дорогий は дорожчий に。ウクライナ語の比較級と最上級
ウクライナ語の「より高い」は дорожчий、「いちばん高い」は найдорожчий。形容詞の形を変えて比べます。2026年の国家語の標準 §104 と §20 の決まり、кращий・гірший のような形の変わる語、比べる相手を表す ніж・за・від、正書法の版ごとの違いを表にまとめました。
オリュカのひとこと
ウクライナ語では、形容詞の形を変えて比べるそうです。最初の見出しで確かめられます。
「このメロンは、あのメロンより高い」「いちばん安いのはどれ」。買い物でも道案内でも、比べる言い方はよく使います。ウクライナ語では、形容詞そのものの形を変えて「より〜」と「いちばん〜」を表します。дорогий(高い)は дорожчий(より高い)、найдорожчий(いちばん高い)になります。
以下、その作り方を、2026年3月28日に国家語の標準として効力を持った『Український правопис』(以下、2026年の標準)、ウクライナ国立科学アカデミーの二つの研究所が編んだ『Українська мова. Енциклопедія』(ウクライナ語百科事典、第2版2004年。以下、百科事典)、アカデミーの20巻本の辞書にもとづいてまとめます。確認は2026年9月時点です。
三つの段階:звичайний、вищий、найвищий
百科事典の「Ступені порівняння прикметників」(形容詞の比較の段階)の項(А. П. Грищенко 執筆)は、形容詞の形を三つに分けています。
- звичайний ступінь(ふつうの段階):ほかと比べずに性質を表す形。дорогий(高い)
- вищий ступінь(より高い段階):ふつうの形より、その性質が強く表れていることを表す形。いわゆる比較級。дорожчий(より高い)
- найвищий ступінь(いちばん高い段階):ほかの中で、その性質がいちばん強いことを表す形。いわゆる最上級。найдорожчий(いちばん高い)
同じ項によれば、比較の形を持つのは、「質の形容詞」(якісні прикметники)のうち、程度に差をつけられる性質を表すものだけです。
「より〜」の作り方
2026年の標準の §104「Ступенювання прикметників」(形容詞の比較)は、比較級の作り方を三つ挙げています。子音の変わり方は §20 が定めています。
| 作り方 | 例(ふつうの形 → 比較級) | 典拠 |
|---|---|---|
| -іш- を付ける | новий → новіший(新しい)、повний → повніший(満ちた)、синій → синіший(青い) | §104 第1項1号 |
| -ш- を付ける | дешевий → дешевший(安い)、солодкий → солодший(甘い) | §104 第1項1号 |
| -ш- を付け、г・ж・з が жч に、с が щ に変わる | дорогий → дорожчий(高い)、дужий → дужчий(強い)、вузький → вужчий(狭い)、низький → нижчий(低い)、високий → вищий(高い、背が高い) | §20、§104 第1項1号 |
| 子音が変わらない例外 | довгий → довший(長い)、легкий → легший(軽い、易しい) | §20 |
| 両方の形がある | товстий → товщий と товстіший(太い、厚い) | §104 第1項1号 |
| 別の語幹になる | великий → більший(大きい)、малий → менший(小さい)、гарний → кращий(よい、美しい)、поганий → гірший(悪い) | §104 第1項3号 |
| більш(より)・менш(より少なく)を前に置く(「рідше」=この形はあまり使わない、と注記) | більш вдалий(よりうまくいった)、більш глибокий(より深い)、менш вередливий(より気まぐれでない) | §104 第1項2号 |
百科事典は、-іш- と -ш- のうち、いまいちばん新しい語を作るのは -іш- だと書いています。-ш- を付けるときは、солодкий → солодший、глибокий → глибший(深い)、далекий → дальший(遠い)のように、もとの形の -к-、-ок-、-ек- が落ちることがあります。ただし同じ項は、こうした変化は一貫していないとも書き、легший、м’якший(柔らかい)、тихший(静かな)と、тугіший(きつい)、гіркіший(苦い)、гнучкіший(しなやかな)を並べています。どちらの型になるかは、語ごとに辞書で確かめるのが確実です。
辞書では、比較級が独立した見出しになっている語があります。20巻本の辞書を引くと、ДОРО́ЖЧИЙ は「Вищ. ст. до дороги́й」(дорогий の比較級)、БЛИ́ЖЧИЙ は「близький(近い)の比較級」と説明されています。見出しの読み方はウクライナ語の辞書の引き方にまとめています。
形がまったく変わる語:кращий、гірший、більший、менший
「よい」「悪い」「大きい」「小さい」の比較級は、もとの語と形が似ていません。百科事典の「Суплетивізм」(補充法)の項は、違う語根の形が一つの語の形として組み合わさることを補充法と呼び、比較の段階でとくに多いとして、хороший(добрий、гарний)— кращий、поганий — гірший、багато(多く)— більше、мало(少なく)— менше を挙げています。
20巻本の辞書は、кращий を「гарний、добрий、хороший の比較級」とし、同じ意味の語として ліпший も挙げています。ліпший の項は「добрий と гарний の比較級」です。2026年の標準の §104 は、比較級を別の語幹から作る例として великий、малий、гарний、поганий の四つを挙げています。
старший は「より年上の」だけではない
比較級の中には、比べる意味が薄れて、一つの語として使われるものがあります。百科事典は、старший(старий=年を取った、の比較級)が「より年老いた」という程度の差を表さず、старший лейтенант(中尉)、старший викладач(上級講師)のような職名・位の名前に入っていることを例に挙げています。同じように、вищий навчальний заклад(高等教育機関)の вищий、молодший лейтенант(少尉)の молодший も挙げています。
「いちばん〜」の作り方
最上級は、比較級の前に най- を付けて作ります(2026年の標準 §104 第2項1号)。найбільший(いちばん大きい)、найкраща(いちばんよい、女性形)、найменше(いちばん小さい、中性形)です。比較級が別の語幹になる語は、最上級も同じ語幹になります。
もう一つの作り方は、найбільш(いちばん)・найменш(いちばん少なく)を、ふつうの形の前に置くものです(同第2項2号)。標準はこの形にも「рідше」(あまり使わない)と添え、найбільш зручний(いちばん便利な)、найбільш стійка(いちばん丈夫な、女性形)、найменш приємне(いちばん感じのよくない、中性形)を例に挙げています。
якнай- と щонай- は続けて書く
最上級をさらに強めるときは、前に як- か що- を付けます。2026年の標準 §104 第2項は、この як と що を「形容詞と続けて書く」と定め、щонайсильніший、якнайбільший、якнайшвидший を挙げています。副詞も同じで、§41 第1項9号は щонайбільше、щонайкраще、якнайбільше、якнайдовше などを続けて書く語として挙げ、§44 第3項1号も щонайкращий、якнайшвидше を続けて書く例にしています。
意味は「いちばん」とは少し違います。百科事典によれば、якнайбільший、щонайбільший のような形は、ほかと比べての「いちばん」ではなく、「できるかぎり〜」という性質の最大の程度を表します。百科事典は用例として、ミコラ・ゼーロウの詩行「…неподільні на частки і якнайменші на розмір」(…部分に分けられず、できるかぎり小さな大きさの)と、ボリス・フリンチェンコの文「От і кавуни. Санько зірвав щонайбільшого і покотив до Стецька」(さあ、すいか畑だ。サニコはとびきり大きいのをもいで、ステツィコのほうへ転がした)を引いています。
形容詞の前に付ける пре- にも、似た働きがあります。2026年の標準 §31 第4項は、пре- を「質の形容詞と、そこから作った副詞で、性質の最も高い程度を表す」のに使うとし、прегарний(とても美しい)、прекрасний(すばらしい)、премудрий(とても賢い)、препогано(ひどく悪く)、пречудово(すばらしく)を挙げています。
オリュカのひとこと
比べる相手は、どんな言葉で示すのでしょう。この見出しで確かめられます。
比べる相手の言い方:ніж、за、від
「〜より」の「〜」の言い方は一つではありません。百科事典は、比較級とともに使う形として、次のものを挙げています。
- 前置詞 від、проти、супроти+生格(「〜の」にあたる形)
- 前置詞 за、над、понад+対格(「〜を」にあたる形)
- 接続詞 ніж、аніж、як
- 二つで一組の接続詞 чим… тим、що… то(「〜すればするほど…」)
20巻本の辞書の用例にも、この三つの型がそろっています。
- ніж:Сьогодні грядка була ще краща, ніж учора(きょうの畝は、きのうよりさらによかった。ヴィンニチェンコ)
- за:Ніхто краще за неї не гаптував у п’яльцях(彼女ほど上手に刺繍枠で縫い取りをする人はいなかった。パナス・ムィールヌィ)
- від:Вона дівчина бідна, але завжди вбирається краще від господарських дочок(貧しい娘だが、いつも裕福な家の娘たちよりきれいに装っている。レーシャ・ウクラインカ)
辞書は більший の項で、比べるときは「前置詞 від、за、または接続詞 ніж と使う」と注記しています。どの言い方を優先するかについて、2026年の標準の §104 は何も定めていません。§104 が決めているのは、形の作り方までです。前置詞のあとの格の形はウクライナ語の名詞の格と変化で扱っています。
オリュカ
最上級に за を付ける言い方は、使ってよいのかな。
スウネ
百科事典の項どうしで書き方が分かれていることが、この見出しの下に並べてあるよ。
ヨリクネ
どちらの項にも反しない分け方の例は、この見出しの下の最後の段落にあるよ。
「найкращий за всіх」は誤りか:百科事典の項どうしの違い
最上級と前置詞の組み合わせについては、同じ百科事典の中で書き方が分かれています。
- 「Ступені порівняння прикметників」の項(А. П. Грищенко):最上級の形容詞は、з、з-між、серед(生格)、над、за(対格)、між(造格)、в(у)、на(前置格)と組み合わせて使う、と書いている
- 「Тавтологія」(同語反復)の項(О. О. Тараненко):意図せず語や形を重ねてしまう望ましくない重複の例として、「більш досконаліший」(більш と比較級の -іш- の重複)と、「найкращий за всіх」(最上級と「кращий за всіх」=誰よりもよい、の重なり)を挙げている
- 「Контамінація」(混交)の項(同じく Тараненко):「більш точніше」(більш точно と точніше が混ざった形)と「найкращий від усіх」(найкращий と кращий від усіх が混ざった形)を、分析的な形と一語の形を誤って組み合わせた例に挙げている
つまり、більш(より)と比較級の語尾を重ねる形は、二つの項がそろって望ましくない例、誤った例として挙げています。一方、最上級に за を付ける言い方については、一つの項は使う形として挙げ、別の項は重複の例としています。どちらが規範かを、2026年の標準は定めていません。「誰よりも」は кращий за всіх、「すべての中でいちばん」は найкращий з усіх、と分けておけば、どちらの項にも反しません(この整理は編集部によるものです)。
副詞の「より」と「いちばん」
副詞にも比較の形があります。百科事典の「Прислівник」(副詞)の項は、весело(楽しく)— веселіше — найвеселіше を例に挙げています。добре(よく)の比較級は、20巻本の辞書では краще と ліпше です。子音の変わり方は形容詞と同じで、2026年の標準の §20 は дорожче、вужче、нижче、вище のように副詞の形も並べています。
比べられない形容詞
質の形容詞でも、比較の形を作らないものがあります。百科事典は、次のような語を挙げています。
- 程度が変わらない性質:босий(はだしの)、голий(裸の)、мертвий(死んだ)、сліпий(目の見えない)など
- 馬や牛の毛色:буланий(河原毛の)、вороний(青毛の)、гнідий(鹿毛の)
- 物の名前から作った色:вишневий(さくらんぼ色の)、малиновий(木いちご色の)、буряковий(ビーツ色の)
- 接尾辞などで程度がすでに表されている語:білуватий(白っぽい)、біленький(かわいらしく白い)、широчезний(とても広い)、премудрий など
- 二つの語から成る形容詞:сіро-зелений(灰緑色の)、блакитноокий(青い目の)など
ただし同じ項は、これらの制限は絶対ではなく、作家が文体の効果のために比較の形を作ることがあると書いています。例として、フリホリー・チュチュンヌィクの文章の「крутосхилішим」(より急な斜面の)を引いています。指小形の -еньк- などについてはウクライナ語の指小形で扱っています。
オリュカ
比べる形の決まりは、正書法の版ごとにどう変わってきたのかな。
タブリ
版の順に、変わったところがこの見出しの下の表に並んでいるよ。
スウネ
書き足しが規則の変更にあたるかを標準が説明していないことも、表の後にあるね。
1993年、2019年、2026年の正書法を比べる
比較の形の決まりは、正書法の版が変わるたびに、少しずつ書き足されてきました。
| 版 | 条 | 変わったところ(前の版と比べて) |
|---|---|---|
| 1993年(第4版) | §18 第3項、§69「Ступенювання прикметників」 | 子音の変化の例(високий — вищий、вузький — вужчий、дорогий — дорожчий、дужий — дужчий、низький — нижчий、例外は легкий — легший)。比較級は -іш-・-ш- と більш・менш、最上級は「префікс най-」(接頭辞 най-)と найбільш・найменш。що・як は続けて書く |
| 2019年 | §20、§104「Ступенювання прикметників」 | 条の番号が変わる。більш・менш と найбільш・найменш に「(рідше)」(あまり使わない)が加わる |
| 2026年(国家語の標準) | §20、§104「Ступенювання прикметників」 | §20 の例外に довгий — довший が加わる。§104 に、щ・жч になる例(вищий、товщий と товстіший、ближчий、дорожчий など)と、別の語幹から作る四つの語(більший、менший、кращий、гірший)が加わる。「префікс」の語が消え、「най-」とだけ書かれる |
2026年の標準の元になった2019年版と、その後の経緯は2019年の正書法は、7年後に「国家語の標準」になったで扱っています。文化省は2026年3月27日の発表で、標準の本文には例の追加や言い回しの明確化などの編集上の修正を加えたが、定着した規則には影響しない、と説明しています。上の表の2026年の書き足しが規則の変更にあたるかどうかを、標準の本文は説明していません。
ロシア語との違い全般はウクライナ語とロシア語はどこが違うのかに、前置詞 у と в の使い分けはу と в、і と й の記事にまとめています。
出典と記事の記録
出典・参考資料
- 『Український правопис』国家語の標準2026年版。§20「Зміни приголосних у прикметниках і прислівниках вищого ступеня порівняння」、§31 第4項〔пре-〕、§41 第1項9号、§44 第3項1号、§104「Ступенювання прикметників」第1項・第2項
発行:Національна комісія зі стандартів державної мови 確認日:2026-09-27 - Рішення № 47 «Про затвердження Українського правопису як стандарту державної мови»2026年3月1日。承認と効力発生の条件
発行:Національна комісія зі стандартів державної мови 確認日:2026-09-27 - Набрав чинності Український правопис2026年3月27日。編集上・技術上の修正の内容と、定着した規則に影響しないとの説明
発行:Міністерство культури України 確認日:2026-09-27 - 『Український правопис』2019年版§20、§104
発行:Українська національна комісія з питань правопису(Український центр оцінювання якості освіти のサイトに掲載された版) 確認日:2026-09-27 - 『Український правопис』4-те видання, виправлене й доповнене1993。§18 第3項、§69「Ступенювання прикметників」
発行:Академія наук України, Інститут мовознавства ім. О. О. Потебні, Інститут української мови(Наукова думка) 確認日:2026-09-27 - Українська мова. Енциклопедія, 2-ге вид.2004。「Ступені порівняння прикметників」〔А. П. Грищенко〕、「Суплетивізм」、「Тавтологія」〔О. О. Тараненко〕、「Контамінація」〔О. О. Тараненко〕、「Прислівник」
発行:НАН України, Інститут мовознавства ім. О. О. Потебні, Інститут української мови(Вид-во «Українська енциклопедія» ім. М. П. Бажана) 確認日:2026-09-27 - Словник української мови у 20 томах, onlineБІ́ЛЬШИЙ、МЕ́НШИЙ、КРА́ЩИЙ、КРА́ЩЕ、ГІ́РШИЙ、ЛІ́ПШИЙ、ЛІ́ПШЕ、НАЙКРА́ЩИЙ、ДОРО́ЖЧИЙ、БЛИ́ЖЧИЙ、ВИ́ЩИЙ
発行:Український мовно-інформаційний фонд НАН України 確認日:2026-09-27
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