かれました。概要によれば、G7首脳は厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援を続けることを確認し、「ロシア軍の撤退なくして平和の実現はあり得ない」ことを強調しています。このセッションのあとに出されたのが、後で見る「ウクライナに関するG7首脳声明」です。

最終日のセッション8に、ゼレンスキー大統領が加わりました。岸田総理は、厳しい冬を乗り越えてきたウクライナ国民の勇気と忍耐強さに敬意を表し、大統領が示した「平和フォーミュラ」を歓迎し支持すると述べています。G7首脳は、外交・財政・人道・軍事の支援を「必要な限り」提供するという約束を着実に実施していくことで一致しました。

続くセッション9には、インドやブラジルなどの招待国の首脳も同席しました。外務省の概要によれば、大統領はロシアの侵略に立ち向かう覚悟とともに、和平についての自らの考えを説明しました。各国の首脳からは、ロシアによるウクライナ侵略がもたらしている人的被害や、エネルギー・食料不安の増大を含む世界経済への悪影響について、深い懸念が示されました。そのうえで、主権と領土一体性の尊重といった国連憲章の原則をすべての国が守るべきことや、力による一方的な現状変更の試みを許してはならないことなどについて、認識を共有したとされています。

5月19日の「ウクライナに関するG7首脳声明」

首脳声明は11の項目からなり、外務省が原文と仮訳を公表しています。仮訳から、主な部分を引きます。

冒頭で声明は、ロシアの戦争を「ロシアのウクライナに対する違法で、不当で、いわれのない侵略戦争」と呼び、「15か月に及ぶロシアの侵略は、何千もの命を奪い、ウクライナの人々に甚大な苦難を与え」たと書いています。そのうえで、ウクライナが求める財政的、人道的、軍事的、外交的な支援を「必要とされる限り」提供すると改めて約束しました。

和平については、ロシアに対して「国際的に認められたウクライナの領域全体から即時、完全かつ無条件に」部隊と軍事装備を撤退させるよう求め、完全かつ無条件の撤退なくして公正な平和は実現されない、としています。

ほかにも、次のような項目があります。

  • 原子力安全:ロシアによるザポリッジャ原子力発電所の占拠と軍事化に「最も重大な懸念」を表明し、IAEAの取組を支持する
  • 復旧・復興:IMFの拡大信用供与措置の承認を歓迎し、「ウクライナ復興ドナー調整プラットフォーム」を支援の調整の主要な仕組みとして使う。6月にロンドンで開かれる復興会議に期待する
  • 制裁:ロシアの侵略に重要な品目の輸出制限を広げ、制裁の回避を防ぎ、ロシアの石油の上限価格措置を堅持する。ロシア産ダイヤモンドの取引と使用の制限でも協力する
  • 損害の責任:ロシアがウクライナにもたらした損害に支払いを行うまで、G7の管轄下にあるロシアの国家資産を「引き続き動かせないようにしておく」
  • 責任の追及:占拠された地域からロシアへの「子どもを含むウクライナ人の不法な追放及び移送」を強く非難し、国際刑事裁判所(ICC)の捜査を注視し、子どもたちの帰還を求め続ける

声明は最後に、「平和の象徴」である広島から、ウクライナに包括的、公正かつ永続的な平和をもたらすためにあらゆる努力を行うと結んでいます。

翌5月20日に出された「G7広島首脳コミュニケ」も、ウクライナの項でロシアの侵略戦争を「可能な限り最も強い言葉で非難」し、首脳声明に示した行動にコミットするとしています。コミュニケは中国に対しても、ロシアが軍事的侵略を停止し、軍隊をウクライナから撤退させるよう圧力をかけることを求めました。

慰霊碑と資料館

5月21日、岸田総理とゼレンスキー大統領は原爆死没者慰霊碑に献花しました。大統領は平和記念資料館を訪れ、芳名録にウクライナ語でこう書いています(外務省が原文と和文仮訳を公表)。

Глибоко вражений відвіданням Музею. Жодна держава світу не має пережити такий біль і руйнування. Ядерному шантажу не місце в сучасному світі.

ゼレンスキー大統領が平和記念資料館で記帳した内容(外務省、令和5年5月22日公表)

外務省の和文仮訳は「(平和記念)資料館の訪問に深く感銘を受けた。世界中のどの国も、このような苦痛と破壊を経験することがあってはいけない。現代の世界に核による脅しの居場所はない。」です。

G7の首脳声明も、ロシアの「無責任な核のレトリック」とベラルーシに核兵器を配備する意図の表明を「危険であり、受け入れられない」とし、ロシアによる核兵器の使用の威嚇も使用も許されないという立場を改めて示していました。核の威嚇を受けている国の大統領が被爆地で書いた最後の一文は、この声明と重なっています。

夕方の日・ウクライナ首脳会談

同じ21日の18時20分過ぎから約50分間、岸田総理とゼレンスキー大統領は首脳会談を行いました。外務省の概要によれば、大統領は、今回のサミットに「初めて対面での参加」を招待されたことへの感謝を述べ、招待国にグローバル・サウスの国々を招いた岸田総理のリーダーシップを高く評価しています。

この会談で、岸田総理は日本の新たな支援を伝えました。

  • ウクライナ側の要請を踏まえ、100台規模のトラック等の自衛隊車両と、約3万食の非常用糧食を提供する
  • ウクライナの負傷兵を、自衛隊中央病院に初めて受け入れる
  • ウクライナ避難民を支援するためにポーランドが発行するサムライ債(円建ての債券)に、国際協力銀行(JBIC)が930億円規模の保証を行う

あわせて岸田総理は、それまでに日本が表明した総計76億ドルの支援を着実に実施していくこと、立ち上げたばかりの「ウクライナ経済復興推進準備会議」も活用して、官民で復旧・復興を後押ししていくことを述べました。翌2024年2月には、東京で日・ウクライナ経済復興推進会議が開かれています(東京で披露された56本の協力文書と、その後に動いたもの)。

広島のあとに続いたもの

首脳声明は、支援と制裁の方向を並べた文書です。声明は民間投資を後押しする仕組みとして、MIGA(世界銀行グループの多数国間投資保証機関)に設けられたウクライナ復興・経済支援信託基金(SURE)と、5月12日に東京で立ち上げられたウクライナ投資プラットフォームを歓迎しています。一方で、動かせないようにしたロシアの国家資産をどう使うかは、この声明の時点では「支払いを行うまで動かせないようにしておく」という書き方にとどまっていました。翌2024年6月のG7プーリア・サミットでは、その資産から生じる収益を返済にあてる融資の枠組みが合意され、日本もこの枠組みで円借款を出しています(地雷除去機、レール、発電機。JICAがウクライナに送ったもの)。

日本とウクライナの関係のなかで、この3日間がどんな出来事と並んでいるかは、日本とウクライナの年表で確かめられます。

出典・参考資料

  1. G7広島サミット(概要)(令和5年5月26日。会期、出席者、招待国・招待機関、ゲスト国ウクライナ、各セッションの出席国と概要、成果文書の一覧)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  2. G7広島サミット(セッション8「ウクライナ」概要)(令和5年5月21日。開始時刻と所要時間)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  3. G7広島サミット(ゼレンスキー・ウクライナ大統領の訪日)(令和5年5月20日。オンライン参加の合意から対面参加への変更、20日の取材機会なし)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  4. ウクライナに関するG7首脳声明(2023年5月19日)仮訳
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  5. G7 Leaders' Statement on Ukraine(2023年5月19日)原文
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  6. G7広島首脳コミュニケ(2023年5月20日)仮訳(前文、第4項「ウクライナ」、中国に関する項)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  7. 岸田内閣総理大臣とゼレンスキー・ウクライナ大統領による原爆死没者慰霊碑献花(令和5年5月21日)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  8. ゼレンスキー・ウクライナ大統領による平和記念資料館訪問(記帳内容)(令和5年5月22日。ウクライナ語原文と和文仮訳)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  9. 日・ウクライナ首脳会談(令和5年5月21日。時刻、自衛隊車両・非常用糧食・負傷兵受入れ・JBICの保証・総計76億ドル)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  10. ウクライナに対する円借款「ウクライナのための特別収益前倒し融資」に関する書簡の署名・交換(令和7年4月18日。2024年6月G7プーリア・サミットでのERA融資枠組みの立ち上げ合意、ロシア国家資産の凍結由来の特別な収益を返済原資とする仕組み、日本の円借款4,719億円)
    発行:外務省 確認日:2026-09-24
  11. G7財務大臣・中央銀行総裁声明(仮訳)(2024年10月25日。6月15日プーリアで発表されたG7首脳声明に沿いG7財務大臣がERAローン・イニシアティブの実施要領に合意したこと、約500億米ドル(450億ユーロ))
    発行:財務省 確認日:2026-09-24

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